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悪役令嬢現る!?!?

エレナちゃん視点です。

悪役令嬢が現れます!




あれから何度王子の手に噛みついただろう……


どうやらこの姿の私が治癒能力を発揮するのは、対象に噛みついた時みたい。なんて物騒な。


呪いを治療してるからギリギリ許されているのかもしれないが、噛みついた瞬間の王子の表情はいつも引き攣っている。それなりに痛いのだろう。そんなに痛いなら別の聖女に頼めばいいのに。

しかし、何度か治療していてわかったのだが、王子にかけられている呪いはかなり強力だ。これだけ時間をかけていても、完全に治すことができない。これほどの深い呪いは血筋を辿るようにかけられているものが多い。なるほど、これは優秀な聖女ばかりが王族の妻として迎えられていたことと関係があるのかもしれない。

私が治療しようとして命を落とすことになったあの呪いも、非常に強力なものだった。あれは深みというよりも強い思念を感じた。患者のあの人よりも、まるで、私自身にかけられているかのような。一体誰が。考え、思わず身震いした。


そういえば。先ほど城に5人くらいの聖女が来ていた。

王子が突然ハムスターと結婚するなど言ったためだろうか。


応接間が気になる。王子は私のことを話しているのだろう。私が呪われた可能性がある以上、聖女のハムスターなど言われてしまうと、色々危ないような……

ふむふむと思索を巡らせていると、ニコニコとしたエリオットが近づいてきた。


「エル、応接間、行ってみたい?」


エリオットは最近よく私の言いたいことに気づいてくれる。うん!!!と答えるように私はキキッと鳴いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


廊下の奥、重厚な扉の前に近づくと、

中からくぐもった女たちの声が漏れ聞こえてきた。


「……本当にハムスターと結婚すると仰っているの?」

「噂かと思っていたのに」

「いくらなんでも、お戯れが…ねぇ。」


別の声が、妙に甘ったるく響く。

「殿下はお優しいから……ついおかしな情けをかけてしまわれるのでしょう。

決められた通り聖女を妻として迎え、そのハムスターはペットといたしましょう?」


エリオットの腕の中で、私はキッと耳を澄ませる。

扉の向こうで誰かが笑った。

「まぁ、婚約者と呼ぶには……ねぇ?」


エリオットが怖くない?と私の方を見て口を動かす。

頷く私を見たエリオットは、重厚な扉を開けた。



中では、深紅の椅子に腰かけたライナルト殿下が、数人の華やかなドレス姿の聖女たちに囲まれていた。

彼女たちは殿下の言葉に耳を傾けているようで、

しかしエリオットの腕の中の私を見た瞬間、笑みが凍る。


「まぁ……こちらが殿下の“婚約者”?」

一番派手な聖女が、ゆるく首を傾げて王子を見上げる。

その目尻には笑み、しかし視線が私に落ちた瞬間、氷のように冷えた。

「殿下もお茶目ですわね。こんな……愛玩用の小動物をお連れになるなんて」


別の聖女が王子のそばまで優雅に歩み寄り、

「でも殿下、きっと一時の気の迷いですわ。私たちなら、もっとふさわしいお相手を……」

と、柔らかく笑みながら、扇子の影で私をあからさまに侮蔑する。


「殿下のおそばにおくのであれば、力のある聖女でないと……

こんな小さな生き物、王子の呪いのもとにすぐに死んでしまいますわ」

別の聖女はわざとらしくため息をつき、まるで同情してやっているかのような顔を王子に向ける。


胸がカッと熱くなる。

……ああ、この聖女たちにはオーラがまるでない。分家の聖女の中でもかなり下の方ではないだろうか。


エリオットがそっと私の背を撫でたが、聖女たちはそれすら小馬鹿にするように見やった。


王子とハムスターが結婚するのは確かに意味わからないし、私だって別に好きな人はいるのだ。それでも、それでも…!!!!


こんな実力も足りなそうな聖女たちに今までの努力を馬鹿にされたようで、悔しい。


小さな体が震える。


「最も力のある聖女を婚約者として迎えるのだろう?」


ライナルトが口を開く。


「それならば、このエルこそ、私に最も相応しい存在だ」


聖女たちの顔が一斉に強張る。

「……殿下、ですがそちらは……」

「そちらではない。エルだ」

「王子、獣に聖女の力なんてあるわけありませんことよ。」

「そうですわ。ただの勘違いですわよ。」

彼女たちの間に戸惑いと、じわじわとした苛立ちが広がる。


殿下はさらに続けた。

「エルには、聖女に並ぶ……いや、それ以上の治癒能力がある。

お前たちがこれまで癒せなかった私の呪いを、たやすく和らげた」


その瞬間、場の空気がピシリと凍りつく。

一人の聖女が笑みを崩さぬまま、挑むように言った。

「……それは、大変興味深いお話ですわ。しかし……本当に殿下の仰るほどの力があるのか、確かめても?」


別の聖女も、唇の端をわずかに吊り上げる。

「そうですわ。私たちとそちらのハムスター――どちらがより殿下の呪いを和らげられるのか、試してみませんこと?」


挑発的な言葉に、殿下は少しも動じず口元を緩める。

「いいだろう。お前たちが負けたときは、二度とエルを侮辱しない。この城にも近づかないと誓え」


女たちは一瞬視線を交わし、同時ににっこりと笑った。

「――望むところですわ」


エリオットの腕の中で、私は「え、なにそれ私もやるの!?」と内心慌てていた。


聖女の力のあるハムスターなんてやっぱおかしいし…というか、まって。今の私、噛むしかないのに!?


どうしようもない勝負の幕開け……そんな予感がする。

次回の投稿は8/15(金)です!


ep.8勝負になりました!?


お楽しみに!!

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