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第三話 真夜中の会話

リサ達とのオママゴトを終え、夕食を終えて、皆が寝静まった夜中、俺は屋根の上で寝そべり、星を眺めていた。

昼は真っ青な下地に白が流れ、強烈な光を放っていた空も、こうして夜になると別の顔を見せる。

青かった空は暗い黒に染まり、強烈だった太陽の光は、月や小さな星々の柔らかな光へと変わる。

「あ、リク君こんな所にいた」


登ってくるときに使った梯子を使って、ルルさんが登ってきた。

「もしかしていつもこうしてるの?」

静かに微笑んで俺の隣で座り込む。

「いつもってほどじゃないけどね」

「あんまり夜更かししてると身長伸びないよ?」

「まだ成長期は残ってるから良いんだよ!」

思わず声を張り上げ、ルルさんが指を口の前で立てる。

「それにしても、綺麗だねぇ」

ぼうっと星を眺めるルルさんの胸元で、銀の首飾りが星の光を受けて、ぼんやりと光っていた。

それがとても綺麗に見えて、じっと見つめているとルルさんがこっちに気づいた。

「何?おねえさんに見とれちゃってた?」

笑いながらからかいの言葉をかけてくる。

実際は違うのだが、面倒なので否定しないでおこう。


こちらが黙って夜空に目を向けると、ルルさんも追求はせずに空に視線を戻した。


お互いにぼうっと夜空を眺めるだけの沈黙の中、ルルさんが静寂を破った。

「ねえ、リク君」

「何?ルルさん」

「本当のお父さん、お母さんに会いたいと思ったことはない?」

それは今までに、村の人たちや孤児院の仲間達に何度となくぶつけられた疑問だ。

しかし、これまでに一度としてルルさんから聞かれたことはなかった。

普段なら適当に茶化して答えるのだが、今夜のルルさんはいつになく真剣な表情をしていて、子供の俺でもここでふざけてはいけないと悟った。

「ないよ。俺にはルルさんやリサやフラッドさん、孤児院や村の人たちがいるからね」

それを聞いたルルさんの顔に宿った感情は子供の俺にはよくわからなかった。

喜びや悲しみが合い混ざり合ったような表情が浮かんでは消え、最後には

「そう、変なこと聞いてごめんね?」

寂しい笑顔を浮かべた。



それからはどちらからも静寂を破ることなく、ただひたすら星を眺めるだけの時間が過ぎた。

普段ならそろそろ切り上げて、眠る頃合いだが、今はこの心地良い静寂に浸っていたかった。

隣を見ると、ルルさんがその綺麗な顔を上に向け、ぼんやりと夜空を見ている。

彼女も同じ事を考えているのだろうか。

そうなら良いなと思う。


そうして、心地よい静寂に浸りながら夜は更けていった。





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