Kapitel 3 “Emil” Szene 2
タキシード姿に着替え終わった後、エミールは既に部屋に篭り、ベッドでくつろいでいる。
「それじゃ、行ってくるからな」
「イイコでお留守番してるんだぞっ」
返事が返ってこないまま、二人はガソリン代節約の為にマラソンで隣町のパーティ会場へと向かう。
「……そうやっていつも置いて行って……へぇ~」
赤ちゃんのようにすべすべした頬をぷうっと膨らませ、ファンヒーターを付けカーテンを閉め、自分の世界へと入り始める。
(アロイス兄ちゃんみたいにーガサツでー鈍感でー筋骨隆々でハゲで低学歴で自己犠牲を厭わないキャラ……うーん、この中じゃ誰が一番似ているかなぁ)
女性側視点の恋愛シミュレーションゲームに興じている。
(ふふ、きーめた今日は学園一の不良でバカで義に厚くてツンデレ彼女一筋で嫉妬してくれて誰よりも素直クールなニューマン、君を攻略することにきーめた!)
自身の分身となる主人公のビジュアルを細かく設定できる。
髪型、服装は勿論、眉の形、眼の色、輪郭、口元、彫りの深さまで、種類は各パーツごとに三桁を超える。
但し、主人公は女性となっている。
(むーこの前はスパッツが似合うアフロ微乳空手家、その次は東洋人みたいな黒髪で、私服が着物でいつもデートで胸を押し付ける変態だったからなぁー、そろそろ真面目にやろ……)
ランダムにパーツを回し続け、ピコーンと閃いたように呟く。
「そっかー、まさかの自己投影キャラでいいんじゃん! 僕みたいなキモヲタを攻略させるマジ排他的なゲームとかマジきもいけど!」
今日の服装をモデルとした、白のカーディガンにアラビアンパンツ、拘りのカチューシャに程良い長さの亜麻色シャギーカットスタイルの爽やかな女性が姿を現す。
(ふふー至極当然なんだけど可愛いなぁ……なんてーウエッへヘー、てこのパンツよく見たらただのジャージ!きもちわるい干物女みたいでボクしにそう!)
悦に入るのも束の間、性格設定の為のミニゲームを淡々とクリアしていく。
正答率と解答時間に則した診断結果を楽しみに待つ。
「人見知りすることもなく、初めて会う人にも、分け隔てなく無邪気な笑顔を振りまく妖精のような心の持ち主でしょう。しかし、人を疑う心が無いために、人に騙されたり浮気されたり、痛い目にあう可能性は十分にあるでしょう。極度の自己犠牲の為、貴方の一番大事なものを失うかもしれません。優しさが玉にキズでしょう」
(へー頭の軽いバカでいつもしにそうな僕に結構当てはまっているんじゃないかな)
占いとは無責任なもの、他人の運命を勝手に枠に嵌めて高額な金を受け取り、その場を立ち去る。