第13話 人助けの後は・・・(後篇)
私とエリック達はあの後何の問題も無く地上へと出る事が出来た。
王都に戻った私達はとりあえず私とエリック達の二手に分かれる事になった。
私は一足先に、ギルドの隣にある食堂へと入って行った。
エリック達はギルドの方へ報告などその他諸々をする為に向かった。
さて、私が今居るのは『ギルド食堂』と言う店だ。
その名の通りギルドが運営している食堂だ。
ここは安さと量を重視した店で冒険者たちの財布に優しい店となっている。
もちろん、その安さから一般人の利用客も多い。
実に繁盛している店で、店内はとても広い。
私はウェイトレスに案内されて、五〜六人が座れる丸テーブルの席に案内された。
そしてウェイトレスにコーヒーを注文し、代金を渡し椅子に座って一息ついた。
〈アイテムボックス〉に入れておいたおしぼりを取り出し、手を拭いておく。
・・・ついでに顔も。
この癖は未だに治る気配が無い。
私はフードを目深にかぶったまま、コーヒーが来るまで少し考え事をする事にした。
少し経ってからコーヒーが運ばれてきた。
私はコーヒーの香りと味をゆっくりと堪能する。
意外な事にこのファンタジー世界は随分と進んでいる。
魔法を使った道具もそうだが、食文化もかなりの水準に達している。
まぁ、これにはこの世界独特の理由があるのだが、ざっくり割愛する。
実際の所、この理由が分かった時は魔法の修行に使っている場所まで行って八つ当たり気味に魔法を連発した。
と、ここまで賞賛しておいて何だが、安定供給に関しては少々問題があるようだ。
今日はこれは無いけどあれなら有るよといった事が頻繁にあったりする。
コーヒーを楽しんでいたらエリック達が用事を終えてやってきた。
そしてウェイトレスさんにテーブルまで案内され、それぞれが席に着く。
エリックが私の正面に座り、治癒士のカリーナが彼の右に、魔術師のセレスが彼の左に、少し詰めるように座る。
ディーンはカリーナの右にすわる。
・・・ディーンは自分の利き腕の右腕側に私を置く形になり、私は利き腕では無い左腕側にディーンを置く形になったのは偶然かしら?
「お待たせしてしまって申し訳ありませんフェムティスさん」
「・・・問題ない。そっちの手続きは無事に済んだの?」
やっぱり交渉役はエリックになるか・・・。
お互い社交辞令の様なお決まりの挨拶から始める。
「ええ、問題なく済みました。それとカードの買い取り金に関してはこちらになります」
「・・・ん」
エリックはポケットに入れていた小銀貨四枚をテーブルに置いてこちらに差し出した。
私は差し出された小銀貨を取るとローブのポケットに一旦入れる。
ちなみに死んだ冒険者のカードは、ギルドに持ち込めば一枚で小銀貨一枚で買い取ってくれる。
「私達の命を助けていただいた事、重ねてお礼を申し上げます。有難うございました。それで今回の報酬について何か望みは有りますか?」
イケメンスマイル全開だな、エリックは。
しっかし、礼儀正しいと言うべきか、腰が低いと言うべきか・・・。
まぁ、なにはともあれやる事はとりあえず決まっている訳だし、始めましょうかね。
「・・・貴方が払いたいと言うなら、小銀貨四枚を報酬に望む」
「っ!?ですが、それではあまりに不足なのではないでしょうか?」
「・・・それ以外は望まない。小銀貨四枚の条件を呑まないなら、・・・私は帰る」
「っ!」
エリックが言葉に詰まる。
私としては交渉なんてする気は無い。
女性二人もそうだが、隣のディーンからの無言の圧力が凄い。
「おいお前」
早速ディーンが口をはさんできた。
「・・・何?」
私は視線だけを彼に向ける。
「フードを脱げよ。話し合いの席でそのままってのは失礼じゃねえのかよ」
・・・え?そこなの。
彼の言葉には怒気が含まれていたが、内容は予想外だった。
少し予想外の事を言われたがやる事に変更は無い。
「・・・それで、小銀貨四枚、払うの?払わないの?」
ディーンを無視してエリックに決断を促す。
隣のディーンの怒気が殺気に変わるが無視する。
「・・・。分かりました。小銀貨四枚をお支払いします」
エリックはこちらに交渉する気が無いのが伝わったのか、諦めたように条件を呑んだ。
そして、彼はギルドカードを出して、その中から小銀貨四枚を取り出すとテーブルの上に置いた。
私はそれを拾い上げて、ポケットに入れる。
これにて話し合いは終わり。
何か言いたげなエリックは当然無視する。
「・・・それじゃ、私は帰るから」
そう言って、私は椅子から立ち上がり帰ろうとすると・・・。
「待って」
エリックの左隣に居た魔術師のセレスが声を掛けてきた。
「・・・何?」
「あの時貴女が使った魔法、あれは何?」
「・・・教えると思ってるの?」
彼女の問いに侮蔑を込めて答えてやると、彼女は顔を歪ませながら軽く歯ぎしりをした。
ただでさえ悪かったこの場の空気が、より一層悪くなる。
私の気のせいか、周りの席の人たちも息を殺しているように感じる。
・・・聞き耳を立てていると言った方が正しいかもしれない。
そんな周りの空気の一切合財を無視して、私は食堂を出る。
様々な視線が背中に突き刺さっていたが、勿論全部無視した。
外に出て見れば既に夕方で、もうすぐ暗くなるといった時間だった。
なんか少し疲れたな。
結局の所、エリックは自身が貴族である事を明かさなかった。
・・・まぁ、私の態度が悪かったのも原因かも知れんが・・・。
訳ありっぽかったけど、面倒事は嫌だな。
巻き込まれたりしないよな?
あ〜あ、癒しが欲しいな・・・。
どうしてこうなった・・・。
今後の展開に詰まり気味ですので、少々更新が遅くなるかもしれません。
誠に申し訳ございません。




