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ジト目な狐は魔法使い。  作者: 大竹近衛門
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第28話 初仕事?

遅くなってしまい、誠に申し訳ございません。



 在らぬ罪を着せられそうになり、それを回避したフェムティスはその後ライアン達から薬の礼金を受け取り、さらにここ最近の出来ごとを教えてもらった。

 心配事が無くなり、気兼ねなく酒を飲みまくった三人はそれはもうペラペラと喋り続けた。

 水を飲み、出された料理を堪能しながらフェムティスは彼らの話に耳を傾ける。

 そんなやり取りも夜遅くになってお開きになり、フェムティスは宿へと戻った。


 次の日に旅の間に手に入れた素材をギルドに持ち込むが三日掛かると言われてしまい、仕様がないのでフェムティスはその間買い物と修行で時間を潰す事にしたのであった。


 そして三日後。


 彼女…フェムティスはとても不機嫌だった。


「・・・(何なんだよコイツ、鬱陶しいな。まさかハニートラップの類か?)」


 彼女は今、男性ギルド職員を相手に素材の買い取りに関して金額に不満が無いかどうかのやり取りをしている。

 そして、その男性ギルド職員は事あるごとに彼女へ柔らかな笑顔を向け、時には手や肩に触れようともしたが、そんな事されたくない彼女は全て回避する。

 そんなやり取りを繰り返していたからなのか、最終的には男性ギルド職員の柔らかな笑顔は引き攣っていた。


 なにはともあれ全ての素材の換金が済んだ。


「・・・帰る」

「しょ、少々お待ちを!これからギ「・・・チッ」…ギルド長に会っていただきたいのです」


「・・・拒否権は?」


「…ま、誠に申し訳ございませんが、会っていただきます」


「・・・分かった」


「そ、それではご案内をいたします」


 そうしてフェムティスは冷や汗を流しながら萎縮してしまった職員にギルド長とやらが居る部屋に案内される事となった。




 ギルド長が居るという部屋の前に到着した。


 中に入ると椅子に座り机の上で指を組んでいるギルド長を思しき白髪白髭の爺さんがおり、その左には目つきの鋭い意地悪そうな白髪混じりのおっさんが立っていた。

 そんな二人の前に四人の冒険者が立っている。


 フェムティスを案内してきた職員がギルド長の下に報告をしに行く。

 待たされている僅かな間に四人の冒険者に目をやるフェムティス。


「・・・(確か以前助けた事のあるエリックとか言う奴とその仲間だったかな)」


 その四人はフェムティスにとって覚えのある者達だった。

 その彼らもフェムティスをチラリと見るが、それだけだった。


 フェムティスを案内してきた職員が報告を終え退室する。

 そして扉が閉まるとようやくギルド長が口を開く。


「さてさて、お待たせして申し訳ありませんでしたな」


「いえ、それで話とは何でしょうか?」


 ギルド長の言葉にエリックが答え、話を促す。


「では…皆さまにはある仕事に加わっていただきます」


「仕事の内容はこの私、副ギルド長のザクセンが説明する。目標は王都から離れた農村近辺で発見された『フォレストトロール』の群れの討伐だ。この仕事には王国の騎士団からも数名派遣され、さらに他の冒険者も参加する」


「まぁ、相手がフォレストトロールだという事で話が少々大きくなってしまいましてね。それで、どうせならついでに冒険者達の試験も兼ねてしまおうという事です」


 エリック達が息を飲む気配が辺りに伝わる。

 それと同時に彼らからは熱気の様なものが発せられる。

 だがフェムティスには一切変化は無い。


「・・・(事の重大さの度合いがまったく判らん)」


 そんな彼女をしり目に話は進む。


「さてエリック殿」


「はい」


「私は貴方と貴方の仲間達にはとても期待しております。少し前にあった疫病問題においてもとてもよく働いてくれたと報告を受けております。さらには特効薬の開発に成功した功績はとても偉大なものです。…この王都を救っていただき感謝いたします」


「いえそんな、僕…私達は出来る事を無我夢中でやっただけです」


「フォッホッホッホ。謙遜せんでもよい。貴方方の行動は誰にでも出来るというものではないのですからな」


「は…はい。有難うございます」


「今回の仕事でも貴方方には期待しておりますぞ。そしてフェムティス殿、貴女の活躍も期待しておりますぞ」


 いきなり話を振られたフェムティスに皆の視線が集まるが、彼女に変化は無く慌てたような様子も無い。


「フェムティス嬢。貴女の実力に関してはギルドとしてはまだ把握しきれていない。故に今回の仕事で貴女に期待するのは荷物持ちとしてだ。自身の実力を鑑みて余計な事は避けるように」


「これこれザクセン。そんな強い言い方をせんでもよいでしょうに」


 フェムティスに強い口調をぶつけるザクセンをギルド長が宥める。


「ザクセンが失礼しましたな。今回の仕事では貴女の空間魔法による荷物運搬をお願いしたいのは本当です。ですが、貴女の実力にも期待しているという事は覚えておいていただきたいのです」


 そう言ってギルド長は好々爺然とした笑顔をフェムティスに向ける。

 一方、肝心のフェムティスはと言えば…


「・・・ん。(これっていい人悪い人の演じ分けなのか?反発心を煽って実力を引き出そうとしているのかな?それと、エリック達が居る時に呼んだのは比較的歳が近いからライバル意識と競争心を持たせる為か?)」


 外見上は全くの無表情で頷いているが、内心ではそんな憶測を立てていた。

 ついでに言えば、彼女の心には反発心やライバル意識、競争心は微塵も発生しなかった。


「…ふむ。それではこれから日時など細かな事の説明に入らせてもらいましょう。ザクセン」


「了解しましたギルド長」


 そう言ってザクセンはこの部屋に居る五人の冒険者達に説明を開始した。

 集まる日時、予定されている拘束期間等々の細かいが決して無視できない内容だ。


「・・・(ま、適当でいいか。私は荷物持ちだけしていればよさそうだし。そのついでに色々と観察させてもらいましょうかね)」


 フェムティスは説明を聞きながら、この仕事では極力後ろに下がる事を決める。

 そして、この世界での自分以外の戦いを間近で観るいい機会だと自分に言い聞かせる。


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