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ジト目な狐は魔法使い。  作者: 大竹近衛門
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第5話 あぶく銭と王都

 あ〜た〜らし〜いあ〜さがきた〜

 さて、大量のあぶく銭が手に入ってテンションが変な方向に曲がってしまったフェムティスです。


 盗賊から奪った物を整理するのに三日掛かるとは思わなかった。

 これも適当に放り込んだ報いかな。


 ともかく、〈アイテムボックス〉内の整理は時間が掛かってしまった。

 それと同時にゴーレムの強化をしていたのも要因の一つかな?


 ゴーレムに関しては、盗賊達が持っていた武器の鉄の部分を分解して錬成し、装甲部分を鉄に付け替えた。

 石の上に鉄の鎧を着ている状態になったので、防御力もアップだ。

 見た目も結構様になってきた。

 威圧感が結構凄い。

 何時かは全身鉄とか全身鋼とかにしたいな〜と妄想する。


 そして三体の内、一体だけは武器を変えた。

 丁度戦利品の中に手ごろな両手剣があったのだ。

 その両手剣をゴーレム用に少し改良して持たせてある。

 両手剣とは言ったが、ゴーレムが装備すれば見た目が長剣に見えてしまうのはご愛嬌だろう。


 そしてふと気付いたのだが、〈ガレージ〉にはゴーレムの装備している武器も問題なく収容出来ている。

 先程の両手剣は、厳密にいえば自分の作ったものでは無い上に、武器はゴーレムでは無いのだ。


 この〈ガレージ〉は、考えていたよりも制限は緩いのだと予測した。

 おそらくゴーレムが装備している物も含めてゴーレム一体としてカウントしているのだろう。

 細かい検証は後回しにしておこう。


 戦利品で有り難かったのが服や靴がいくつもあり、それに加えて私が装備できそうな武器や防具が揃っていた事だろう。

 ようやく着た切り雀な生活からおさらばだ。


 服や靴、防具などはある程度創造魔法を使う事で調整が出来る。

 体のサイズに合わせたり、尻尾用の穴をあけたり、被るフードは耳の形に合わせて膨らみを作った。

 この耳の形をしたフードはなかなか可愛らしい出来栄えになった。


 そして、今の私の恰好はゆったりとしたフード付きローブであり、姿からして魔法使いですと主張している状態だ。

 もちろんフードの部分は例の耳の形に合わせたやつだ。

 袖の形は和服に似ている。

 色は黒がメインで目立たない程度に群青色の装飾があり、裏地には朱色が使われている。


 ローブの下ついては、上下ともに簡素なインナーと、上半身には革の胸当てを装備し、下半身は革製のゆったりとしたズボンと脛の部分に鉄板が付けられたブーツをはいている。


 ふっふっふっふ。

 露出なんて微塵も無いぜ。

 ズボンだからチラリも無い!


 そんな色気の欠片も無い格好に内心大満足している。


 そんな私は今、自信作のフードを目深に被りながら王都の入口に立っている。

 ・・・話が飛びすぎだって?

 そんなの気にすんな。道中何も無かったから仕方ないんだ。


 気を取り直して私は王都に入る為に、門の前にいる兵士に声を掛ける。


「・・・・すみません。王都に入りたいんですが?」


「入国希望者か。王都へは何のために来たのだ?」


 兵士は事務的な態度を崩さずに対応してきた。


「・・・・王都には冒険者になる為に来ました」


「冒険者か。城門の横のカウンターで手続きをしろ」


「・・・分かりました」


 私は言われた通りカウンターに向かう。


 しっかし、薄々気づいていはいたが言葉が出にくい。

 喋ろうとするとどうしてもつっかえて一拍遅れてしまう。

 おまけに表情筋が機能していない。

 一体何が原因なんだろうか?

 ・・・そもそも原因なんてあるのか?

 これがデフォルトだった場合はどうするか・・・。


 そんなとりとめのない事を考えていたらカウンターに到着していた。


「サーレマール王国へようこそ。こっちに来たってことは冒険者になるってことかな?」


 妙に馴れ馴れしい眼鏡男がカウンターで対応してきた。


「・・・そうです」


「そうかそうか。見た所魔術師の様だね。うんうん、いいね。魔術師は需要があるからね〜」


 ・・・うん、ウザい。


「・・・・話を進めてもらっても?」


「あ〜ごめんごめん。それじゃあ俺の後について来てくれ。・・・おいお前。カウンターで対応してろ」


 眼鏡男は後ろに居た別の兵士にぞんざいな物言いで命令した。

 ・・・絶対それが本性だな、この眼鏡。

 聞こえないとでも思ったのか?残念ながら耳はいいんだぞ。


 私は色々言いたい事を飲み込んで眼鏡の後について行く。


「さぁ、こっちだよ。足元気を付けてね」


 眼鏡は爽やかな笑顔で紳士な対応をしてくる。

 ・・・これに騙される奴っているのかな?

 一応イケメンだし、騙される奴いるんだろうな〜。




「いや〜、君みたいな可愛い子が冒険者か〜」


「・・・・」


「何かあったら俺に言ってくれれば力になるからね」


「・・・・」


「あ、俺の名前はレナード。レナード=ウイルソンだ。よろしく」


「・・・・ん」


「君の名前はなんて言うのかな?」


「・・・・」


「・・・え〜と、君のなま「着いたのでは?」」


 私は眼鏡の言葉に被せるように告げる。

 気が付けば目的の場所と思しき場所に着いている。


「あ〜うん、そうだね。ここが冒険者ギルドだよ」


 “冒険者ギルド”

 予想していたものより遥かに大きい建物だ。

 貴族の館と言ってもいいほどに大きい。


 私は眼鏡の後に続いて建物に入る。


 中もやっぱり広い。

 眼鏡はさらに奥へと私を誘導する。

 そして、入口から一番奥のカウンター前で止まる。

 そこには、ふわりとした癖のあるブラウンの髪を、セミロングにした美人さんがいた。


「やぁ、マリタさん。新人さんを連れてきたよ」


「こんにちは、レナード。お仕事ご苦労様」


 カウンターに座っていたお姉さんはにこやかに対応している。


「それじゃ、俺の仕事はここまで。後はよろしく」


 眼鏡はそう言うとさっさとギルドから出て行った。


「・・珍しいわね」


 カウンターのお姉さんが小さい声でボソッと呟いた。

 だがしかし、一瞬で営業スマイルへと変わってこちらに対応してきた。


「冒険者ギルドへようこそ。私は当ギルドの登録係マリタと申します。早速登録作業を開始してもいいかしら」


「・・・お願いします」


 マリタさんはその返事を聞くと慣れた手つきで作業を開始する。


「それではこちらの用紙にお名前とご年齢のご記入をお願いします」


 私は言われた通りに名前と年齢を書く。


「・・・・出来ました」


「はい、有難うございます。それでは先ず簡単な説明をさせていただきます」


 マリタさんは軽く咳払いをして姿勢を正す。


「冒険者としてギルドに登録した方は先ずFランクからの出発となります。このランクではギルドが指定する雑務が主な仕事になります」


 マリタさんが慣れた調子で説明を続ける。


「ですが、特定の条件を満たせば一気にEランクへと昇格できます。フェムティスさんが可能な条件は銀貨一枚をギルドに支払う事ですが、いかがなさいますか?」


 そう聞かれたので、私は迷わず〈アイテムボックス〉から銀貨一枚を取り出して、マリタさんに渡す。


「はい、確かに。それではEランクとして登録させていただきます」


 マリタさんはそう言うと、一度席を立ち後ろの棚から一枚のプレートを持ってきた。


「こちらがギルドカードになります。こちらの針を使って親指から少し血を出し、カードの端の窪みに押し当ててください」


 少し針が痛かったが言われた通りにすると、何だか力を吸われる様な感覚に襲われる。

 そして、何も書いていなかったギルドカードに文字が浮かび上がる。




ランク E

〈狐族〉

『フェムティス』

 年齢16

 レベル31




 と、表示されていた。


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