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ジト目な狐は魔法使い。  作者: 大竹近衛門
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第1話 ここは何処?私は何?

 ・・・これは一体どういうことだろうか?

 自分の体に当たる雨の感触で目を覚ますとすぐさま草が目に入り、体を起こして辺りを見渡すと周りには木がたくさんあった。


 これらの情報から自分は山か森の中に居るのではないかと考えた。

 もう少し周りを調べると斜面は無いことが分かり、ここは森の中だろうと結論付ける。


 次に自分が取った行動は特に考えたわけではないのに身を隠せる場所を探すことだった。

 なるべく身を低くするため四つん這いになりながら辺りを捜索する。





◇◇◇◇◇◇





 どのくらい探しまわっただろうか・・・。

 結構な時間探していた気もするが、そのおかげか無事洞穴を見つけることができた。


 さっきまでは森の中だったのに探しまわったおかげで山と森の堺になっている岩場に来てしまった。

 これって絶対森の奥に来てしまったよな・・・。

 まぁ、この際身を隠せるならそれでもいいかなと考えて洞穴を調べる事にした。


 自分は洞穴の入口まで来て匂いを嗅ぎ大きな耳を澄ませて中の様子を調べる。


 ・・・どうやら大丈夫のようだ。


 中に他の生き物が居る気配は無いと予測を付けて、四つん這いのまま慎重に入っていく。

 入口の大きさは立って入るのは無理であり、横幅は結構ある。

 慎重に歩みを進めて、うす暗くともそれなりに視えているので中の様子を把握するのには困らない。


 3メートルほど進んだら少し広い空間に出ることができた。

 直立することはできない高さだが、座って休んだり横になる分には申し分ない。

 下にある岩とさっきの道から入って右の壁の岩は他の岩に比べてかなり固そうだ。


 この身を隠せる場所まで来れたという安堵感から一気に疲れが噴き出してきたうえ、自分の体の冷たさゆえに震えが起こる。


 自分は震える体を押さえるように縮こまり、体を抱きかかえるようにして眠りに落ちていく。


「・・・少し、休もうかな」


 か細くこぼれた声は鈴の音のようであり、狭い空間で小さく響いた。





◇◇◇◇◇◇





 ふと目が覚める。あれからどのくらい寝ていたかは分からないが気持ちの方は少し落ち着いた。


 狭い空間だか、可能な限りストレッチをして体をほぐす。その際に感じた体の異変はあえて無視してストレッチを続ける。



 体がある程度ほぐれると、血液の流れが良好になったのか頭がだいぶ冴えてきた。

 まずは確認だ。自分の体を目で見て、手で撫でまわしてみる。そうして分かった事は自分は女性だという事と、獣の様な耳と尻尾が付いているという事だ。服に関しては何かの動物の革で出来た貫頭衣というシンプルなものだ。だが下着と靴は無い。


(・・・なんで女になってる?耳は見えないがこの尻尾の形は狐かな?どうなってる?俺はれっきとした人間だったはず)


 分からない事だらけだ。出来る限り冷静に、現状を整理しよう。

 まず俺は・・・。あれ?私は[私]だよな・・・。・・・うん?自分が普段使っている一人称は[俺]だっけ、[私]だっけ。

 いやいや、私は前から自分の事は[私]と言っていたはずだ。女性の私がなんで[俺]なんて男性の様な言い方を?

 うん?・・・前から?

 ・・・いやでも俺は体が女に変わっていることにさっき動揺したばかりだ。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


 よし、この問題は棚上げしておこう。そうしよう。異論は認めない。

 

 性別は後回しにするとしても、この体に関しては知っておかなければ。

 今になって気がついたのだが、なんで目が視えているのだろうか?ここは洞穴の中であって、光源となる物は無いはずだ。流石にフルカラーで視えているわけではなく、白黒だが全体的にうっすら青いのだ。

 自分の知識の中で思い当たる単語を思い浮かべると〈暗視〉と言う単語が浮かんできた。

 ・・・さっき体を調べた限りでは暗視ゴーグルの類は着けていなかったはずだ。いや、これに関しては私自身の種族スキルというやつだったはずだ。

 ・・・・・・なんかまた訳分からない事になった気がする。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


 考える事をやめてはいけない。ここで思考停止してしまったらいけない。そんな事を自分に言い聞かせて現状をしっかり把握しようと思考を続ける。





◇◇◇◇◇◇





 推測として、自分には2人分の記憶がある。という事でひとまず落ち着いた。

 こことは違う世界で生きていた人間の男の記憶。

 この世界で生きていた獣人で狐族の少女の記憶。

 この2人の記憶が自分の中に、虫食い状態ではあるが確かに存在している。


 不思議な感覚だ。自分はこの2人のどちらでもない。そう感じる。

 自分は単に2人の記憶を持っている。ただそれだけだ。それはまるで2人の記憶をファイリングしてある資料のようだ。必要な部分をその都度ピックアップ出来るような、便利だけど、とても事務的で無機質な感じがする。


 しかし、今の自分にはとても有り難い。下手に自意識が混ざって混乱するよりマシだ。

 この感覚を忘れる前に可能な限り必要な情報を引き出して整理しよう。そう思い立ち、記憶にある座禅と言うモノを組み、背筋を伸ばして集中する。

 そして私は、自分の命が掛かってるだけあってその後数時間記憶を探り続けた。


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