第16話 お土産の価値と再会
こういう話の区切り方をしたら、タイトルは全編後篇という風に書いたほうがいいのてしょうか?この辺のさじ加減が未だにわからないですね。
さて、旅のお土産を〈アイテムボックス〉から出している最中のフェムティスです。
「・・・大きいのはこれで終わり」
大物を出し終えて、パウロの姉御に声を掛ける。
「……驚いたね。これは『ディノレクトレックス』の皮だね。それにこっちは『スチールビックベア』の毛皮だ……。こりゃまたホントに大物だね」
・・・結構驚かれているみたいだ。
けどあり得ないというようなレベルではなさそうで良かった。
「・・・それと作ったポーションとかの小物があるけど、ここに出していい?」
「あ、ああ。ここで出してもらって構わないよ。今出した素材の横に置いておいておくれ」
「・・・わかった」
私は言われた通り『ティラノサウルスもどき』改め『ディノレクトレックス』の皮の横に自作のポーション十個と、強壮剤四個を置く。
それと採取したのち錬成して作ったメープルシロップを一瓶だけ出して置いておく。
「・・・出し終えた」
「あいよ。後はこっちの仕事だ。番号札を渡しておくから呼んだら買い取りカウンターに来ておくれ」
そう言って渡された番号札には二番と書かれていた。
・・・これ、割符としての役割もあるようだ。
「ああっと、ちょい待ち」
「・・・?」
ギルドのロビーに戻ろうとしていたらパウロさんに呼び止められた。
「少し長くなりそうだから何か飲み物出しておくよ。何がいい?」
「・・・何があるの?」
「ああそうだね…。えっと隣の食堂は知ってるわよね?そこで出されている飲み物なら出せるはずだよ」
「・・・ならコーヒーをお願い」
「了解。後で他の子に持って行かせるよ。それじゃギルドのロビーで待っていてくれ」
では言われた通りロビーで大人しく待っているとするかね。
◇◇◇◇◇◇
只今久々のコーヒーを楽しみながら査定が終わるのをゆっくり待っている状態です。
暇だったので耳に意識を集中して周りの声を拾って、盗み聞きに精を出している。
耳に意識を集中し、クイクイと動かしながら声を拾っていく。
拾った話の内容は私が帰ってきた事に関する話がちらほら。
自分達の最近の稼ぎに関する話。
仲間の編成に関する事と、魔術師の仲間が欲しいな〜という話。
貴族達の動きが最近活発になっているという話。
ガラの悪い奴と裏稼業的な奴を見かけるようになったという話。
・・・山に帰ろうかな。
いや、冗談抜きで。
色々な話を拾っていく中で、どうしようかなと考えていたら声を掛けられた。
「お久しぶりですフェムティスさん」
そんなセリフを金髪イケメンの微笑みと共に掛けられた。
・・・思い出した。
エリックだ。
後ろには赤髪ツンツン頭のディーン。
魔術師で茶髪セミロングのセレス。
神官で金髪ロングのカリーナ。
勢揃いで来やがった。
私は彼らの顔をチラリと見た後、すぐに視線を戻してコーヒーを飲む。
対してエリックは当たり前のように私の前に座る。
「少し話をしたいのですが、よろしいですか?」
イケメンの爽やかスマイルを発動させたまま話を始めてきた。
「・・・買い取りの査定を待っている最中なのだけど」
「実は貴女に依頼を受けていただきたいと思いまして」
この野郎。
遠回しの「あっち行け」をガン無視して話を始めやがった。
「依頼の内容は私達のパーティの護衛と、強くなる為の指導をしてほしいと言う物です。報酬に関してはお互いに相談した上で決めようと考えています。いかがですか?」
「・・・断る」
いかがですかじゃねぇーよ。
断固拒否だ。
あと後ろの赤髪、怒気を放つんじゃねぇーよ。
「…何故なのか理由をお聞きしてもよろしいですか?」
「・・・メンドくさい」
「………」
「・・・」
お互い無言になる。
私はそんな事無視してコーヒーを飲む。
面倒くさいのは事実だが、こんな裏がありそうな依頼は御免だ。
それにこの依頼、絶対に内容以上の仕事になるだろう。
それを含めるとかなり面倒くさいからなお嫌だ。
簡単な予測としては貴族の派閥争いに関係している。
自惚れになってしまうが、私を自分達の陣営に引き込もうとしているのだろう。
それ自体はまぁ百歩譲っていいとして、私は本当の内情を告げずに依頼を受けさせて、そこからなし崩し的に自分達の陣営へ協力させようという魂胆が気に入らない。
・・・まぁ、全部私個人の推理というか妄想なのだが。
ふむ、コーヒーを飲み終えてしまったな。
「フェムティスさん。どうか引き「二番の番号札をお持ちの方ー。査定が終わりましたので買い取りカウンターまでお越しくださーい」…」
「・・・呼ばれたので失礼する」
いいタイミングだ。
私はそそくさと買い取りカウンターへと向かう。
「待たせて悪かったね。番号札とギルドカードを渡してくれるかい」
カウンターではパウロさんが出迎えてくれた。
そして彼女に言われた通り、番号札とギルドカードを渡す。
番号札とギルドカードを受け取ったパウロさんは何時もの通り手元で何か作業をしている。
相変わらずこっちからは何をしているのか分からない。
「これでよしっと。今回の買い取り金額は少し色を着けて金貨二枚でどうだい?」
パウロさんが私のカードをこちらに返しながら査定額を告げる。
結構な額になったな。
小銅貨一枚を一とすると金貨二枚は二千万になるな。
小銅貨一枚百円説を前提に計算すると二十億になってしまう。
・・・この計算で考えるのは止そう。
「・・・・・・それでいい。けど少し崩してもらう」
「あいよ。それじゃあどの程度崩すんだい?」
パウロさんにどう崩すかを伝え、それを聞き終えた彼女が手元でゴソゴソと作業をすると、合計で金貨二枚にもなる硬貨がトレイに乗せられる。
私はトレイに乗ったその硬貨を確認しながらカードに放り込む。
「お疲れさん。あんたも随分強くなったみたいだし、これからも頑張っておくれよ」
パウロさんがニカッと笑って激励してくる。
「・・・ん」
こちらも簡単な返事を返す。
まぁ、程々に頑張りますよっと。
ギルドでの用事を終えたので、次は宿だ。
以前泊まった『妖精の止まり木亭』に行くとしようかね。
今回の稼ぎは良い金額になった。
これなら時々あれらの素材を持ち込むだけで金には困らないな。
ただどの程度の影響があるのかが分からなかった。
分かった事といえばあまり持ち込まれない素材だと言う事だけだ。
パウロさんに直接聞けばいいじゃないかって?
コミュ障なめんな。
とは言え、この辺はなんとかしないとな。
コミュ障を直すか、交渉役の仲間を作るか。
なにはともあれ、今日はもう宿で休もう。
あの『妖精の止まり木亭』のふかふかベットでゆっくり眠りたい。
ん?何か忘れている気が・・・。
・・・たぶん気のせいだな。うん。
狐娘のボッチ旅はまだまだ続く・・・かもしれない。




