4.シチューと周りの国とむせるやつ
「さて、夕飯だよ夕飯」
「えっ? コハルさん料理できたんですか?」
「しつれーな! 出来るよ! ホラ」
コハルが山小屋内の仮設台所で、火をつけ鍋を温め始めると次第にいい匂いがしてきた。事前に作って寝かせておいたのだろうシチューの匂いがする。
「パンは……ありゃ、もうなかったかー。しかたない」
コハルは手際よくシチューを盛りつつ、ベルクに差し出した。
「はい、どーぞ。君の分」
「ありがとうございます。んー、美味しそうな匂い」
「むやみやたら時間かけてるからねー、問題は味よ味」
二人で頂きますして、ベルクはシチューを一口。ゴロゴロとした大きめな野菜も柔らかく煮込まれていて美味しい。
「これ、すごく美味しいですよ!」
「それは良かった。お口にあって何より」
そのまま一心不乱に食べるベルクを見つつ、コハルは思い出したかのようにつぶやいた。
「あ、そうだ。君が何できるか確認しないとね」
「そんなこと出来るんですか?」
「うん。ここから西に行くと帝国があって、そこならギルドで調べられて、東に行けば獣人種の国があって、エルフの泉ってとこに入るだけでわかる。北と南の方で調べれるかは知らないけど、多分行けるよ。ちなみに北が竜の巣と呼ばれる竜をまもってる国があって、南はまだいけてない。今言った範囲の調べることが出来る理由はゲームを仲介した影響みたい」
色々あるんだなとベルクは聞きながら考える。しかし、どこがいいのかベルクには何もピンとこない。
「元々南の方に住んでたのか、その三国どこもピンとこないです」
「んー、ならとりあえず行ってみてもいいかも? ってところはどれ? 南以外なら変な記憶思い出しとかしないだろうし」
「それなら、北の竜のところ行ってみたいです」
ベルクに賛同し、コハルはすぐに提案した。
「北ね……あ、それじゃちょっとだけこんばんでかけない?」
「いいですけど、なにかあるんです?」
「北への道はちょっと険しいから、移動手段として、小型のロボットを拾おうと思います、むせるやつ!」
「むせるやつ? そんなのあるんですか?」
「ゲームからの影響で、掘り出せることもあるよ。旧文明の遺産って扱いだから協会とかにも祀られてるし。で、むせるやつは一番出やすい脚部にローラーがついてるやつだね、防御力意外はあるよ。移動には最適だね」