第48話 東門への道
王城の重厚な扉をくぐり、俺とリナは東門へと急いだ。
背後では、王都からの避難民の足音が響き渡っていた。重い荷物を背負い、幼子を抱きしめ、人々はただひたすらに歩き続けていた。疲労困憊した表情、そして、未来への不安が、夕日に沈む王都を一層陰鬱に見せていた。
「魔王軍が来るなんて、信じられない……」
「こんなことなら、もっと早く逃げていればよかった……」
「王都は終わりだ……」
人々の口からは、行き場を失った嘆きの声が漏れ出していた。
魔王軍の侵攻によって、王都は、もはや安全な場所ではなくなった。
街道沿いには、放棄された店や家が散らばり、無惨な光景が広がっていた。
その中で、目を引くように、数多くの人々が略奪を繰り返していた。
冒険者ギルドの紋章をつけた人々が、粗末な装備を身につけ、店を荒らしていた。
割れたガラスが散乱し、食料品や日用品が路地に投げ捨てられている。店主は地面に倒れていた。
「何してるんだ!」
「略奪は許さない!」
人々が怒鳴り声を上げながら冒険者ギルドのメンバーに抗議するが、彼らは暴力で黙らせてしまう。
略奪の被害は拡大し、王都の秩序は完全に崩壊していた。
「冒険者ギルドが暴れているのか……」
「うわあ、パラディンとプリーストが略奪してる」
リナは顔をしかめてつぶやいた。
『混乱に乗じた略奪です。王国軍は防衛に手一杯で、治安維持の余裕はないでしょう。魔王軍だけではなく、内側から王国が崩壊しかけていますね』
同時にミミズはルリアの眷属の位置と時間を計算しているようだった。
『宿主、魔王軍の侵攻は目前です。ゆっくりしていると東門は突破されるでしょう』
「仕方ない。見た以上は放っておけない」
俺たちは、略奪に興じる冒険者ギルドのメンバーを制止しようとした。
しかし、彼らは抵抗し、すぐに剣を抜きつけてきた。
ミミズの力で身体能力を向上させた俺は、素早い動きで敵を次々と制圧していく。
リナは、戦いの喧騒をよそに、道端に散らばったお菓子を拾い上げようとしていた。
「うおおお!」
「くそっ、勇者レンだ!」
「腐っても勇者か」
冒険者ギルドのメンバーは、俺に圧倒され、次々と倒れていった。
略奪行為は鎮圧したが、たぶん俺が目にしたのは実態のごくごく一部だろう。
街の人々は、俺に感謝の言葉を述べた。
「助かりました! ありがとう!」
「勇者様、本当に助かりました!」
人々の笑顔を見て、俺は心が温かくなるのを感じる。
俺とリナは、再び東門へと歩き出した。
ちなみにリナの口元には、こぼれかけたクリームがへばりついていた。
「アイテムボックスがあればなあ」などと言っている。
買わずに手に入れるのは略奪者たちと同じだからな。
王都の街は、避難民で混み合っており、人込みを縫って進んだ。
『魔王城の虫たちが大量に門まで来ています。ルリアの眷属はまだ遠方ですね』
「そうか、前にミミズが言っていたように、ミミズの力と瘴気の力で倒せると確信しているんだが、……それでいいか」
『はい、宿主ならルリアの眷属など指先で倒せます。魔王城の虫など全部虐殺です』
魔王城の虫を……虐殺か。
ふと、俺はミミズのことを思い出した。
「ミミズ自身もまた、魔王城の虫だよな」
『そうですが、何か?』
「いや、魔王城の虫を殺すのに抵抗はないのかと」
『魔王城の虫は道具として魔王様に生成され、死んだら食料になるだけです』
「そうなのか」
『そういうものです』
やがて俺たちは東門の城壁に到着した。
東門では、すでに魔王軍の先遣隊が侵攻を開始しており、激しい攻防戦が繰り広げられていた。
「虫だ! 虫の大群だ!」
「くそっ、数が多すぎる!」
王国軍の兵士たちは最後の力を振り絞って抵抗を続けていた。
しかし魔王軍の数は圧倒的で、瓦礫が散乱し、城壁は今にも崩れ落ちそうだった。
「援軍はいつ来るんだ!」
「このままでは、城壁が落ちるぞ!」
王国軍の兵士たちは、恐怖に震えながら、最後の抵抗を続けていた。




