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悪役王子の後日譚~破滅ルートを回避したのに、何故か平穏が訪れない~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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体の変化

……酷いな。


馬に乗って先程から荒野を移動しているが、本当に何もない。


道の整備もされてないし、草木も少ない。


「本当に見捨てられた土地みたいですねー」


「確か気候の変動があったとか。あとは、瘴気が多くて魔物の数が増えたことも原因だな」


ここら辺は気温が一気に下がる。

イメージとしては王都が関東だとしたら、ここは東北といった感じだ。

自然が減ったのもあって、この数十年でその状態になったとか。

結果として、これ以上被害を広げないために辺境は封鎖した。

ついでに流刑地としたが、無論希望者は全員王都側に移動した後だ。


「邪神を倒したら、瘴気も消えるかと思ったんですけどねー」


「うーん、そうなんだよなぁ。俺も、その辺りのことはわからないし。ただし、減ってるという報告はあったみたいだ」


「なるほどー、残滓が残ってるって感じですかね?」


「そうかもしれない。まあ、後は地道に潰していくしかないだろ」


「そうですねー」


邪神が生み出したとされる魔物は、突然出現する瘴気から現れる。

そして、無差別に生き物に襲いかかる。

倒すと霧のように消えるので、正確には生き物ではないとか。


「とりあえず難しい話や、それらは弟に任せるとして……」


「ご主人様、止まってください。何か、こちらに向かってきますね」


「……ほんとだな。ひとまず、馬から降りておこう」


砂煙をあげながら、こちらに何かが向かってきていた。

そして、徐々に見えてきた……この世界に住んでる生き物、魔獣であるブルファンだ。

イノシシに似た姿だが、体長は一メートル以上あり、鋭い牙と突進で人くらいは簡単に潰せる。

しかも何でも食べる大食漢で、見つけた場合はいち早く倒す義務がある。


「ユキノ、すまんが任せる」


「えー? ご主人様が戦えばいいじゃないですか?」


「俺にはあの頃の力はないんだよ。闇魔法と同時に、ボスとしての役目も終わったしな。この先は怪我したら普通に死んじゃうと思うし。何より、まだ自分の状態を確認してないし」


「あぁー、そういえばそんな話を聞いたような……ププッ、役立たずのご主人様」


「おい? 聞こえてるからな? 言っておくが、まだ剣の腕は鈍ってない。俺は無駄に戦うのが嫌なだけだ」


「はいはい、仕方がないですねー」


クリアするまでの俺は、主人公である弟に倒されるまで強制的に生き残る設定だった。

何度か死にかけたこともあったが、その傷は闇の力が治すし。

多分、物語の強制力だと俺は思っている。

しかし、それも無くなった今……それを試す気にはなれない。

あの程度に苦戦はしないが、俺は出来るだけ楽がしたいのである(キリッ)


「ブルルッー!」


「きたぞっ!」


「はーい——よっと」


「ブルァ!?」


突進してきたブルファンの首を、横に避けつつもすれ違い様に鉤爪が切り裂いた。

ユキノの武器は収納が自在可能な特殊な鉤爪で、腕の甲に装着されている。

そして倒れてビクビクした後……動かなくなる。


「これで良しっと」


「相変わらず見事な腕だな」


「いえいえー、これくらいは簡単ですよ……とりあえず、ご飯にしません? 私、お腹が空きました!」


「それもそうだな。おそらく、この感じだとたどり着くのも大変だし食料も貴重だろう」


「ですです! それじゃ、準備しちゃいまーす!」


テンションが上がったユキノがテキパキと準備を進めていく。

冒険者でもある彼女は慣れた手つきで、木の棒や葉っぱなどを集めている。

俺は馬を見つつも、自分の仕事をすることにした。

積んであった道具を使って、簡易的なテントを設置する。


「ありがとうございます。あとは、火もお願いしますねー」


「ああ、わかった。さて、火を出すか……果たしてどうなるか」


俺は闇属性と炎属性の使い手で、闇の炎を得意技としていた。

……中二病とかいうな! わかってるし!


「とにかく闇が抜けた今、炎が出せるかどうか……うおっ!?」


手に炎をイメージすると、蒼い炎が出てきた。

それは、俺が転生してから見たことないものだった。


「あれれー!? それってなんです!?」


「わからん! いつも通りに火を出そうとしたら出てきた!」


「うわぁ……綺麗ですねー」


「お、おい? あんまり近づく熱いぞ?」


「あっ、そうで……あれ? これって全然熱くないですよ?」


「なに? 自分の魔法だから俺は熱くはないが……ユキノともなると変だな」


そもそも、この蒼い炎はなんだ?

いわゆる、赤色から高温になった炎とは違う気がする。


「とりあえず、私が用意した木や草に投げてみません?」


「……それもそうだな」


ゆっくりとボールサイズの火の玉を投げてみるが……火がつくことはなかった。

何回か試してみるが、うんともすんとも言わない。


「威力は充分なはずだが……なぜ、燃えない?」


「不思議ですねー? 全然熱くもないですし。いよいよ、本当に役立たずですかね?」


「ほっとけ! ぐぬぬっ……こうなったら赤い炎を出せば良いんだろ! いでよ炎ォォォ!」


「きゃっ!?」


「うおっ!?」


すると、掌から炎が出て空に舞い上がる!

その高さは十メートルを超えていた。

明らかに込めた魔力の量が少ないのにもかかわらず。


「だ、出し過ぎですって! あっ、今の少しエッチですね?」


「んなこと言ってる場合か! ……ふぅ、収まったか」


「でも、ちゃんと出ましたね? 今度はきちんと熱かったですよ?」


「そうなると、あの蒼い炎はなんだったんだ?」


「そんなのは後にしましょー。寒いし、お腹が空きました」


「……そうだな、日が暮れる前にやるとするか」


腹は減ってはなんとやらだし。


俺はひとまず疑問を置いて、食事の支度をするのだった。






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