第二の騎士 「ノーブルス」
馬車が走り出してから二時間、ようやく森を抜け今は平原の中を走っている。
普通、こういった馬車には光術というものが施されている。
さて、いったい光術とは何か、それに騎士についてもよく説明していなかった。
まず訂正しよう、あの獰猛な『黒』を倒せるのは騎士だけでは無い。
そもそも『黒』というのは光術という特殊な技でなければ殺すことができない。
そして、そこ光術を使えるのが『天使』と『騎士』だ。いったいこの二つの何が違うのか、それは後天性なのか先天性なのかの違い。と言ってしまえば簡単なのだが
天使とは生まれた時から神の加護を受けているもの。
騎士とは生まれた後から神の加護を受けたもの。
ただそれだけの違い、なのに何故言い方が違うのか。それはその能力の違いだ。
天使はたしかに光術を使うことが出来る、しかしその力はとても微かなものだ。先ほど出てきた『黒』の大群を追い払うだけで倒すことは出来ない。
たしかに天使の中には、攻撃系の光術を使える者も居るんだろうけど、そんなもの極僅かだ。
しかし、騎士は違う。その強さは一人で百人の人間を守ることも、百人の人間を滅ぼすことだって出来てしまう。
それほど、騎士の力は強く絶対的だ。だからこそ国もそんな貴重な人間をほっておくわけが無い。
「なぁ、後どれくらいで首都に着くんだ?」
「はい、このまま順調に行けば一時間後ぐらいには」
この国、と言っていいのか。世界は『黒の領域』という場所、つまり『黒』が住んでいる場所以外はすべてノーブルスの領土だ。昔はいくつか国が分かれていたようだけど、今では統一されてノーブルスだけとなっている。
騎士に選ばれた者、つまりこの証を受けた者は必ず首都に行かなくてはならない。もしも首都に行くことを拒否しようならばその場で殺されてしまうだろう。
戦う気の無い者が騎士に選ばれたら残る選択肢は『戦う』か『死ぬ』かのどちらかだ。
どちらにしろ最終的に行き着くのは『死』なのだが。それが遅いか早いかだけに過ぎない。
「アミリアス様、首都が見えてきました」
窓を覗いてみると、地平線の向こうにまるで蜃気楼のような黒いものが見えた。
近付いていくと、段々その姿が露になってきた。
巨大な鉄壁に守られた城、門には最新の機械や光術が施されているのが此処からでも分かる。
そう、此処が騎士という名の異端者を閉じ込める檻。