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初恋の行方

エレナちゃん視点です!!



王子の執務中、主のいない寝室はいつにも増して静かだ。


王子の女嫌いは、幼い頃からの聖女からの過剰な接触によるもの。王子は話しながら、すごく苦しそうだった。王子として生まれたばかりに、美しい顔をもって生まれたばかりに。


子供の頃の苦しむ王子の姿が、浮かぶほどだった。いつも、部屋で一人になってから涙を流していたらしい。


(泣かないで。ライナルト王子には、笑っていてほしいよ)


自然とそう思った。


そりゃ、いつも好きだ好きだ可愛い可愛い、結婚してくれと溺愛されるのには正直引いてしまっていたけど。


最近、王子の声がするのだ。王子がいなくても、頭の中で、聞こえる。


「なんでそんなに可愛いのだ…」

「エル。結婚してくれ」


ずっとずっと、別の人の声がしていたんだけどな。誰よりも優しくて、私のことを女の子扱いしてくれる。大好きな初恋の人の声。小さい頃からずっと、これからも一緒にいるのだと思っていた人。


(ユアンは、私がいなくなって、どうしているんだろう。アーシャにも、会いたいな……)


2人とも、幸せになってくれていたらいいな。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



なんとも切ない気分に浸っていた時。


コンコン、というノックに振り向くと、なんだか涙目のエリオットが部屋に入ってきた。


「エ、エル〜〜」


(エリオット!?何、どうしたの??)


エリオットが私をカゴから出し、泣きついてくる。


「カトリーヌさんが求婚されているのを見かけてしまった……」


なんだ。そんなことか。あんなに美人なら、いくらでもあるのでは…?

私の薄い反応を見たエリオットが、口を尖らせる。


「カトリーヌさんは、王子の婚約者候補なんだよ。だから、求婚する人なんて普通いないんだ。だから、初めて見たんだよ…!!すごく男らしいと思わない?立場を顧みずに思いを伝えるなんて。女の人は、そういうのに弱いって言うし……」


ガックリと膝をつくエリオット。ふむ。まぁ確かに……。


(エリオット、結果は見てきたの?)


「見れるわけないでしょ!!」


な、なんとも情けない……。いつも王子にはっきり言ったり、勇気のある人だと思っていたのに、カトリーヌさんのことになると点でダメらしい。


(相手は、ちゃんとカトリーヌさんに相応しい人だったの?私は、カトリーヌさんの思いを汲んで、身を引いているエリオットの方が素敵だと思うけどな)


私の言葉に、エリオットはハッという表情になる。


「相手は、貴族でもなんでもない人だった。ライナルト殿下みたいな、綺麗な黒い髪で…」



「名前は確か、ユアン?」


その瞬間、心臓が大きく波打った。


(その人って、特徴的なホクロ、なかった?)


胸の中にある泉で、大きな龍が暴れているような。息苦しさと痛み。


「あぁ、振り向いてこっちを見た瞬間に見えたんだけど、左目の下に、2つホクロがあったよ」


その瞬間、息が詰まるような感覚になり、胸の奥の痛みは張り裂けるように暴れ始めた。


間違いない。ユアンなんて名前、そうそういないし、ホクロの位置も……

呼吸は速くなり、足の先までガクガクする。


気づけば私は部屋を飛び出していた。


「エル!!」


エリオットの声にも構わず、ただ走る。

ずっと大好きだった人は、私のことを見ていない。

カトリーヌさんのことを、見ていたのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「エレナちゃん、大人になったら、結婚しようね」


ユアンくんはいつも、優しい目で私のことを見てくれる。

女の子らしくいなよ、と落ち着きのない私をお姫様みたいにしてくれる。


「うん!ユアンくん、大好きだよ!!!」


ユアンくんが、摘んだばかりの花をまとめて、花束みたいにして渡してくれる。


鼻を近づけるとふんわりと甘い香りがして、くすぐったかった。


ユアンくんが、優しく私の右手を握ってくれる。

私はユアンくんの方を見るのが恥ずかしくて、まっすぐ前を見ながら左手できゅっと握り返す。



子供の頃の淡い思い出が、走馬灯のように頭の中を駆け巡っていた。


次回もエレナちゃん視点です〜


よろしければブクマ等よろしくお願いします!

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