美しい少女の姿が見えた
ライナルト王子視点のお話です♡
一緒に投稿した7も見てくださいね!!
呪いの治療は、小さなエルの体には負担が大きいらしい。
治療が終わると、決まってその場で眠ってしまう。
警戒心がないのか、俺の目の前で平たくなって――すやすやと寝息を立てる。
起きている時は、驚かせないよう触れるのを控えている。
だからこそ、眠ってしまうとつい、指先でそっと撫でてしまう。
ふわふわの毛並みは、まるで雲を撫でているみたいに柔らかい。頬に当てれば、その温もりと微かな香りが胸の奥まで沁みてくる。
ゼタシア王国の王家の男児は、生まれながらにして必ず呪いを背負う。
命を蝕み、全身を裂くような痛みを走らせる忌まわしい呪いだ。重さは人によって異なるが、俺のものは特に強い。
症状が出る日は起き上がることもできず、一日中寝台の上で過ごす。だから定期的に聖女を呼び寄せ、治療を受けてきた。
だが聖女の力も千差万別で、効果の高い者もいれば、ただ苦痛だけを与えて去る者もいる。四大貴族の出ならまだしも、分家の聖女の治療は当たり外れが大きい。それでも同じ聖女に続けて頼むのは良くないとされ、俺は幾度も分家出身の聖女の治療を受けざるを得なかった。
……だが、エルは違った。
初めて噛まれた時、それが治療になるなど思いもしなかったが、あの週の痛みは軽く、城内を歩けるほどだった。
それ以来、何度か噛まれるたびに、俺の体は楽になっていった。もう起き上がれないほどの痛みは一度も訪れていない。
しかも、他の聖女を挟む必要もない。エルだけでいい。俺には、もう彼女だけで十分だ。
「……エル。どうしてそんなに、特別で……可愛いんだ」
今日も俺の指を軽く噛んだあと、そのまま眠ってしまった。
小さな体で俺の呪いを吸い取ってしまっているんじゃないかと、不安になるほどだ。
それでも、手の上に重みを預けて眠る姿は、俺を守ってくれているようで――愛おしくてたまらない。
「……全く。お前がそこで眠るから、俺は眠れないじゃないか」
痺れてきた指を、無理に動かさないようにして、反対の手で丸い背中をそっと撫でる。
最近、エルに噛まれると――彼女の周りが柔らかく輝くのが見える。
他の聖女の治療でも光は見えることはあったが、エルの場合は眩しさが違う。
そして彼女の治療のときだけ、決まって同じ幻を見るんだ。
それは、エルの毛並みに似た黄金色の髪を持つ少女。
彼女はいつも、俺の手に触れている。普通なら女性の接触など拒んでしまう俺が、不思議とその手を振り払う気にはならなかった。
若葉色の瞳をしたその少女は、俺の顔ではなく手元を見つめている。
それでも俺は、いつも彼女の瞳を見てしまう。そこに吸い込まれそうな、清らかな光があるからだ。
彼女の視線に包まれると、心地よい風が吹き抜けるようで――痛みも、悩みも、すべてが和らいでいく。
あの少女は、どこかに実在しているのだろうか。
もし……ハムスターとの結婚が、どうしても認められないのなら。
「女性を選べ」と迫られるのなら。
俺は、あの少女となら――結婚してもいいと思った。