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駆逐

門を開けて入ると、次々と荒くれ者が襲いかかる。


奴らの狙いはフーコとユキノだ。


「フーコ! 俺の足元から離れるなよ!」


「コンッ!」


「っておい!? ……そういや、強いんだっけ」


素早い動きで爪を使って相手に傷を負わせていく。

まだ成犬くらいの大きさだが、流石は最強の魔獣の一角か。

こいつら程度なら、そこまで心配はいらなそうだ。


「ユキノ! フォローしてやってくれ!」


「わかってますよー!」


ユキノが鉤爪をもってして、縦横無尽に駆け回る。

敵は姿を追うことも出来ずに、その場に倒れていく。


「へへっ! 隙ありだぜ!」


「そんなものはない」


「ぐはっ!!!!」


俺は間合いに入ってきた敵を反射的に切り捨てる。

同時に魔力を溜め、タイミングを見計らう。

ここはいずれ使うので、建物を燃やすわけにはいかない。

大勢が近づいてくる瞬間を……今っ!


「……二人とも! 下がれ!」


「コンッ!」


「はいっ!」


二人が下がったのを確認し、魔法を発動させる。


「紅蓮の炎よ、全てを飲み込め——フレイムウェーブ(熱波)


「ギャァァア!!!!」


「アツィイイィ!?」


炎の波に飲まれ、山賊達が倒れていく。

そのまま、骨すら残ることなく消えた。


「ふぅ、これで大分片付いたか」


「コンッ!」


「ですねー。よかったですね、役立たずにならなくて。どうやら、火魔法の威力は相変わらずみたいですし」


「役立たずとかいうな。しかし心なしか、威力が高くなった気もするが……フーコも、良く戦ったな」


「コーン!」


頭を撫でてやると、こちらの心まで落ち着いてくる。

やはり、もふもふは癒しだな。

その後も山賊を駆逐しながら進んでいく。

その道中には牢屋に繋がれている者達もいたが、ひとまず放置しておいた。

まずは、元凶である者を倒すために。


「おっ、あれが最後っぽいな」


「ですねー。どう見ても領主の館って感じです。といっても、今は山賊の根城ですけど」


「コンッ!」


すると、屋敷から山賊を引き連れたおっさんが現れる。

丸々と太った体は贅肉で、濁った目をしていた。

俺が散々始末してきた腐れ貴族そのものだ。


「な、何者だっ! ここは俺の国だぞ!」


「国? ここに国などない。確かに無法地帯ではあるが……」


「う、うるさいっ! お前達! ささっと殺せ! 女は生かしておけ!」


「へ、へいっ!」


「こいつは魔法を使うらしい! こっちも囲んでいけ!」


その言葉を受けて、俺達を数十人の男達が囲む。

命令した本人は、後ろに下がる。

……俺の一番嫌いなタイプだ。


「きゃー、怖いですぅ」


「棒読みで腕を組むな。ったく、緊張感がないやつだ」


「えへへー、だってご主人様の眉間にシワが寄ってるから。こいつらこどきを殺したところで、心を傷ませることはないんですよ?」


「……ああ、わかってるさ」


ユキナの気持ちは嬉しい。

確かに、人を殺すたびに俺の精神は病む。

俺は自分が生き残るためにやってきたし、それを正当化するつもりもない。

俺にできることは、その罪を背負うくらいだ。


「何をしてるっ! はやくやれ!」


「お、お前が行けよ」


「先にお前が……」


「ええい! 一斉に魔法をはなたんか! なんのために、貴様らを優遇してると思う!」


すると、その声に反応して奴らが構えを取る。


「ファイアーボール!」


「アクアショット!」


「ウインド!」


「ロックブラスト!」


「その程度の魔法で我を倒せるとは笑止千万なり! 全てを阻め——フレイムウォール」


周りに炎の壁を作って、全ての魔法を防ぐ。

属性など関係なく、その圧倒的魔力で。


「なっ!? つ、次々撃て!」


「魔力とて無限ではないはず!」


「弓も行け!」


「もう遅い……炎の槍よ降り注げ——フレイムランサー」


同時に展開していた魔法を発動させると、上空から炎の槍が降り注ぐ。

それらは山賊達を貫き、一瞬で蒸発させた。


「へっ? あ、ぁ? 何が起きた?」


「これで、残りはお前だけだ。一体、この地で何をしていた? 大方、好き勝手にやっていたんだろうが」


「こ、ここは無法地帯だったから俺の国にした! 好き勝手にやって何が悪い! 貴様だって追放された犯罪者だろう!」


「ああ、違いない。だから、これは正義ではなく俺のエゴだ。貴様が気に食わない……というわけでこの世から消えろ」


「や、やめ——ァァァァァァァ!?」


炎の火柱によって、人がいた黒い形跡だけが残る。


……あんまり気分のいい者ではないな。


まあ、いい……さあ、ここからがスローライフの始まりだ。






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