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ジト目な狐は魔法使い。  作者: 大竹近衛門
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第3話 活動レポート

 そよ風が吹く正午過ぎの森の中、自分が生活している洞穴の入口の横で私はリフルの実を食べている。

 いきなりで悪いが、自分の能力スキルを使いこなすべく修行を始めてから約二週間が経過した。

 修行のお陰で大分スキルが使えるようになったので、簡単に説明しよう。


 魔法に関しては少々多いので大部分は省くが、この世界の魔法は込める魔力の量で威力が変わる。

 任意で威力が調整できるのはとても便利だ。

 それに加えて効果範囲も、ある程度ではあるが調整出来る。


 以前と変わった点は、まず魔法と言う攻撃手段が出来たお陰で私の食事に肉が追加されるようになった事だろう。

 この肉はこの森に生息していた『ダッシュラビット』と言う、茶毛のウサギが少し大きくなった様な見た目をした魔物の肉だ。

 この世界では食える魔物も多いと記憶にある。さらに言えば、強い魔物の肉は食べた者に力を与えると言われている。

 とは言え食べられない魔物も色々存在している。

 話が逸れたが、先程言ったダッシュラビットは捕まえるのに最初は苦労した。

 名前に“ダッシュ”と言う単語が付いている通り、逃げ足が凄まじく速かった。

 最初なんてあまりの速さに目の前から突然消えてしまったように見えて、唖然としてしまった。

 そんな失敗もあって、ダッシュラビットを獲る時は隠密のスキルを使って気配を出来るだけ消して、魔法で仕留める事にしている。

 そんな苦労もあってか、ダッシュラビットの肉はとっても美味でした。


 続いて変わったのが、住処としている洞穴と、頼りになる“味方”が出来た事、この二つだ。


 洞穴は土魔法と創造魔法の二種類でリフォームした。

 土魔法で穴を広げたり、新しい部屋を掘ったりしたのち、創造魔法で壁が崩れたり落盤などしないように壁を丈夫な石に変えたり、柱を錬成したりしたのだ。

 この創造魔法を言うのはどうやら錬金術の上位互換のスキルのようだ。


 そうして広くなった住処の入口を、頼もしい味方の“ゴーレム”で守ってもらっている。

 このゴーレムだが、土魔法で作る事も出来るが、ゴーレム職人のスキルで制作した方が遥かにスペックが高くなった。

 ゴーレム職人と言う名の通りゴーレム関係に特化したスキルの様だ。

 土魔法で作ったゴーレムは文字通り泥人形だったが、ゴーレム職人で作った方はフルブレートアーマーを着た人間、もしくは記憶の中にある人型ロボットの様な見た目をしていたからだ。

 もちろん比較をする為に走らせたりお互いを戦わせたりした結果、ゴーレム職人の方が圧倒的に強かった。


 ちなみに、特に意識をせずに作った大きさは、土魔法のゴーレムは三メートルくらいで、ゴーレム職人が二メートル五十センチくらいだった。


 さて、このゴーレム職人のスキルなのだが・・・、今の私には中毒性が強すぎたようだ。

 このサバイバルの寂しさを誤魔化す為か、はたまた自分に宿ったオタク魂の所為なのか、気づいたら食事も忘れてゴーレムの改造に勤しんでいた。

 関節部分などを記憶を頼りに改造し、ゴーレムとは思えない滑らかな駆動を実現させた。

 創造魔法でゴーレムの全体を固い石へと変えて装甲を強化した。

 創造魔法で錬成した石のメイスを装備させ攻撃力を強化した。

 ひとまず完成したゴーレムに満足し気が抜けてしまったのか、私はそのまま倒れるように外で眠ってしまった。





「ッ!!」


 朝になって、私は「しまった!」という思いで跳ね起きた。


「ッ!?」


 さらに驚いたのが、昨日作ったゴーレムの足元に、大きな狼の死体が転がっていた事だ。


 どうやら私は寝ている時に狼に襲われたようだ。

 それをゴーレムが返り討ちにした。と言うのが事の顛末らしい。


「・・・危なかった」


 私は思わず言葉を漏らす。

 あまりにも迂闊すぎるし、危ないにも程がある。 

 運が悪ければ、私は昨夜死んでいたかもしれないのだ。

 この恐ろしい体験で分かったが、ゴーレムは命令が無くともほぼ自動で主を守るようだ。


 凄まじいミスをやらかしてしまったが、その結果ゴーレムの機能を早いうちから知ることが出来たのは有り難い。

 今後はこの主を守るという基本行動を念頭に置いて運用するとしよう。


 その後も、色々な魔法の練習の為にダッシュラビットを獲る時は手を変え品を変えて挑戦した。

 ゴーレムも同時に何体使役出来るのかを試した結果、4体が限界だった。

 5体使役しようとしても、体の内側から“これ以上は入らない”といった、物が溢れてしまうような、またはお腹がいっぱいでこれ以上食べられない、といったような感覚に襲われた。


 とりあえずゴーレムの限界保有数は分かった。

 この限界保有数が増えるかどうかは今後調べよう。まぁ、おそらくではあるがレベルが関係しているのだろう。




 とまぁ、この二週間はこんな調子だった訳だ。

 とは言っても細かい所は大分省いてしまっているのだが。


 それと少し危険な発見もあった。

 それは、ここから少し離れた所に盗賊のアジトを見つけてしまったことだ。

 何ともお決まりの展開だ。


 数日盗賊達をを探って、人数やどいつが頭なのかを調べておいた。

 そして今日のお昼前、大きめの馬車を二台引き連れた太った男がやってきた。

 そいつは盗賊の頭と親しそうに挨拶を交わしていた。

 しばらく見ていると盗賊が住処にしている洞窟から女性達が出てきた。

 そして盗賊が女性達を太った男の連れてきた馬車に乗せると、太った男は部下と思しき男に指示を出して重たそうな袋と樽を五樽渡した。あの袋はお金で、樽はおそらく酒だろう。

 十中八九、攫った女性達を奴隷商に売り払ったと言うことなんだろう。


 あまり見ていていい気分ではなかったのだが、赤の他人を助けようという正義感は一切湧いてこなかった。

 けれど、私は今の状況に心が沸き立っていた。

 悪を倒すという正義感からでは無い。

 とても都合のいい条件が揃ったからだ。


 盗賊の人数は把握した。

 盗賊の頭も把握した。

 今、盗賊のアジトには奴隷を売り払った売上金がある。

 まず間違いなく、夜は酒を飲んで宴会をするだろう。

 奴隷を売り払った後だから、アジトの中には面倒くさい被害者はいないだろう。


 奴らを襲うには絶好の機会だ!

 奴らを殺して全て奪う!


 これは正義の為ではない。

 私の欲求を満たす為でもあり、今後必要な金や物資を合法的に、そして効率的に手に入れる為だ。


 そして私は自分に問いかける。


 盗賊とはいえ人を殺せるのか?

 →問題ない。ちゃんと出来る。


 盗賊を殺して罪に問われるか?

 →罪にはならない。


 盗賊の持ち物を奪うのは罪に問われるか?

 →罪にはならない。ただし、盗賊と結託していた場合は罪になる。


 自問自答が終了すると、気持ちが大分落ち着いた。

 落ち着きすぎたのか、はたまたこれからやる事に思う所があるのか少しダウナーな状態で襲撃準備を整える。


 さぁ、今夜は忙しくなる。

 これが終わったら街に行こう。

 流石に何時までも森の中に居るわけにもいかないし、色々知りたい事もある。


 何よりも私は強くなりたい!

 弱いのは嫌だ!


 故に私は街に行く。

 街に行けば強くなるための様々な情報も、武器も、防具も手に入るはずだ。

 盗賊狩りが終われば金も出来るから、街でも生活で不自由することは無いだろう。


 と言う訳で盗賊さん、何の恨みも無いが私の為に死んでくれ。


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