Kapitel 3 “Emil” Szene 3
好感度を上げてはふざけて選択肢を間違え、好感度は常にしかめっ面のマーク。
数十回のリセットを繰り返し、とうとうニューマンルートへ突入する。
テーブルの上に散在したお菓子の中から、チョコレートビスケットの包みを取り出し、ハムスターの様にポリポリと小刻みに食べている。
ゲームを始めてから、既に三時間が経過していた。
(なんか飽きちゃったなー、人生無駄にしてるよなー、こんなの別に楽しくないのに……あたしってほんとバカ、もうしにそう)
電源を切ると、静寂がエミールを包み込む。
長時間のゲームの疲れからか、眼の奥に海水が染み入るような痛みを感じ、ベッドに飛び込む。
一階の仕事場には、アロイスとアマデオと顧客達が、真剣な面持ちで交渉、時に談笑。
金属の加工音がけたたましく響く事が日常。
ガテン系の仕事場なら当たり前の緊迫感は、エミールの登場で一変する。
二人の兄は、親と子程の年齢が離れた弟を溺愛している。
下半身不随の父親は年金生活で入院中。
愛情だけは人一倍注いであげたいとの使命感が二人を突き動かす。
毎日一緒にお風呂に入って、川の字で寝て、家族のぬくもりを三人で確かめ合おう。
痛いほど届いている。
不登校な自分がこれを契機に変われるなら、どれだけ喜んでくれるだろう。
ビスケットの袋を丸め、ゴミ箱に投げ入れる。
気体の圧迫感から抜け出そう。
お気に入りのジャケットを身に纏った直後だった。