表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/19

カトリーヌとレイチェル

今回はエレナちゃん視点です!!


爆美女の聖女さんを出します



気づけば広場では、ほとんどの人から痣が消えていた。

私の小さな歯で、たくさんの手に噛みつき、白金色の光を灯して……500人くらいは治療したかな?

当たりが暗くなったなとは思っていたが、いつの間に1晩を明かしたのか、もう日が登りかけている。



「……これは、どういうことかしら」

柔らかな風のような声が背後から響いた。

振り返ると、美しい金髪を陽に揺らす女性――レイチェル・ラファリス様が立っていた。第2聖女様である。お会いしたことはないが、姿は噂でよく聞いていた。それにしても、誰かに似ているな…?オーラからしてそうなのだろう。私の方を見て、金色の瞳が少し見開かれている。


その隣には、深い湖を思わせる水色の瞳の美女、カトリーヌ・ガブリエラ様。この国で一番の聖女とされる方である。赤毛が朝の光を受けて艶やかに輝き、彼女もまた驚きの表情を浮かべていた。


「お二人とも、お戻りに」

エリオットが一礼する。その言葉は何処か、ソワソワしているように聞こえた。


「エリオット、状況を説明して欲しいんだけど」

ふむ。わかった。レイチェル様はエリオットにそっくりだ。瞳と髪の色がまるでおなじだし、2人の雰囲気からして、姉弟だろう。


カトリーヌ様が辺りを見回し、少し眉を上げた。

「……あざが、見当たりませんね。確かに流行していると聞いて急ぎ戻ったのですが」


レイチェル様も同じように視線を巡らせる。


「姉さん、こちらのエルがアザが出ている者の応急処置を施してくれました」


エリオットがライナルトの手の上の私を示す。とたんに2人の聖女は驚いた顔をした。


「エリオットの言葉に間違いはない」

ライナルト殿下が頷く。


その言葉に、二人の聖女は同時にさらに目を瞬いた。

敵意も疑いもなく、純粋な驚きと――ほんの少しの感心が混じったような。そんな眼差しに私は少し驚く。


「……すごいわ。こんな小さな体で、これだけの数を治せるなんて」

レイチェル様が微笑む。その笑顔は本当に穏やかで、風のように柔らかい。


「ありがとう、あなたのおかげでみんな助かったわね」

カトリーヌ様の微笑みは国が揺らぐような美しさだ。



二人とも、私を責めるどころか、むしろ感謝の視線で見るものだから――正直、少し拍子抜けした。

もっとこう、「私たちの出番を奪ったわね!」みたいになるかと思っていたのに。


「エル様、本当にありがとう」

レイチェル様の金の瞳が、まっすぐ私を捉える。


胸がじんわり温かくなる。

……いい人たちかもしれない。


その瞬間、殿下が私を抱き寄せ、低く笑った。

「褒めるのはほどほどにしてくれ。エルは俺の婚約者だ」


婚約者、という言葉に二人の聖女が顔を見合わせ、小さく微笑む。

なんだか、その笑みに含まれた空気が……ちょっとだけ、大人の余裕みたいで悔しかった。

ん……?悔しい?私は別に王子と結婚したいわけではないじゃない。なんで少し、悔しいんだろう…


ライナルト殿下の腕の中で一息ついていると、レイチェル様がそっと私を覗き込んだ。

「エル様。少しお疲れのようね」


「当然だよ」

エリオットが横から口を挟む。

「これだけの人数を、一人で治療したんだ。根源の治療は2人がやってくださいね」


カトリーヌ様が、ふっと笑って赤毛を揺らした。

「では、私たちの出番というわけね。アザはなくなったみたいだけれど、呪いの気配は、まだ町の奥にほんの少し残っているわ」


それなら私も、と王子の手の中で暴れる。


「だめだ」

殿下の声が耳元で聞こえた。

「エルはもう十分働いた。本当にありがとう」

私が逃げられないくらいの力でそっと包まれた。


「2人、治療を頼む」


「もちろんです、殿下」

二人が同時に頷く。


そして、私たちは町の奥へ。

レイチェル様が柔らかな風を巻き起こし、瘴気を散らす。

カトリーヌ様が清らかな水で地面を洗い流す。


(なんて抜群の連携!)


2人のオーラ、聖女としての力はすさまじいものだ、2人ともこの国のトップなのが頷ける。


(あれ?エリオットさん…)

王子の少し前に立っているエリオットの横顔が、赤くなっているのが見えた。少し切ないような、甘いような、その視線の先には……カトリーヌ様。


(たしかにカトリーヌ様、すんごい美人だもんなぁ…エリオットさん、わかりやすすぎる笑)


レイチェル様は第2聖女だが、王妃として選ばれる可能性は大いにある。そうすればラファエル家が次の王妃になるわけだし、カトリーヌ様とエリオットさんが結ばれる可能性もある。


(カトリーヌさんとガブリエラ家の皆さんには申し訳ないけど、エリオットさんの顔見てると応援したくなっちゃうなぁ)


そんなことを考えていると、いつの間にか町の瘴気はすっかり消え去っていた。


「呪いのコアはどこに…?」

エリオットがキョロキョロと辺りを見渡す。


「ありえないくらい呆気なく浄化できたわ。きっとエルさんが街の人をたくさん治療したことでかなり弱体化していたのね」

カトリーヌが笑う。


その言葉にちょっと誇らしくなる。自分が不利になるかもしれないのに私のことを褒められるなんて素敵な人だな…


これは今度エリオットと恋バナしないとな!!



次回はエリオットくんとエレナちゃんの恋バナです。エリオットくんから、王子の様子も聞けちゃって…!?!?


Ep11 エリオットの恋心

8/20(水)7:00更新

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ