第93話 三組の会合
翌朝-----。
スレーム・ガングとワイルド・レオの8人はダンジョン3に挑戦する為、近くにあるスリーフォの町に向かう準備をしているところだ。
スリーフォの町へは都市から出ている乗り合い馬車でも行けるのだが、町で宿が取れる保障はない。テントを持ち歩くのは荷物になるので自前の馬車で向かう。
馬車はスリーフォの町のすぐそばの大きな馬屋で預かって貰う予定だ。
クルーロはスレーム・ガングの馬車を興味深そうに眺めている。
「こっちの馬車いいな。荷台いい感じに改造されてるじゃん!
俺こっち乗りたい!」
「ボクもこっちがいいにゃ」
素知らぬ顔でレオも二人の後ろに並んだ。
「あんたたちの馬車じゃないから!」
お前らいつも乗ってるんだから今回は代われとレオに言われた。ロッカだけは馬次郎は渡せないと言い張って御者をかって出たようだ。
結果、ロッカ以外の4人はレオたちの馬車で行くことになった。荷物はそのまま。
いいのか?
レオたちの荷物はこっちに載っているし、俺たちの荷物はあっちなんだけど。
まぁ、長旅じゃないし、荷物は多くないからいいか。
ロッカは馬次郎ばかり重宝するからな~。
ファスティオンは普通の馬らしいけど、こいつだって役目はキッチリ果たせる優秀な馬のはずだ。
「ファスティオン、宜しく頼むな!」
今回は全員馬車に乗って移動するので目的地のスリーフォの町までは一日あれば到着できるようだ。馬次郎を取られないか心配しているロッカは御者を譲らないだろう。寄り道はなしだ。
◇◇
夕方にはスリーフォの町に到着した。馬車で町の中に入って行く。町には宿、道具屋、飲食店、服屋、食料品店、ギルドなど一通りあるようだ。
あまり子供を見かけないな。
ダンジョン目的で人が集まってるんだから当然か。
購入できる品はどの店も少し割高みたいだな。
都市で買い物して来たのは正解だったかもしれないぞ。
一同はまず宿が取れるかを確認していった。
はい。すでにどこの宿も満室でした。
賑わってるし、町の周辺に大勢の討伐者がテント張ってたから多分空いてないだろうとは思ってたよ。
でもこれだけ討伐者がいれば夜間の見張りを立てる必要はなさそうだ。
一同は一旦、町を出て近くの馬屋に向かった。
馬屋の利用料金は前金で10日、20日、30日プランがあるようだ。
10日プラン 8万エーペル
20日プラン 16万エーペル
30日プラン 24万エーペル
1日8千エーペルといったところだが1日プランはない。解約すると残りの日数分の残金が戻ってくる仕組みだ。吹きさらしだが馬車の荷台ごと預けられる厩舎は屋根付きなので荷台で過ごす討伐者もいるようだ。
契約日数が切れると馬、荷台、荷台に載せている荷物、全て売りに出されてしまうから要注意だ。
場所代なので契約後なら馬車は自由に出入りさせてよい。馬屋に預けている間は馬の面倒と荷台の警備をしてくれるらしい。
一番長い30日プランを頼むことになった。解約時に残金は戻ってくるので問題ない。契約日数内に戻れなくて売りに出されるほうが困るからだ。
馬次郎とファスティオンの場所は隣り合わせにしてもらった。
◇◇
夜を過ごすテントは馬屋の近くで張る事になった。
その前に町の店で夕食だ。
ダンジョンに持ち込む食料をここで消費するわけにはいかないもんな。
近くに店があるんだから利用しないとね。
ワイルド・レオの3人はリサレーチナ以外はお酒を嗜むようで酒場に行くことになった。
この町には酒場が3軒ある。待ち合わせていたわけじゃないが一同が寄った酒場にギルたちがいた。会うときは会うものだ。
のちに分かることになるが、ダンジョン3に入る者はこの酒場。
ダンジョン4に入る者は町の反対側の酒場。
ギルドでクエストを受ける者、または両ダンジョンに手を出している者は中位置の酒場に寄る。理由は近いから。
なのでお互いダンジョン3に入るつもりであれば会う確率は非常に高い。
レオは酒を飲んでいるギルを見て気づいた。
「あ、お前、闘技場で勝ったやつじゃねーか!」
「あ、お前、闘技場で大剣ぶっ壊したやつじゃねーか!」
「「トウマ、知り合いだったのか?」」
「え? ギルとレオ顔見知り?」
レオが余計な事を言いそうなのでロッカが割り込んで紹介した。
「こいつらは同じ依頼主に雇われている別組のパーティーよ。
身内みたいなもんかな?」
「へ~。そんなに雇える依頼主なのか。お前らすごい財力ある客捕まえてるんだな」
察したクルーロはレオが余計な事を言う前にメンバーを紹介した。
「君たちは知り合いみたいだね。闘技場で会っているから知ってると思うけど、俺たちのパーティー名はワイルド・レオ。
俺がクルーロ、こいつがリーダーのレオ。あっちにいるのがチナ」
「ボクはリサレーチナにゃ!」
レオは振り返った。
「もうチナでいいんじゃね?」
「そもそもレオが言い出したんだにゃ!
ボクもほんの少しだけ長いかにゃとは思ってるけど・・・」
「思ってんじゃねーか」
「もう。このくだり繰り返すの面倒にゃ・・・。
みんなチナって呼んでいいにゃ!」
リサレーチナは諦めたようだ。これからはチナって呼んでよい事になった。
「とにかく宜しく!」
ユニオン・ギルズのメンバーも挨拶を済ませた。
ギルたちの近くに席が空いていなかったのでバンが気をきかせたようだ。12名が座れて仕切りのある場所を取ってくれた。空席が多かった訳ではないので金の力を使ったようだ。
レオはギルの隣に座り話しかけた。
「お前は別格みたいだがあっちのカリーナとサイモンもそこそこやるようだな。
あのちっこいタズってのはオマケか?」
「タズはああ見えて解放できるぜ」
「ほう。見た目じゃ分からんもんだな。
うちのちっこいやつらも解放できるし」
「だよな! 何度ロッカに痛めつけられたことか。解放関係ねーけど」
「ま、あれだ。あいつはオレでも速すぎて手に負えねーよ」
「わはは。レオ、お前飲める口か?」
「いくらでも飲めるぜ、ギル」
「よし! じゃ、付き合え」
あの二人、もう打ち解けちゃったよ。
レオのやつ、ギルが年上の熟練者だってこと分かってる?
トウマたちは少しだけユニオン・ギルズの話を聞いた。
ユニオン・ギルズはメルクベルの南東側に拠点を持っているらしい。
カリーナの話ではタズの両親がいる家だとか。
なるべくタズは守るという約束で空いている部屋を借りているそうだ。
もちろん討伐者として活動しているのでタズが死ぬこともあり得る。
タズの両親はその点も承知の上だそうだ。
タズはユニオン・ギルズに加わる前にギルに命を救われているようで、タズの願いを両親が聞き入れて今の状況になっているようだ。
カリーナが言う。
「突然タズが討伐者になりたいって言ってきたときはビックリしたわよ。
仲間に入れてくれなきゃ一人で討伐に行く!って言うのよ。
タズ、私たちが折れるの分かってたでしょ?」
「えへへ。あのときはそう言えば仲間に入れてもらえるかな?って思ったんです」
「ホンっとズル賢い子」
ユニオン・ギルズはスリーフォの町で宿が取れたそうだ。
俺たちより早く来てたみたいだし、4人だからな。
ユニオン・ギルズは自前の馬車を持たない。いつも馬車は現地調達で不要になったら馬屋に売るそうだ。馬の管理が面倒だからだとか。
テントも貸し出しがある所でしか使わないそうだ。荷物が増えたら不要な物はメルクベルに送って必要最低限の荷物で旅をしているとか。
そういうやり方もあるんだな。
しばらくしてお酒を飲まない組は食事を終えると解散した。みんなのテントを一緒に張るつもりだったセキトモはお酒を飲むのを控えていたようだ。レオたちの分のテントの準備を手伝ってくれたのはチナだけだった。
「手伝ったのボクだけにゃ。皆覚えててよ。
これでレオたちに貸し一つにゃ」
どうやらチナは好意でやった訳じゃないらしい。




