エリオットの恋心
なんか日程の入力がずれていたみたいで2日おきになってましたごめんなさい。
エレナちゃん視点です!
城は今日も静かで、朝の光が薄く差し込んでいる。
王子は奥の執務室にいるらしく、エリオットと二人きりだ。つまり、恋バナのチャンス。
(エリオット!!エリオットって好きな人いるよね?)
私の気持ちを読み取ったエリオットはビクッと体を震わせる。
「……エル、君ももしかして僕の感情がよめるの?」
いや、わかりやすいもん。
耳をぴくぴくさせながら、私は顔を上げる。
「詳細をきかせてよ!」
「僕……カトリーヌ様のことがずっと好きなんだ。初めて会ったのはまだカトリーヌ様が15歳で、僕は10歳だったんだけど。本当にその頃から綺麗な人で。上品だし、優しいし、それでいて努力家だし……まぁ、王妃候補だから、遠い存在なんだけどね……」
ゆっくりと言葉を選ぶ彼の声は、穏やかで優しくて、でもどこか震えていた。
エリオットも家柄としては同等である。カトリーヌ様が王妃候補でなければ問題なく結ばれることが出来たのだ。ライナルト王子の母上である現王妃がガブリエラ家の人間だったらカトリーヌ様は王妃候補ではなかったんだけどな……
実際当時の、最有力候補はガブリエラ家の人だったんだけど、現国王はウリエラ家の聖女を選んだ。
考えてみれば小さい頃から圧を与えられてきたカトリーヌ様はライナルト王子と結婚することを望んでいるはずなのである。
それでも私に優しいなんて、すごい人だな…エリオットが好きになるのも分かっちゃう。
耳をぴくぴくさせながら、私は彼の言葉をじっと聞く。
「もちろん僕の立場はラファエラ家だから、姉のレイチェルが選ばれることを望んでるんだよ。レイチェルが選ばれたなら、カトリーヌ様は、婚約者ではないし……でも」
エリオットが悲しそうに下を向く。
(そんな顔しないでよ、エリオット)
ヒゲをぷるぷる揺らして、彼の手にちょこんと頭を擦りつける。
「カトリーヌ様が努力してきたの、ずっと見てたから」
エリオットがそっと頭を撫でてくれる。
(エリオットは優しいね)
自分の気持ちよりも、好きな人の気持ちを大事にできる。それって、簡単なことではないと思う。
私は、初恋の男の子、ユアンのことを思い出していた。
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夏の終わりの午後、広場で男の子に混ざって遊んでいたときのことだ。
私が転んで膝をすりむき、涙をこらえていたら――真っ先に駆け寄ってきたのがユアンだった。
「エレナ、大丈夫!?」
優しい手で、そっと泥を払ってくれる。
「ちょっと血が出てるね……」
彼は自分のハンカチを破って、器用に私の膝に巻いてくれた。
「痛くない?」
「……だ、大丈夫」
泣きそうだったのに、ユアンの顔を見たら自然と笑えてきた。
すると彼は少しだけ真剣な顔をして、こう言った。
「エレナは女の子なんだから。無茶しないで、僕に任せればいいんだ」
その言葉は、精一杯の格好つけだったのかもしれない。
でも、不思議と胸がじんわりして、守られてるような気がして……。
「ありがとう、ユアン」
そう言うと、彼は照れくさそうに後頭部をかいて笑っていた。
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ユアンは他の女の子と結ばれるのだろうか。そう思うと、胸がキュッと締め付けられた。
次回は
Ep12 【番外編】お風呂ドキドキ事件!?
です。お楽しみに〜