プロローグ
「ふぉーーー、これがあの伝説の……!」
坂月直哉の手には、ゲーマーの間では伝説と呼ばれるゲームディスクがあった。その名も「ラスト魔王物語(仮)」
タイトルだけ見ると微妙だが、当時のゲーム開発費高騰の中、国内の中小ゲームメーカー50社が集結し社運を賭けて作ったゲームである。
ストーリーだけ追いかけても100時間は遊べ、様々なゲームジャンルの要素を集結したオープンフィールドものらしい……ということまでは知っている。
しかし、開発終盤で謎の発売中止になったのだ。噂では、売上の取り分で揉めたとか、予算が切れたとか……まぁ、それはいい。そんな伝説のゲームがなぜ直哉の手元にあるのかというと、直哉がリメイク版ラスト魔王物語(仮)のアシスタントプランナーに起用された為、大元のゲームをやり込めと渡されたからだ。
会社でやるのは邪魔だと、専用のコントローラー…やけにメカメカしいが、頭につけるヘッドマウントディスプレイと、大型のソファが送られていて、直哉の狭い部屋の大半を占めている。
「うん、予想通り説明書もなし……やればなんとかなるだろ。ひとまずやるかー」
意気揚々と直哉はプレイ準備を始めた