関根春香のおやすみその3
「で、用事ってなんなの、てかあんた誰よ。」
日が落ち夕暮れから夜に変わる前、住宅街の道の真ん中で女子中学生がふたりが静かに向かい合っている。
でも決してこれからドロドロした女同士の殴り合いなんかしない。私はこんな趣味なんてないしこれはこんな話なんじゃないんだ。
ただ話し合いをするだけ、キャッキャウフフな女の子同士のお話、座る場所もお茶する店もないからただ立って話すだけなんだ。
「はじめまして、はじめていらして秋原あいです。カナリヤ中学校1年生…は知っていますね、関根春香先輩」
「ん?私あんたに名前名乗ったっけ?」
「名乗ってなんかいませんよ、私が一方的に知ってるだけです。」
秋原あいと名乗る少女は笑顔で言った。彼女とこのまま話してるとヒットの言葉を借りるなら面倒くせーことになるのは目に見えてた。
さっきまで家に帰ってもやることないと言っていた私に言っておきたい。やることなくても早く帰ってシャワー浴びろと。
「ねえ、とりあえず移動しない?流石にじっと立ってると暑すぎる。」
もう夜とはいえ地球温暖化の舐めてもらったら困る。世界は深刻な問題に直面している今、この街も例外じゃない。
まだまだ生暖かい空気と湿った風がやんわりと私達の肌を撫でていく。
そんな場所になにもせず突っ立てろって言うほうが無理な話だ、今なら夏菜が暑いのが嫌いというのが嫌でも分かる。
「先輩は暑いの苦手なんですか?」
秋原あいは私に尋ねる。
「暑いのが得意な人間なんているわけないでしょ。苦手なやつなすぐ身近にいるけど。」
私の脳裏にどこかムカつく笑顔をした夏菜が真っ先に思い浮かぶ。
お前いつも夏菜のこと考えてるよな。
「違うわ、アイツが暑い暑い言ってるから嫌でも思い出すだけだ。」
私は秋原あいに聞こえないようにヒットに返答をする。
頭の中を覗くなと言いたいとこだけどヒットはそもそも頭の中にいるんだし言うだけ無駄、だけどヒットはなるべく干渉しないようにしてくれてるんだけど今回はしょうがないか。
「暑いの得意な人間ならここにいますよ、この私です。」
秋原あいは自分のことを指差し言う。きっちり制服を着てブラウスの第一ボタンをちゃんとしめリボンをしているにも関わらず汗1つかいていない涼しい顔をしていた。
「私は暑いのいうか夏が好きなんです。おかしいですよね名字が秋なのに。」
「それはそうよ、別に名前や名字は自分が決めたわけじゃないんだから。しょせん親が赤ちゃんぬの時の姿だけ見て自分達の願望を押しつけたのが名前なんだから、名字なんてもってのほか。」
「先輩は全然春香、感じしないですもんね。春香じゃなくて荒れる化の改名したほうがいいですよ?」
「あんたもあいって雰囲気1ミリのないわね。愛の欠片もなさそうだ。」
「全然名前通りですよ、私のあいは愛情のあいじゃない、出会いのあいなんです。だから私はお母さんとお父さんに感謝してるんです。なので実は感謝してるんです。この名前のおかげで会いたい物や人に会える。
だから今もこうやって先輩会えました。」
秋原あいは得意気に言う。
気づけば夜になり街灯が秋原あいを静かに照らす。
そこで見せた笑顔は年齢相当の幼さを伺えるが同時に私をゾワッとさせる何かをいっしゅんで感じさせた。
多分これ以上話していると完全に秋原あいのペースにのせられてしまう。
お前分かってるよな。
「当たり前でしょ、ササッと切り上げるわ。」
「どうしたんですか?さっきから独り言言ってるみたいですが癖ですか?趣味ですか?」
「それが趣味なら悲しすぎるな。」
「ですよねそうですよね、なら癖ということにいたしましょう。私も周りから独り言言ってる言われるようなのである意味仲間ですね。」
「今日初めて合って少し喋った後輩だなんて仲間なんてとても思えないわ。で、話は終わり、なら私は帰るけど、じゃあね。もう会うこともあいに行くこともないと思うけど。」
私はそう言うと後ろに振り返る。帰り道は真逆だけどしょうがない。別に帰れないわけではないし。
「いいえ先輩、私達は仲間ですよ。」
秋原あいの声がすぐ目の前で聞こえる、静かに冷たく囁く声に私の身体が凍りついたように固まり後ろを振り返ることができない。
秋原あいは汗で湿ったブラウスを後ろから指で下からスーッと指で撫でる。汗でブラウスが肌に張り付く感覚と指の感触がとても不快だ、でも今の私は彼女の息で思考以外が全て凍らせられたように自由をすることができない。
その後一通り背中を舐め回すように指でなぞり最後に肩に手をのせた彼女は私の耳元でこう呟いた。
「だって私達は同じコレクターなんですから。」




