第11話「Human Dignity」
「う…」
微かにうめき声をあげて、快斗が目を醒ます。
胸が痛み、眩暈もする。耳鳴りも少し続いているようだ。
(戦いは、どうなったんだ…?俺は、負けたのか…)
体に力が入らない状態で周囲を見回す。
そして、近くにいた井上に事の次第を訪ねようとするが…。
「目が醒めたか、快斗君。だが、今は動かない方がいい…。
はっきりいって最悪のタイミングだ」
井上は緊張した面持ちで快斗を見てそう言うと、また道場の入り口に目を戻す。
快斗もその方向を見ると、二人の男がただならぬ様相で向かい合っている。
一人は仲村大輔だ。
…そしてもう一人は50代ほど。
白髪交じりのオールバックで愉悦の表情を浮かべ、眼光鋭く…。
「あ…あれ、は…」
快斗はその男を見た瞬間に確信する。
かつて慎之介から聞いたことがある男…。
あれこそが格闘家連続殺人事件の犯人と呼ばれる『ガイゼン』だ、と。
決して気を抜かないまま、大輔がガイゼンに尋ねる。
「おいクソ野郎…。
叩きのめす前に聞いておくが、三刀谷篤郎って覚えてるか?」
三刀谷篤郎…それは大輔の日本拳法の師にして、父とも慕った男の名である。
大輔がまだ幼かったころ、その近所で三刀谷は日本拳法の道場を開いていた。
物珍しさで道場を覗いていた大輔を三刀谷は優しく迎え入れ、両親もそれを許し、彼を門下生として指導することとなった。
もともと天賦の才があった大輔は見る見る間に上達し、三刀谷も『この子はいずれ日本拳法の頂点に立つことになるだろう』と評価していた。
しかしその後、大輔が小学三年生の頃に彼の両親は離婚。
一人っ子であった彼は父親に引き取られたが、その父親も大輔が小学六年生の時に不慮の交通事故により死亡してしまう。
彼の祖父、祖母はすでに亡く、母はすでに再婚し遠方に居住していたため親権者となることを拒否した。
そのため子がいなかった三刀谷が大輔の未成年後見人となり、事実上の親として大輔を育てることになった。
また大輔も不幸で複雑な家庭環境から多少荒れた時期はあったものの、基本的には尊敬する師の教えを信条として強さを磨き続けてきた。
『護るためにこそ強くあれ』
というその教えを。
その三刀谷がガイゼンに殺されたのは二年前。
格闘家連続殺人事件の初期の頃…3人目の犠牲者である。
現場に書かれた『陰』の血文字から、ガイゼンの仕業であることは明白だった。
その時の大輔の嘆きは、詩音や慎之介が思い出しても胸が痛くなるほどだった。
また、詩音も三刀谷を知っていた。
詩音が大輔と知り合ったのは、彼女が中学一年、大輔が中学三年の頃。
両者激突の詳細な経緯は後の機会に譲るが…。
中学一年生、しかも女子にもかかわらず並みの大人以上の力を発揮する詩音を見て大輔は霧神流に強く惹かれ師事する。
また詩音も自分が女性と知ったあとは一切攻撃をせず耐えきった大輔を見て、その教えをした師匠…三刀谷篤郎に興味を持ち、霧神流特訓の合間に三刀谷の道場に通ったのである。
大輔にとってはまさに文字通り親であった三刀谷。
怒りその死を問う大輔に対し、ガイゼンが表情を変えず肘まで伸びた手袋を付けた両手を組んだまま返事を返す。
「誰だそれは?知らんな。私が殺したのか?
ならば覚える価値もないクズだったということだ」
その返答に詩音が本気で怒り、唸るような怨嗟の声をあげる。
そして改めて確信する。
『こいつはこの世にいてはいけない存在だ』
と。
大輔は全身に怒りの闘気…非科学的なそれが、まるで目で確認できるほどの威圧感を放ちながら吐き捨てた。
「俺は人を殺さねえことを信条としているが…。
そうか、てめえは人じゃねえんだな。
だったらこの世の害虫であるてめえを俺が駆除してやる。
全力でな!」
そう叫び、大輔が一足飛びでガイゼンに接近、全力の右縦拳を打ち込む。
打撃というにはあまりにも大きい激突音が響き、ガードしたガイゼンの顔が歪む。
だがガイゼンはすぐに嬉々とした表情に変わり、左手刀を縦に振り下ろす。
空気、いや空間ごと切り裂くようなそれを十字受けで防いだ大輔も、その予想外の威力に舌打ちをするが…。
すぐさまガイゼンを前蹴りで蹴り飛ばし距離を離す。
うまくヒットしたが間合いは浅く、ガイゼンはダメージを受けていないようだ。
「拳帝とも呼ばれたものが蹴りを使うとはな」
ガイゼンがそう挑発するが、大輔はまた構え直し大きく息を吐く。
「うるせえ死ね。てめえはもう喋るな、酸素の無駄遣いだ。
わかったらさっさと死ね。なんの価値もねえ、人類の害虫が」
その言葉を皮切りに両者はまた接近、高速の打ち合いを始める。
お互いの攻撃を時にはかわし、時にはガードしつつも、決してクリーンヒットは
発生させないままに。
大輔とガイゼンは道場の入り口付近で戦っており、それ以外の人間は道場に常設されたリングの上でその戦いを見守っていた。
リュウと優太は言葉もなくその戦いを見つめている。
いざとなればプロレスラーである自分たちも大輔に加勢しようと思っていたが、いくらなんでもこの戦いは次元が違う。
加勢どころか何もできずにやられてしまうことは火を見るより明らかだった。
年老いた次藤も同様で、くそっ、俺がもっと若ければ、と悔しそうに呟く。
満身創痍の慎之介と快斗も歯噛みしながら戦いを見つめる。
万全であれば加勢できたか…。
いや、それでもこの戦いに入っていくにはあまりにも力不足だ、と悔しそうに。
あと戦えるのは…。
「井上さん…あなた、闘いは?」
「いや…情けないが、私は闘いはまったくの不得手なんだ…申し訳ない」
詩音の問いに、井上が悔しそうに答える。
ならば自分が加勢するしかない。
あの両者には戦力は及ばないが、自分が加勢すれば少しは有利に戦えるはず。
そう考えた詩音が加勢しようとするが…。
「詩音!来るな!そこにいて全員を護れ!」
それを察知した大輔が叫ぶ。
これまでの事件では、ガイゼンは対象の格闘家以外に目撃者全員を殺害している。
それを考えれば、もし自分が負ければ詩音に慎之介や快斗、他にもモーゼスのレスラーや井上…この場にいる全員をガイゼンは殺害するはずだ。
いや、あるいは大輔の不意を突いて彼らを狙うかもしれない。
その時周囲に護れる者が誰もいなければ、そこはすぐに血の海に変わるだろう。
そうはさせない。
それだけは絶対にさせない。たとえ己が死んでも。
『護るためにこそ強くあれ』
三刀谷の遺志を受け継ぐ大輔、それは絶対に譲れない一線だった。
だが、それ以外にも理由がある。
(あの井上って男…一瞬でこいつをガイゼンと見抜いた。
つまり、知っていたんだ。
なぜだ?なぜ知っていた?あいつはいったい…)
大輔の中に残る、井上への不信感。
仮に井上が何かを企んでいるのなら、詩音まで戦いに参加して井上を自由にするのは危険だ。そう考えたのだが…。
それが邪念となったのか、わずかに気をそらされたスキにガイゼンの拳が大輔の頭をかすめる。
うっ、と怯む大輔。それを見てガイゼンがニヤリと笑う。
「存外期待外れだったな!仲村大輔!」
そう叫び、ガイゼンは大きく左手刀を振り上げる。
狙うは大輔の頭。全力の手刀で頭蓋を叩き割るつもりだ。
詩音が、危ない!と叫ぶが…。
「なめんなクソヤローが!!」
と大輔は足に力を込め大地を蹴り、腰、肩、肘と回転、全身の力を用いて…。
拳に速さを乗せガイゼンを殴り飛ばした。
ドン!という道場に響くほどの強烈な衝撃音とともに、ガイゼンが数メートル後方に吹き飛ばされ、そのまま倒れた。
「あれは…ワンインチパンチ、いや『戌閃』!」
自分のものより数倍の威力を持つであろう大輔のそれを見て、慎之介が驚きの声を上げる。
そう、考えてみれば大輔も霧神流に師事していたのだから、霧神流の奥義を使えても何もおかしくはない。
しかし、一家相伝とか、門外不出とか…。
霧神流にそういうイメージを持っていた慎之介はつい呆然としてしまう。
「それでも大輔は霧神流のほんの一部の技しか使えない。
いや、使わないとも言える…その両方だな」
詩音が言う。
霧神流は人智を超えた威力を生み出す奥義や人体の限界を引き出す奥義、さらには曲芸のような奥義、果てには物理法則を超えたような技さえ存在する。
だが、いずれも驚異的な身体バランスや強い想いを必要とするため、どれも身に着けるのには苦労する技ばかりだ。
とはいえ、比較的小柄な慎之介や女性の詩音には、その技で大の大人と対抗できるゆえ有益ではある。
だが、そもそも『拳帝』仲村大輔なら本気の力でぶん殴った方が話が速い。
だからこそ大輔は霧神流の奥義を苦労して会得する必要もなかったのだ。
その中でも『戌閃』は
『ワンインチパンチは早く打てるし、なんとなくカッコいいから』
と言う理由だったり
『柔睡』やその他の有用な奥義は
『便利だから』
という理由で会得したのだが…。
「ちっ、久しぶりに打ったから少しミスったぜ」
戌閃をガイゼンにぶつけた大輔が、手をぶらぶらさせながら舌打ちする。
そう、先ほど詩音が言った通り『戌閃』は本人の強い想いを乗せて特に心臓に打つ技。
非科学的ながらその想いが拳に作用し、通常の心臓打ち以上の効果を生み出す。
例えば慎之介が快斗に願った『希望』という正の願いならば、その想いは拳から伝わり相手は胸部迷走神経反射に似た症状を起こして気絶するが、後遺症を残す可能性はかなり低い。
しかし今大輔がガイゼンに願っている『殺意』という負の願いならば、心臓震盪や心室細動を強制的に誘発させ、そのまま相手を絶命に追いやる。
通常のワンインチパンチとの大きな違いがそこにある。
しかし、大輔自身もかなり久しぶりに打ったせいか、想いを乗せ伝達させるには
少し練度が足りなかったようだ。
あれでは超強力なワンインチパンチにすぎない。
もっとも、それでも普通は立ち上がれないのだが…。
案の定、ガイゼンが狂気の笑みを浮かべて立ち上がる。
大きなダメージは負ったものの、戦闘続行には支障ないようだ。
「見事だ、やるではないか。それでこそ拳帝、仲村大輔」
「いいからさっさと死ねよ悪臭生ゴミ野郎。
さっき酸素の無駄遣いって言っただろうが。エコに気を使って今すぐ絶命しろ。
母なる地球のために最初で最後の親孝行でもしろよこのクソヤローが」
対峙する二人はまた構えるが、見ている慎之介たちにもガイゼンが大ダメージを負ったことは感じ取れる。
大輔ほどの力ならば、慎之介のように戌閃で拳に反動を負うことはない。
つまり、大輔が圧倒的に有利だ。
「やった、勝てる!大輔さんが勝てるぞ!!ガイゼンを倒せるんだ!!」
慎之介は喜ぶが…一人、井上だけは浮かない顔をしていた。
(ガイゼン…奴にはまだ切り札がある。
今のうちに大輔君に教えるべきか?しかし…)
井上はガイゼンの切り札を知っている。
井上が秘密裏に所属している反社会的組織…『IDM』では二年前に在籍、そしてかつて、幹部を超えた大幹部―組織内ではその地位を『統治者』と呼んでいるが―となっていたガイゼンのデータが残っていた。
そう、実は井上も滝魔たちと同様、IDMの六人の幹部のうちの一人である。
それゆえガイゼンのデータはすべて頭の中に入っていた。
しかしそれを声高に教えれば、ただでさえ雪乃の件で疑惑を抱いている詩音や慎之介、そして大輔にもさらに強い不信感を抱かれるのは間違いないだろう。
モーゼスの面々も思うはずだ。
『なぜ井上はそんなことを知っているのか?』
と。
溝端の逮捕をきっかけにモーゼスや清原快斗に恩を売り、いずれは快斗をIDMに引き入れるつもりであったが、それがすべて台無しになるかもしれない。
いやそれどころか大金をかけて引き抜きを失敗した自分が、IDMから粛清を受ける可能性もある。
しかし、仮に仲村大輔がガイゼンに殺されたら…雪乃の子の二人も確実に死ぬ。
霧神詩音、霧神慎之介と言う人間も、仲村大輔を殺されてこの場から逃げ出せるほど冷静、冷徹に判断できる性格ではない。
自分はそのスキに逃げ出し、仲間を呼べるだろうが…。
「久しぶりだぞ。まさかここまで本気を出すとはな」
ガイゼンがそう呟き、両手の手袋を脱ぎ捨てる。
一見何の変哲もない普通の両手…しかし、それこそが罠なのだ。
仲村大輔はそれに気づかず、相変わらず呑気に挑発を繰り返している。
井上は思案する。
どうするべきだ。
私はどうするべきなんだ。
自分の保身と命だけを考えて行動するべきなのか。
それともガイゼンと戦う仲村大輔の味方として行動するべきなのか…。
ふと、横の慎之介を見る。
その目は大輔の勝利を純粋に信じていた。
そしてそれは詩音も、他の面々も同様だった。
(霧神雪乃、か…その名前を思い出したのも、そして今その子に会ったのも…。
もしかしたら、運命の一環なのかもな)
…井上はフッと笑い、慎之介に尋ねる。
「霧神慎之介君…君は御母堂を、雪乃氏を愛しているかね?」
「えっ?と、唐突になんですか?」
井上の急なまったく意味の分からない質問に慎之介はわけもわからず戸惑うが…。
「頼む、答えてくれ。君は母の霧神雪乃を愛しているか?」
「はあ…まあ、母さん…まあ毒舌ですし、たまに厳しい時もあるけど…。
普段は優しいし、愛しているかと聞かれれば、愛していると言ってもいいかも…」
その答えを聞いて、満足したように井上は頷き、そして前を見る。
「…ありがとう。私のハラも決まったよ。
懐かしくも素晴らしい事を、久しぶりに思い出した」
かつて敵ながら過去唯一愛した女性、霧神雪乃。
自分がまだ新人でくだらない仕事を任されていた頃、IDMと戦っていた女性。
政治、経済、宗教、そして暴力。
すべてを備えていたIDMに雪乃はただ一人で正義を標榜して立ち向かっていた。
はっきり言って、その戦いにほとんど意味はなかった。
IDMも本気で相手などしていなかった。
世界を裏で支配している組織に一個人の武力など、どれほど強くても無意味だ。
それでもつまらない悪事を働く自分たちを見つけては、彼女は向かってきていた。
それを面倒に思いながらも、こんな下らない仕事を任された下っ端の自分達を倒していったい何の意味があるんだと思いながらも…。
いつしか自分たちのチームは全員、敵であるはずの雪乃のファンになっていた。
特に自分などは恋をしていたと言ってもいい。
しかし、いつしか雪乃は現れなくなった。
自分一人では何も変えられない現実を知ってしまったのか。
誰かに敗れて死んでしまったのか。
単に正義の味方ごっこに飽きただけなのか。
…不安には思ったが、時が経つにつれそのことも忘れてしまっていた。
しかし、今その雪乃の子が目の前に現れた。
あの雪乃は生きていたのか、平和に生きていてくれたのか、と嬉しささえ感じた。
そして子供までなしていたとは。
さらにその子を愛し、そして子にも愛されていたとは。
ならばもはや自分も迷うまい。
その子たちを生き延びさせるため、その子たちが信頼する人物を護るため、そしてかつて唯一愛した女性に子を失った悲しみを味わせないため…。
そのためにもし自分が死ぬことになっても、それは男としてなかなか悪くない死に様だ。
(それに…辞めることはできないとはいえ
そろそろ闇組織に所属するのにも、うんざりしていたしな)
井上はそう決意すると立ち上がり、大輔に向けて叫んだ。
「仲村大輔、気をつけろ!!
ガイゼンの右手は『毒手』だ!!
一撃でも受けると致命傷になる!!」
その叫びにその場にいた全員…ガイゼンでさえも驚愕の表情を浮かべる。
ガイゼンにとっても秘中の秘。
知っているものなど、この世にほとんどいないはずだったのだが…。
「貴様、なぜそれを知っている!貴様はいったい何者だ!?
IDMの人間だったのか!?」
「ははっ、下っ端の私のことなどやはり覚えていなかったか。
…その傲慢、それがお前の命取りだ」
ガイゼンの焦った問いに冷たくそう返すと、井上は胸につけていたルビーのブローチ、それの裏側に設置されたボタンを押し、ガイゼンに投げつける。
何か仕掛けがあると思ったガイゼンはそれをかわすが、井上はその様を見てガイゼンを嘲笑った。
「ただのブローチだよ。そんなに慌てふためかなくてもいい。
しかし…お前のような卑劣で凶悪極まる殺人鬼も自分の命は惜しいとはね。
まったくお笑いだ、まさに無様、そして滑稽そのもの。
他人の命は無意味に奪うクズのような人間が、自分の命だけは惜しがる…。
三流だがいい喜劇だよ。いやあ、ぜひ全世界に生中継したいね」
「貴様、ふざけおって!」
ガイゼンが怒りに燃え井上に向かおうとするが…大輔がそのスキにガイゼンの腹部に強烈な蹴りを叩き込んだ。
ガイゼンは呻き後ずさりし、またリングの上の井上や詩音たちと距離が離される。
「ありがとよ、井上さん。少なくとも今だけはアンタを信用するぜ」
その頃、つまらなそうに夜の街を散策していた空燕が、己のスマホが鳴っていることに気づき取り出す。
アプリを確認すると…地図上に白色の『緊急集合通知』の文字が浮かび出る。
井上が投げたブローチは、IDM幹部の集合を促す発信装置がついていたのだ。
「これは…井上さんか!ガイゼンを見つけたというのか!?
フフ、さすが井上さん、やはり私と双璧をなす優秀さだ。
少々お待ちあれ、今すぐに駆けつけよう!」
アプリが示した場所はさほど遠くない。その通知を見て意気揚々と走り出す空燕。
彼と井上は同派閥…『ソーマ』という者の部下である。
その信頼ゆえか空燕は一切疑うことなく、その地図上の場所へ駆け抜けていった。
同時刻、花宮の街にいた他の幹部もその集合通知に気づく。
滝魔は五十台近い部下のバイクに号令する。
そしてまたバイクに駆け乗り、集団を導くように先導する。
「井上の叔父貴からの連絡だ!!ガイゼンを見つけたぞォ!
俺についてこい!!」
金豪は酒に酔いながらも、シャンパンの瓶を窓から投げ捨て高笑いする。
「おのれ井上めが見つけよったか!ええい、あの昼行燈めが!
かくなるうえは手柄を横取りじゃ!
邪魔する者は全員轢き殺してでもたどりつけい!!」
クラッシュはスマホを見てその通知に恍惚とする。
そして眼を鋭く光らせニヤリと笑った。
「井上…弱いくせに運がいいな。引きがいいよ。
ああ、羨ましい。羨ましいなあ。
…ガイゼン、ちょっとだけ待ってろよ、すぐに俺が引き裂いてやるからよ!」
井上翔眞、空燕、滝魔、金豪、クラッシュ…。
IDMの幹部六人のうち、五人がモーゼス道場に集おうとしていた。
狙いはただ一つ、ガイゼンの首を取るために。
そして…残った幹部一人も数名の部下を連れ花宮町にいた。
他の幹部とは思惑を全く別にして。




