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第7限 屋上テラス開場!――フリーダム祭スタート

 放課後の屋上には、折りたたみテーブル三台と延長コードが並び、防護ネットには〈存在証明フリーダム祭!〉と極太ペンキで書かれた垂れ幕がはためいている。

 知恵は水平器代わりの下敷きをテーブル脚に差し込みながら周囲を見渡した。最後の仕上げを担うルネが、金色メッシュを跳ねさせて垂れ幕の紐を結んでいる。


 「よし、開幕コール行くよ!」

 ルネがメガホンを握り、肺いっぱいに息を吸いこんだ。

 「人生はーーーッ!?」

 自分で「存! 在!」と即レスポンスし、紙吹雪を散らす。

 (セルフ回答で完結した…!)


 第二声。「哲学部はーーーッ!?」


 今度は四人四様の返事が飛び散った。

 マルリは凛とした声で「自律!」

 ユウは「パンケーキ!」と意味深な絶叫。

 ノザは低く「連鎖――」

 知恵は慌てて「えっ、自由? いや、存在?」と途中で迷走。


 言葉も音程もまるで合わないまま、声だけが屋上にこだました。

 (ええー!? 統一感ゼロ!)


 しかしルネは満足げに親指を立て、「存在証明コール完了!」と宣言した。

 (これでいいの? ルネさん、判定ガバガバすぎる!)



 順番決めのホワイトボードがあっという間に埋まり、トップバッターは真栄田マルリ。

胸ポケットから折りたたみメモとストップウォッチを取り出すと、一礼して宣言した。


「本日は“動揺を五秒で鎮める呼吸法”を共有します。――タイマー、スタート」


 ぴ、と電子音。まさかの本格計測に先生は目を瞬かせる。


 マルリは指を五本立てた。

「二秒で息を吸って“落ち着く”。」――ルネが勢い余って三秒吸い込み、咳き込みながら「多めサービス!」


「一秒止めて原因を単語に。」――ユウはうっかり「あくび」と呟き、そのまま止め時間であくびが出る。


「最後に二秒で吐き“流す”。」――ノザは噴水と同じリズムで吐息を霧に変え、ポンプ音とハモる。


 知恵も遅れて真似る。

(落ち着く……“メガホン”……流す)――意外と効果あり。肩がふっと下がった。


 マルリは「計測終了」と告げると、ストップウォッチを掲げて満足げに微笑んだ。

「平均タイム四・九秒。目標達成です」

「細かっ!」と先生の心が叫ぶ。ルネは「誤差、存在証明!」とガッツポーズ。


 講座はきっちり三分で締めくくられたが、数字と理性が吹き抜けたおかげで屋上の熱気はほどよくクールダウン。

(ストイック講座で温度も空気も調整完了……さすが部長!)


 ルネが再びメガホンを握り、「二番手ユウ!」と叫ぶ。ユウはバスケットを抱えて中央へ。

 先生は自分のブースを横目にポットのスイッチを入れ直す。

 (湯温九十五度、ラスクよし。出番は四番目――落ち着け私!)


 夕陽が金色から橙へ変わり、テーブルの影が長く伸びる。フリーダム祭は序章を終え、次の賑わいへ加速し始めた。

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