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悪女と呼ばれた公爵令嬢、婚約破棄されたので辺境で好き勝手します

作者: 天野 恵
掲載日:2025/03/09

 王城の広間に、私を糾弾する声が響き渡る。


「公爵令嬢アリシア・フォン・ローゼンシュタイン! 貴様の悪行はもはや看過できぬ!」


 王太子ユリウス・フォン・ルベリオンが、怒りに満ちた声で私を指さした。


「貴様は嫉妬に駆られ、伯爵令嬢クラリッサを陥れようとした。よって、婚約は破棄し、貴族の身分を剥奪し、辺境へと追放する!」


 広間に集う貴族たちが、一斉に私を蔑む視線で見つめる。


 だが、私はそれを冷静に受け止めていた。


(なるほど……この茶番、ようやく終わるのね)


 私が王太子の婚約者だったことをよく思わない者たちが、私を陥れるために仕組んだ陰謀だ。証拠もなく、ただ感情的に私を断罪する王太子は愚かとしか言いようがない。


「……わかりました」


 私は静かに言い、王太子を真っ直ぐに見つめる。


「ですが、ユリウス殿下。今後、必ず後悔なさるでしょう」


「何っ……!?」


 私の言葉に王太子はわずかに動揺するが、私はそれ以上何も言わずに踵を返した。


(さて、辺境で好きに生きるとしましょうか)



「ははは! お前がアリシア嬢か! 思ったより元気そうだな!」


 私を迎えたのは、辺境伯ガルハルト・フォン・アイゼンハルト。豪快な笑い声をあげる、屈強な武人だ。


「辺境の暮らしは貴族には厳しいぞ?」


「心配いりません。むしろ、私にとっては自由そのものです」


 王都の貴族社会で気を張る生活より、何倍も気楽だ。


 だが、私はすぐにこの地で自分の居場所を作ることになる。


(前世の知識を活かせば、この辺境でもやれることはたくさんあるわね)



 私は前世の知識を活かし、薬草学や魔道具の研究を始めた。


 辺境は王都と違い、医療も魔術も未発達。だからこそ、私の技術がすぐに役に立った。


「アリシア様! この薬、驚くほど効きました!」


「魔道具の灯りが夜でも消えないなんて……まるで魔法のようだ!」


 次第に、人々は私を「辺境の魔女」と呼ぶようになった。


(まあ、悪女よりはいいわね)


 自由な生活を満喫するうちに、思いもよらぬ出会いが訪れる。



 ある日、辺境の森で私は一人の男と出会った。


「ここは……?」


 銀の髪に紅の瞳を持つ、美しい男。


 だが、彼は重傷を負い、意識を失っていた。


(放っておくわけにはいかないわね)


 私は彼を屋敷に運び、治療することにした。


 目を覚ました彼は、鋭い眼差しを向けてくる。


「貴様、俺が何者か分かっているのか?」


「さあ? でも、貴方を見捨てる理由もないわ」


 彼は敵国・ガルヴァニアの皇子、レオナード・フォン・ガルヴァニアだった。


 やがて、彼との出会いが、私の運命を大きく変えていく――。




 レオナードは、敵国であるこの地に潜入していた。


「俺は帝国の内乱から逃れてきたのだ」


 彼の祖国では、皇位継承争いが起こっていた。


「ならば、ここで静かに暮らせば?」


「そういうわけにもいかん。……だが、お前のそばは居心地がいい」


 気がつけば、彼と私は互いに惹かれ合っていた。


 だが、そんな穏やかな日々は長くは続かなかった。


「アリシア様! ルベリオン王国からの使者が!」


 かつて私を追放した王太子が、助けを求めに来たのだ。




「アリシア……やはりお前は俺の隣にふさわしい」


 王太子ユリウスは後悔していた。


 クラリッサは偽聖女で、彼の国を混乱させた張本人だったのだ。


「どうか、戻ってきてくれ」


 だが、私は冷たい笑みを浮かべる。


「お断りしますわ」


「なっ……!?」


「私は辺境で好きに生きると決めました。それに――」


 私はレオナードの手を取り、彼の紅い瞳を見つめる。


「私は、彼と共に生きると決めましたもの」


 ユリウスの顔が絶望に染まるのを見ながら、私は新たな未来へと踏み出した。



 それから数年後――。


 レオナードは帝国の内乱を制し、新たな皇帝となった。


 私は彼の皇后となり、「辺境の魔女」ではなく「帝国の賢后」と呼ばれるようになった。


「お前と出会えて、俺は本当に幸運だった」


「私もよ、レオ」


 私は彼の手を握りしめながら、微笑む。


 もう、偽りの王都で縛られることはない。


 私は自らの意思で生き、そして愛する人と共に歩むのだから――。

短編小説連続投稿中!希望があれば長編化する予定です!

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