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ジト目な狐は魔法使い。  作者: 大竹近衛門
18/31

第18話 考える狐

第17話を読んでくださっているユーザー様から誤字および曖昧な表現の指摘があり、修正しました。

このような小説を読んでいただけるだけでも嬉しいのに、誤字などの指摘もしてくれるとは本当にありがたいことです。

まだまだ未熟者の書いた小説ですが暇つぶし程度に楽しんでいただければ幸いです。


 さて、私を襲撃しようとしていた輩は始末した。

 問題は囚われていた獣人の女だ。


 彼女をどうするかを考えながらゴーレム達は下がらせる。

 彼女は男の背中を刺すのをやめ、懸命に息を整えようとしている。


 下がらせたゴーレム達と合流し、彼らを〈ガレージ〉に入れる。


 後は彼女か……。




◇◇◇◇◇◇




 私は今、以前使っていた修行場に来ている。

 とても懐かしい場所だ。


 あの獣人の女に関しては放置することにした。

 彼女はあの後、自ら拘束を解き、いくつかのテントを探って盗られていた自分の装備と思しき物を回収してその場から離れていった。

 あの様子なら王都に無事に辿り着けるだろう。


 うん。何の問題も無い。


 その後は何となく猛ダッシュして、この修行場に来たという訳だ。


 今は途中でメリービーから採取した蜂蜜を舐めながら魔法の訓練をしている。

 この蜂蜜も久しぶりだな〜。

 前世で食べた事のある蜂蜜より断然美味しく感じるのは気のせいなのだろうか?

 こんな余計な事を考えていても、魔法の修行には支障をきたさないくらいには魔法に関するスキルが上がってきている。


 これは個人的に始めた並行処理の訓練でもある。

 または分割思考かな?

 まぁ、細かい所は何でもいい。

 言ってしまえば自分の手足を動かすのと同レベルで魔法を使えるようにするための訓練だ。

 故に魔法の訓練をしながら他の事をしたり考えたりするのが修行になる。


 しかし、今回は何故私が襲撃されなきゃならなかったんだ?

 あいつ等は私を捕まえるつもりだったんだよな。

 となると………人身売買か?


 黒い尻尾を左右にユラユラと動かし、周りでは魔法によって米俵ほどの大きさの岩が宙に浮いている中で私は考えを巡らす。


 捕まっていた女の人も獣人だった。

 狙っていたのか、偶然なのか。

 こういった話では差別があったり、種族自体に希少価値があったりするものだが…。

 はたして何が正解なのか……。


 すぐに殺したのは失敗か?

 いいや、そもそも私には尋問のノウハウは無い。

 おまけに拷問のノウハウも無い。

 となれば聞きだすのは一苦労だし、それが本当かどうかも見極める事が出来ない。


 蜂蜜をスプーンですくって舐める。

 う〜ん、甘くておいしい。


 あと問題なのは今回の襲撃に裏があるかどうかだな。

 たんなる人身売買が目的の襲撃か。

 それとも別の何かをする為の下準備か。

 それとも単なる暇つぶしか。

 いや、暇つぶしは無いな。

 現に私への襲撃は計画的だったみたいだしな。


 私への襲撃か……。

 あれは本当に捕まえる事が目的だったのか?

 もしかしたら八人は私の実力を計る為の生贄の可能性もあるかな。

 現に一人は離れて見物する気だったみたいだしな。


 そうなるとあいつ等を殺したのは私だとばれてしまうかな?

 私があいつ等の尾行に気づいた事はあの一人も知っているだろう。

 その後すぐにあいつ等が全滅。

 私がやったのではと先ず疑われるだろう。


 これに関してはもうやってしまった事なので諦めよう。


 さて、どうなる事やら。

 まぁ、面倒くさくなったらまた山に逃げればいいだろう。


 人里の中じゃなくても生きられるって、なんと素晴らしき事か。

 前世では絶対に出来ない事だったから余計にそう感じてしまう。


 そう言えばギルドで聴き耳を立てた時に色々聞いたっけな。

 ガラの悪い奴が増えたって話もそうだが、貴族の動きが活発になっているという話だったはず。

 まさか裏で繋がってないよな。


 貴族といえば謀略を巡らすイメージがあるしな。

 ガラの悪い奴も使ったりするかもしれない。

 最悪の場合、裏の仕事をする為の闇ギルドとかあったりして。


 うむ、何とも悪夢が広がる様な推測だ。


 けど、貴族絡みだとしても私に何の関わりがある?

 貴族との接点なんて無いぞ。

 …………

 ……

 …

 いやある。

 エリックだ。

 確かあいつは貴族だったはずだ。

 襲っていたおっさんが言っていた。


 あいつ自身は貴族だとは最後まで名乗らなかったがな!


 周りに浮いていた岩がグラグラと揺れ、地面に落ちそうになる。

 慌てて魔法を制御して元の位置に戻す。

 すると岩は元の位置でピタリと止まる。


 ふぅ、危ない危ない。

 おのれ、エリックめ。


 だがこれはたんなる推測だ。

 貴族絡みの事件だと決まった訳ではない。

 それにエリック絡みの事件だとも限らない。


 考えても答えは出ないと分かってはいても考えてしまう。

 けれども構わない。

 こういう事はある程度予想しておくことが大事だからな。

 まったく予想していない様な状態で事件にぶち当たるのは勘弁願いたい。

 予想していればもしもの時に動けるかもしれない。

 故に何通りもの予想を組み立てておく。


 なにはともあれ、事件に首を突っ込むか否かも決めなければならない。

 私が標的にされるなら、きっちりと相手を排除するつもりだ。


 しかし私が標的でないのならどうする?


 私には功名心も出世欲も無い。

 自分の生命が第一だ。


 いや、まだ事件が起こると決まった訳ではない。

 それに起るとしても、どんな事件になるかは起こってみなければ分からない。


 この辺はその時になってみなければ判断のしようがないな。


 うむ、とりあえず王都に帰るか。





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