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第15話 ロンバの夢

 どのくらい時間が経っただろう。

 いまだ、ルリアは来ない。


 寒くて苛酷な地下牢なのだが、ミミズに強化された俺にとっては快適ではないがそれほど辛くもなかった。

 ルリアが来ればロンバは魔王のもとへと転送される。

 ロンバが手に入れば、魔王は王国を襲撃する理由がなくなるだろう。

 焦燥感に駆られるのも良くない。深呼吸して落ち着こう。

 

 しかしミミズは急に慌てた声を出した。


『宿主! 魔王様が! ロンバ! ロンバ! ってもう、魔王様もいてもたってもいられなくなって、眷属けんぞくの虫たちをこちらへ向かわせているそうです』


「ルリアは?」


『まだ人間の見た目を調整中です。ルリアがおめかしにこだわりはじめたら終わらないのです』


「ルリアは本当に来るのだろうか」


『ルリアは魔王国の宰相、魔王様の忠実な配下です。魔王様の眷属も来るし、大丈夫ですよ』


 魔王の眷属も来るのか。

 ますます何が何だかわからなくなってきた。


「わかった。ちょっと休むから誰か来たら起こしてほしい」


 眠れるかわからないけどね。


「リナの出番ね! 自慢のスキル、スリープ!」


 俺は一瞬で眠りについた。


 ◇◇◇


 そして夢を見た。


 俺は魔王城の上を飛んでいた。

 魔王城は埃ひとつなく美しく輝いている。

 見下ろすと甲冑と旗印から王国軍と思われる大戦団に魔王城が包囲されている。


 魔王が「ロンバ、掃除せよ」と指示すると、優美な女性が「承知いたしました」と答えている。

 万を超える王国軍が粉々にされ、煙となって流れていく。

 魔王は慈しむようにロンバを見つめている。


 場面は変わり、魔王城が泥にまみれた光景が広がっていた。

 ロンバがそれを粉々にするたびに、さらに泥が魔王城に押し寄せてくる。

 そして王国軍の雄たけびが聞こえ、大量の足音が近づいてくる。

 魔王は「ロンバを王国に取られた」と悔しがっている。


 そして領都ルドリアを空から俯瞰している光景が現れた。


『ここからは夢ではないですよ』というミミズの声が響いた。

 いや、夢だろう。頬をつねっても痛くない。


 王国軍の兵士と同じくらいの大きさの蜂が飛び回り毒針を刺しては兵士が倒れこんだ。

 巨大なトンボがその口で兵士を噛み取り咀嚼しながら火を吐いて飛び回っている。

 王国は宙を飛ぶ魔物に対して剣や槍は届かず、弓矢を射ることくらいしかできない。

 巨大な蛾が火の粉をまき散らしながら舞っている。

 ルドリアの城壁は次々と崩れ落ちていく。

 聖騎士団は勇敢に抵抗するが、魔王軍の数はあまりにも多すぎた。

 ついに崩れた城壁の隙間から甲虫の魔物が溢れ出し、街へと侵入していく。


『ギルバートは、かつてルドリア領の有力貴族だったが、正当な後継者ではなかった。彼は、領主の座を狙うライバルを暗殺し、巧妙な陰謀を企てて領主の座を簒奪した。暗殺を隠蔽するために、多大な資金と権力を使って証拠を隠滅した。それにはさらなる殺人も含まれている。だがそれらの暗殺を実行したルリアに弱みを握られて、コントロール下に入った。ルリアに命じられて王都エメラルからロンバも手に入れた。だが、ルリアに裏切られて領都は壊滅したのであった。つづく』


 城の中ではギルバートが頭を抱えてうずくまっていた。

 

 ……


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