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Verkleiden wir sich!  作者: meiro
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Kapitel 1 “Gironde” Szene 1

10/11/14 イラストを頂きました。オジョさん感謝!

挿絵(By みてみん)

(イラスト:オジョ様)



「ジロってホント受け属性あるよなーっ」

 体育の授業終わり、相方はそう言って、ジャージ姿のジロンドの肩をポンと叩く。

「う~、毎回毎回おんなじ事言ってんじゃねーよっ」

「なーに言ってんだ。今日はトラック競技をするから水巻きしとけって言われて、オレには珍しく律儀にホースで水巻きしてたら、ぼーっとしてたお前に水を被せちまって……悪かったなっ」

「もう謝んなくていいよっ。オレ、もう怒ったりしてねーからさっ」

「ハハッ、それでオマエは今このブランデス地方に名立たる貴族が一人、オトラント子爵の一人息子、シュバイニ=オトラントの換えのTシャツを着てるわけだ。そして今オマエは、砂埃とその肢体から噴き出す汗によって、オレのシャツは既にジロンドの所有物となったわけだ」

「な、何言ってんだコイツ……誰に向かって自己紹介してんだよ……気持ち悪いな……」

 ジロンドは気味が悪そうにTシャツの裾をぱたぱたと仰ぎ、両手をクロスさせて、汗の貼り付いたTシャツを脱ぎ始める。

 紺色の短パンに、透き通るほどの白い素肌。

 シュバイニの感想。

(いつも腰パンせずにズボン履いてるから、足がやたら長く見えるっつーか、すね毛も全然ねーし。腰パンするのが当たり前な世の中で、なんつーか、ひときわ輝いてるよな……)

 脊髄反射のスピードで生唾を飲み、ものの数秒間、ジロンドの身体をじっと見つめる。

(こーいう姿を見る度に、いつも一線を踏み越えそうになっちまうぜっ……)

 しみじみと悦に浸りながら相方の姿を観察するのも柄の間。

 銀髪の少年は腰元に手を当て、紺色の短パンの両端のゴムを細長い指で掴み、するすると足首まで脱ぎ始める。

「だああああああっっ! なんでシャツを着ないで先にハーフパンツを脱ごうとするんだよっ!」

「え? あ、あぁ、悪いな……じ、じゃぁ、シャツから着替えさせてい、いただきますっ」

「敬語はいいから、早く着替えちゃえよっ……そ、そんじゃジロンド、オレ、先行ってるからな」

 シュバイニはしかとその姿を目に焼き付け、更衣室を後にする。

(やっぱ、アイツのカラダ……変にどきどきさせるよなぁ……)


「何だよ……オレの着替えくらい、待っててくれてても良いのによっ」

 そう呟いて、ジロンドは白のカッターシャツを着用し、ズボンを履き、ベルトを巻いた。

 クラスメイトは既に着替え終わり、周りには誰もいない。

 ジロンドはいつも着替えの動作が遅いためか、親友のシュバイニと話し込んではいつも遅れてしまう。

「んしょ、んしょ、次は……確か化学の授業だったかなっ……よいしょっ」

 ひとりごとを呟き、手提げ鞄を持ち、急いで教室へと向かう。


 ジロンドの残像を打ち払おうとしても、瞼の奥に焼き付いて消えない。

(なーんだってんだ、週一でこんなの慣れっこだろオレ……あー鎮まれ鎮まれ……)

 そそくさと更衣室を後にした途端、突然携帯が震えだした。

(……ん……誰だ……って、オヤジかよっっ!)

 シュバイニの脳裏に、数々の罪悪が思い浮かぶ。

(何も悪い事やってない、よな、オレ……。門限も……ちゃんと、この半年は守っているし……)

 躊躇いながら、通話ボタンを押す。

「もしもし」

「もしもし」

「どうしたんだよ、オヤジ。こんな時間に電話なんて珍しいじゃねーかっ」

「あぁ、急にすまんな。実は急な要件でな。お前の友達のジロンドっているだろう?あの銀髪の少いや間違えた銀髪の少年。少し貧乏な」

「貧乏とか関係ねーだろっ」

(何だ、オヤジ、急に……)

「ズバリ単刀直入に言おう。ジロンド君への仕事のスカウトの話がある。執事として働かないかと、つい先ヴェルニオー伯爵様から連絡が来た」

「はぁっっ!?」

「驚くのも無理はない、何せ本当に急でな。その内容ではヴェルニオー様はジロンド君のお父様と縁があるそうで、お母様が重い病気で入退院を繰り返している事を聞いたようで、是非彼らに恩返しをしたいのです、と。突然早口で言われたので私も混乱してしまってな。それでタイミング良く屋敷の執事を募集しているので、治療の件を条件に是非前向きに検討していただきたい、と」

(わけわかんねー……そもそも何でジロンドが働く前提になってんだよっ)

「オヤジ、いや、オレら、まだ十五歳になったばっかだし! そ、そもそもこの国の労働法的に大丈夫なのかよ?」

「うむ、ここは創作の世界だからな。一応この国では十四歳から賃金対価労働が認められている」

「じゃ、じゃぁ、学校はどうすんだよっ」

「伯爵様が奨学金として全額負担して下さるそうだ。この条件を飲まない手はないだろう、あの高名なヴェルニオー伯爵様の下で働けるのだから。お前はピンと来ないかもしれないがな、私は人を見抜く目には自信があるのだよ」

「ま、マジな話かよ……」

「そこで頼みがある。私から言うのも押し付けがましいから、お前から、さりげな~く、この件を話してもらいたい」

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