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最後のセーブデータ
『やくそう』
『やくそう』
『どくけしそう』
『やくそう』……
アイテム欄のほとんどが、体力を回復する『やくそう』で埋め尽くされていた。
「なんでこんなに回復薬ばっかり……?」
首をかしげながら、最後に残っていた『だいじなもの』の欄を開いた。
そこには、ゲーム内の手紙機能で保存された、短いメモが残っていた。
日付は、僕がこのゲームをやり込んでいた、十年前の冬。
『たかしへ
おとうさんは下手だから、ぜんぜん追いつけそうにありません。
だから、たかしが強いボスと戦うときに困らないように、たくさんやくそうを集めておきます。
こんど一緒につかう時まで、だいじにとっておいてね。』
——父さんは、ゲームを進めるためにプレイしていたんじゃない。
僕が全滅しないように、仕事が終わったあとの遅い夜、一人で画面に向かって、回復アイテムをひとつずつ集めてくれていたんだ。
『やくそう』の所持数は、99個。
上限いっぱいに届いたところで、父さんのセーブデータは終わっていた。
「……父さん、ずるいよ」
画面が、涙でぼやけて見えなくなった。
画面の中の父さんのキャラクターは、十年間ずっと、僕に薬草を渡すためにその場所で立ち続けていた。
僕はコントローラーを握りしめ、データ1の自分のキャラクターを起動した。
そして、あの懐かしい街の広場へと歩いて行った。




