第17話 懐かしい思い出
11月30日。誤字および曖昧な表現の指摘を受けて、修正しました。
指摘してくださったユーザー様、誠にありがとうございます。
王都サーレマールに帰って来てから三日目の朝を迎えた。
二日間は買い物をしたり、屋根の上で日向ぼっこをしたりと、とてものんびりした二日間だった。
買い物に関しては、尻尾の手入れ用の櫛を買い直したり、例の山岳地帯での生活をより快適にするための物資などを探したりしていた。
あそこをメインの自宅にするか、もしくは別荘にするかはまだ決まっていないが、少なくとも人里から離れるには打って付けなのであそこを放棄する気は無い。
三日目である今日は以前修行に使っていた場所に行くつもりだった。
しかしその予定は簡単に崩れてしまった。
王都を出てからすぐに後をつけられている。
こうなると偶然ではないな。
私を狙った計画的なものとみていいだろう。
けど私を狙う動機はなんだ?
まぁいいや。
ヤる事は変わらない。
つけてくる相手の数は八人と一人。
八人の方は固まって動いている。
残りの一人は固まっている八人とは離れて行動しているようだ。
まったくもって鬱陶しい展開だ。
自分の耳がピクリと反応する。
八人組が動き出した。
お仕事開始。
予め決めていた行動を開始する。
私はその場から一気に加速して八人組から逃げる。
かなりの速度で森の中を駆けていく。
私の視界には森の木々が凄い勢いで過ぎ去っていく景色が映る。
勿論木に衝突したりはしない。
これは何度やっても気持ちがいい。
走ったおかげで彼らを撒く事が出来た。
次の行動開始。
木の陰に隠れながらスキルと魔法の同時使用を開始し、持ちうる全てを使った隠密状態を作り出す。
隠密状態を維持して、あの八人組の所に戻る。
八人組の所に着いた。
私を見失った事で右往左往している。
しばらく待っていると、八人組と離れていた一人が合流した。
私は待ってましたと言わんばかりに耳を澄ませる。
「見失ったのか?」
「ああ、あのアマすんげぇ速さで森の中を逃げて行っちまった」
「まったく。役に立たん奴らだ」
「おいおい旦那〜。そりゃああんまりな評価だぜ〜」
「喧しい。あの女魔術師を捕らえるのがお前らの仕事だったはずだろ。それが出来ていないのだから当たり前の評価だろうが」
「そうは言うがよ、こっちはあのアマがあんなに早く動けるなんて聞いてないぜ」
「相手の女の実力は分からんと言っておいただろうが!」
「へ〜いへい。この後もっと人数を連れてきてきっちり囲んでやりますよ。あのアマが王都に帰る道で待ち伏せしてやりますよ。へへっ、前衛を連れていない魔術師なんざそれで一発ですよ」
「そうである事を願うよ。それと捕まえた後の事は忘れていないだろうな?」
「しっかり覚えてますって。俺達の方でしっかり脅しを掛けてやりますよ。いや〜あのアマがどんな反応をしてくれるかが楽しみだぜ」
「しっかり仕事をする事だな。その分だけお前達の取り分が増えるんだからな」
「へへっ、精々甘い蜜を吸わせてもらいますぜ」
一人の方は王都に向かって歩き出す。
八人の方は王都とは別の方角に向かって歩き出す。
一人の方の追跡は諦める。
王都に入るには兵士が経っている門を通る必要があるから隠れたままでは色々難しい。
八人の方を追跡開始。
会話の中に人数を増やすといった内容が含まれていた所から考えると、まだ仲間がいるのだろう。
という事は何処かに拠点を作っているはずだ。
そこまで案内してもらうとしよう。
私を再び襲撃しようとしている輩だ。
そのお礼にあいつ等の拠点を襲撃してやるとしよう。
八人組を追跡し始めて大分時間がたった。
そして遂に拠点に到着した。
王都からはかなり離れているな。
到着した場所はテントが幾つも建っているキャンプ場みたいな所だった。
結構な人数が居る。
八人組はキャンプ場にいる男達に声を掛けながらその輪の中に入って行った。
奴等の拠点はここで間違いないな。
男達が集まって何やら話を始めたが聞く必要は無い。
お仕事開始。
先ずゴーレムを四体出す。
手が長く大きい拳を持ったゴーレムが一体。
剣と楯を装備した騎士の様なゴーレムが二体。
大きいメイスを右手と左手に一本ずつ装備したゴーレムが一体だ。
彼らを配置した場所を正面とし、私は敵を半包囲するように側面に回り込む。
タイミングを見計らって残りの退路は〈ファイヤーウォール〉で塞ぐ。
行動開始。
先ずゴーレム達が敵に突進する。
ズッシズッシという重たい足音に加えてガッシャガッシャという鎧が擦れる音が響く。
敵の男達は何事かと慌てて剣を抜く。
突進したゴーレム達が一番近くにいた男達を容赦無く斃していく。
周りの男達の悲鳴が響き、全体に動揺が走る。
「落ち着け野郎ども!ロープを持ってこい!奴等を転ばしてやれ!転ばした後は全員で袋にすんぞ!!」
敵のリーダーらしき男が周りに激を飛ばしながら指示を出している。
お陰で敵のリーダーを捕捉出来た。
私は静かに杖を構える。
「・・・〈強度四〉〈ストーン・ブレット〉」
撃ち出す石弾の威力を詠唱という形で言葉にしながら〈ストーン・ブレット〉を撃ち出す。
撃ち出された石弾は敵のリーダーの頭に正確にヒットする。
頭を撃ちぬかれたリーダーは地面に崩れ落ちた。
敵のリーダーの死亡を確認。
後は残党狩り。
敵はリーダーがいきなり死んだ事でパニックになっている。
そんなパニックに陥った敵を、ゴーレム達は淡々と斃していく。
「・・・〈ファイヤー・ウォール〉」
パニックになった敵を逃がさないために、ゴーレムと私が居ない場所を炎の壁で埋める。
いきなり出現した炎の壁に唖然としている敵に〈ストーン・ブレット〉を撃ち込み、斃していく。
敵は狂ったようにゴーレム達に攻撃を仕掛けている者もいれば、どうすればいいか分からず剣を構えたままその場をウロウロしている者もいる。
リーダーは早々と死亡。
前方には全身鎧で身を固めたような正体不明の敵が四体。
後方には炎の壁。
側面からは魔法と思しき遠距離攻撃が飛んでくる。
酷い展開だ。
このまま終わりかなと考えていたら、予期せぬ事態が発生した。
テントから下着姿の猫族っぽい獣人の女性が姿を現した。
どうするべきかを考えながら彼女をよく観察する。
尻尾の模様は虎柄。
背は高めでがたいはいい。
手を前にして縛られている。
彼女は突然の事に大分動揺しているようだ。
その彼女は近くに落ちていた剣を見つけるとすぐさま手に取った。
近くにいた男がその事に気づいて彼女に剣を向けて、何かを叫んでいる。
彼女も男に剣を向けて構える。
男がジリジリと距離を詰める。
私はとりあえず男の足に〈ストーン・ブレット〉を撃ち込んで動きを封じる。
足を攻撃された男はうめき声を上げながら前のめりに地面に倒れ込んだ。
彼女は今だと言わんばかりに飛びかかり、男の背中に剣を突き立てる。
その後彼女は男の背中に繰り返し剣を刺した。
恐慌状態というやつか。
ふむ、どうやら彼女は敵側の人間ではないようだ。
奴らに捕まった被害者なのだろう。
〈ファイヤー・ウォール〉の効果が切れる頃には殲滅が完了していた。
以前どこかで見た事がある様な地獄絵図が出来上がっている。
ダレガコンナヒドイコトヲー。




