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王子にプロポーズされたのですが!?

エレナちゃん目線の胸きゅん回です♡




「王子が怖がらせたから、びっくりして噛んでしまったんですよ!全くもう!」


「もう一生、私はこいつに触れることはできないのか……?」


慌てた声が二つ。耳がぴくりと動く。何の話?

ゆっくりと、重たいまぶたを開けた。


「大体、噛まれた瞬間に王子の呪いが緩和されたことのほうが気になりますよ! まずはご自分の体調を心配なさっては?」


目に入ったのは、ライナルト王子と、透き通るような金色の髪と瞳を持つ、王子より少し年下そうな青年。どこか涼やかな微笑をたたえながら、私をじっと覗き込んでいる。


「……はっ。目を覚ましたのか。……怖かったか?」


低く、少しだけ震えるような声。

王子の手の中には私――いや、私の小さな体。ガーゼの巻かれた美しい指。すぐに理解した。

ああ、やっぱり私はハムスター。それに、王子の指を噛んだのも事実。

でも、なんか処分されてない。セーフ……!?


「怖がらせてすまなかった。私はライナルト・ゼタシア。この国の皇太子だ」


……存じ上げてます。


「こっちは今日からお前の世話をするエリオットだ」


エリオット、と呼ばれた青年は天使のような微笑を浮かべる。立ち居振る舞いと、王子への距離感からして、四大貴族の一角なのだろう。

彼は私を見つめながら、ふっと眉を寄せた。


「不思議だ……このハムスター、ものすごく強い聖女のエネルギーを感じる。それに……“エレナ”……そんな文字が見える気がする」


!!!


まさか、私の名前が分かるなんて!

やっぱり聖女の血を引く貴族だから、そういう力も……!?

私は王子の手の上で小さくクルクル回ってアピールする。そうです、その名前、正解です!


「……なんか喜んでいるように見えるな。エリオットが言うなら、本当にエレナというのかもしれない。しかし……名前があるということは、元々飼われていたのか?」


「これだけ力が強ければ、王子の呪いが癒やされたのも納得ですね」


呪い? さっきも言ってた……私が治した? この肉球の手で…?


「王子、この子、僕たちの言葉が分かるみたいですよ。僕が話したら、すぐ疑問を浮かべた」


あまり詳しく私の思っていることはわからないみたいだが、感情の変化などはわかるらしい。それだけでも大分ありがたい。


「やはり俺が見込んだハムスターだな。エレナは少し呼びにくい……エル、と呼ぼう」


「エル! 可愛いですね。あ、そうだ、ご飯をあげましょう。さっき上質な野菜やナッツをーー」


エリオットが持ってきた袋から取り出されたのは、小さな花の種のようなもの。

食べたことないのに、不思議と惹かれる香り。気づけばもう飛びついていた。

両手で種を抱えて夢中でかじる私を、エリオットが微笑ましげに見つめるーーその視線を遮るように、王子の瞳が冷たく光った。


「……エリオット」


その低い声に、エリオットが一瞬で固まる。


「エルにご飯をあげるのは、金輪際私の役目だ。お前は二度とするな」


なぜそこまで……!? 

王子の声音に驚いていたエリオットだったが、王子の口調が拗ねた子供のようだったのが面白かったのか、ニヤリと笑った。


「エルちゃんは呪いを癒す力があるし、王子は女性が苦手。なら、いっそエルちゃんを婚約者にすればいいのではないですか? そうなれば僕も手を出せませんからね」


いやいやいや!?

王子にハムスターとの婚約を勧めるなんて、とんだ侮辱罪だよ!?エリオットさん、いくら4大貴族でもそれはまずいよ…!!


恐る恐る王子を見ると――


王子は一瞬きょとんとし、すぐに何かを思いついたように微笑んだ。


「……そうだな。私はこのエルと婚約を結ぶことにしよう」


その言葉に、エリオットは本気で驚き固まる。

王子は私をそっとテーブルに置き、目の前に跪いた。長いまつ毛の影が揺れ、その星屑のように輝く瞳が真っ直ぐ私を射抜く。


「エル。この私、ライナルト・ゼタシアと……結婚してくれ」


……いやいやいや、どういうこと!?

私、エレナ・レイシア、十九歳。

聖女の力を受け継いだハムスターになっただけでなくーー今、王子の婚約者にされそうなんですが!?

次回は8/14(木)の朝7:00配信です!!


6が短めだったので2話あげようと思います!

ep6 【おまけ】美しい少女の姿が見えた

ep7 悪役令嬢登場!?

ライナルト王子視点の6、エレナちゃん視点の7です

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