3.少女と説明
気絶から目覚めたベルクは、少女の方を向き直した。
「さて、改めてはじめまして。私の名前はコハル。よろしくね」
「あ、どうもベルクです………あれ、なんでこんな痛いんだろう?」
「そ、そんなことより!元プレイヤーのよしみで色々教えてあげよう! さぁ、何聞きたい?」
「元?」
「ああ、そこからね?んー」
コハルは何やら考えているふりをしつつ、ベルクに説明する。
「君もゲームからここに来たんでしょ? ならもう君だって、この世界の住人として認められて、戻れなくなっている頃だよ? つまり、あれは異世界への転移装置と化しているの。ここまでオッケー?」
「なんでゲームにそんな機能が…」
「複数の会社のプログラムが混ざっておこった偶然の産物ってとこなんじゃない? あ、ちなみに今の君の見た目はこんな感じね?」
そういってコハルは鏡を見せてくれた。そこにはベルクの記憶している彼自身の姿はなく、中性的な顔立ちで、赤い髪と瞳で……うん、女装が似合いそうな中学生位の姿があった。可愛いさで、普通の趣味の男性でも告白してきそうな雰囲気さえあるとも思える。
「その姿、名前は元々この世界にいた人のものよ。多分、そのうち少しずつ元の記憶を対価にその身体が持つ記憶を知っていくと思う、私がそうだったしね。思い出すタイミングは、必要になったら」
さらっとすごいこと言われた気がする。ベルクは、試しに元の自分を思い出そうとするが、名前と自分の姿や年齢が思い出せない。
「確かに……名前や容姿全然が思い出せない」
「そういうこと。同価値の情報が上書きされる。ま、それが嫌ならその身体が記憶していなさそうなところでひっそり暮らすことね 」
「コハルさんはそれが嫌でここに?」
「ううん。ここの近くにある温泉が好きでね。それはそうと、数日はここで考えるといいよ、私もまだここいるし。急にこんなことになれば混乱だってするでしょ」
コハルは心配そうに言ってくれる。実際どこまで心配してくれてるのかは謎だが、今のベルクにとってはありがたい。
「それじゃ、コハルさんよろしくお願いします」
「うん、よろしくね。ベルク」