第91話 ダンジョンの話
昨晩の歓迎の食事はロラックの奥さんであるバーニャさんが作った料理だった。バーニャは横幅のある元気なオバちゃんって感じの人だ。執事のロラックは料理をしないらしい。
ではロラックが料理を覚えずに何をやっているかというと、邸宅の管理の他にヨゴオートノ周辺地域の地形調査を任されているらしい。調査依頼を出して結果をまとめている事が多いそうだが、時には同行して現地調査もしているようだ。剣術に関しては並み以下らしく、モンスター絡みの案件は討伐者に依頼するそうだ。最近はこの地域にあるダンジョン内部についての調査を始めているとか。
ロラックは皆を集めてワイルド・レオが入ったダンジョン1、2の情報を元に現状分かっている範囲の説明をしてくれた。ワイルド・レオの三人も同席。
まずダンジョン1、2は南西側の山脈にあり、その二つのダンジョンの入り口は割と近くにあって距離は2kmほど。どちらのダンジョンにでも行ける位置にワンツという宿場町が出来ており、ダンジョン1、2に入る討伐者は大抵ワンツで過ごしているようだ。
クルーロはロラックの話にちょいちょい補足し出した。
「因みに南東側のダンジョン3、4の近くにはスリーフォという宿場町があるよ」
ダンジョン1、2の1回で入れる人数は3~5名。一人では入れない。挑むには最低3人の仲間が必要なようだ。1日で入れるのは6グループまでに制限されており、時間をずらして入らなければならないそうだ。1日6グループは少ないように思えるがこれは新規という意味だ。
新規のグループが入る時間と重ならなければ先に進んでいる継続中のグループは入れる。つまり1回でダンジョンを踏破する必要はなく、途中でダンジョンを出てもよいらしい。
ダンジョンの入り口がある層は第1層と呼ばれているようだ。ダンジョン1は第3層、ダンジョン2は第5層まであるらしい。階数は下層に降りるほど上がる。狩場の山で現在地を層で例えていたときとは逆だ。
入場料は一人3万エーペルと高い。まずダンジョン内の第1層で『証明の腕輪』を見つけて戻る事が下層に行ける条件だ。腕輪を見つけられずに戻った場合、入るには再度入場料を払う必要がある。腕輪すら持って来れない者は下層に行く資格はないと判断されるようだ。
ダンジョン1の踏破報酬は50万エーペル。
ダンジョン2の踏破報酬は100万エーペル。
ダンジョン1、2は踏破されている回数が多く割と安い報酬だ。入場者個人のパスナンバーが控えてあるのですでに踏破している者は当然ながら報酬は貰えない。踏破報酬目的で簡単なダンジョンを何周もすることはできないようだ。
「分け前を考えたら少人数で入ったほうが得だろうね」
ダンジョン内で採れたものは基本出口で買い取って貰える。持ち出しもあり。よく見つかる素材リストも掲示してあるそうだ。大抵は鉱石だがダンジョン内の地形を変えるような掘り方は禁止されている。要は拾って持って行ける程度ってことだ。
「チナがよく鉱石拾って来てたな。
重いから手伝えって言い出すし」
「クルーロ、うるさいにゃ」
ダンジョンは興行なので運営側も儲からないと維持できない。宿場町での売り上げの一部がダンジョン運営費にも回されているようだ。宿代が少し割高なので町の周囲にテントを張って過ごす討伐者もいるとか。
次はダンジョン内部についてだ。
ダンジョン1,2は入るとすぐに下層に降りる階段が作られていて、証明の腕輪を持っていれば下の階層に直行できるようだ。階層ごとに受付の人がいて資格を持っているか確認されるらしい。
三人の話では各層3~5kmくらいの広さはあったとのこと。1日1階層探索してダンジョンから戻っていたそうだ。そのほうがダンジョンをより長い期間楽しめるとか。
狩場の山も層で呼んでたけど、ダンジョンの階層は完全に仕切られている空間って考えて良さそうだな。
ダンジョン1の第1~3層は洞窟。第3層だけ最奥に祭壇のような人工的に作られた場所があったそうだ。
ダンジョン2の第1~3層は洞窟。第4層から迷宮と呼べる感じの人工的な通路が存在したようだ。第5層の最奥にダンジョン1と同様の祭壇があるらしい。
どちらのダンジョンも最下層に降りる前に受付で鍵を渡されたそうだ。最奥の祭壇に『踏破証明』というカードが入っている宝箱がいくつか散らばって置いてあり、対応した鍵でのみ開くことができる。鍵の合う宝箱を見つけ出すことも遊び心をくすぐるようだ。
「レオが見つけた宝箱全部鍵合わないんだもんな~」
「黙れ、クルーロ」
ダンジョン内もモンスターが出現するので当然死ぬ可能性はある。逃げ場として安全に過ごせるセーフティゾーンという場所があるそうだ。おそらくそのエリアは抗魔玉の粉を混ぜたもので仕切られているのだろう。出入口の階段に近いセーフティゾーンには管理者が常駐しているようだ。
三人の話では有料で備蓄食料や水を買えたらしい。
「運営もしっかりしてるよな~。ダンジョン内でも商売するんだから」
ダンジョン内に入った者たちが三日経過しても戻ってこない場合、捜索隊が出されるが、大抵見つかったときには誰か死んでいるようだ。
ダンジョン内に丸飲みにするようなモンスターはいないので痕跡で生死判断される。大抵は周りが血だらけになっているので食われたと分かるらしい。
一通り探して見つからなかった場合も死亡と判断される。
洞窟内は基本真っ暗。ヒカリゴケが生えている場所は明るい。皆が松明を使うと炭素中毒になる可能性があるので魔石ランタンの使用が推奨されているそうだ。
それと、運営側のメンテナンス作業でダンジョンに入れない日があるようだ。
「まあ、こんなもんだろ?」
「レオが説明してたわけじゃないじゃん。なんで最後だけ持っていくんだよ!」
「誰が締めたって一緒だろ。
それよりオレたちが次に潜るダンジョン3の話をしようぜ」
「ちょっと待って。
昨日のレオの話じゃ、ダンジョンに入って儲かったって言ってなかった?
今の話じゃ大して儲かりそうにないと思うわ」
ロッカの問いにクルーロが答えた。
「あー、それそれ。忘れてた。
ダンジョン内にもクエストがあるんだ!」
「クエスト?!」
「特定のモンスターにはナンバリングされたタグが打ち込まれていてね。クエスト対象になってるんだ。タグが打ち込まれているか分かるように対象のモンスターには光る塗料を数カ所付けてある。多分、二人組でいたやつらがタグと塗料をモンスターにつけてるんじゃないかな? 管理側で雇われている討伐者かもね」
「それって観測者みたいっすね?」
「そうだね。まあ、明かり持ってるから隠れて行動しているわけじゃないけど。
んで、俺たちが達成したクエストはダン2の最下層、地底湖にいた魚人討伐」
「「魚人?!」」
「そ。そいつだけで500万エーペルいったんだよ。
ちなみに倒しただけではダメでクエスト対象に埋め込まれていたタグを持ち帰らないと討伐証明にはならないから気をつけてな。あいつが地底湖に潜ったままだとタグ取れなかったかもな~」
ロッカは突っ込んだ。
「今、さらっと流したけど、何なの?そのモンスター。魚人って」
「名前通りだよ。頭が魚の顔した人型のモンスター。
尾ひれも尻尾みたいに生えてたよな? チナ」
「だからボクをチナって・・・。もういいにゃ・・・」
レオはスレーム・ガングのメンバーを見回した。
「お前たちは人型のモンスターを見たことがないのか?」
「ないですよ! それって人が取り込まれたって事だよね?」
「トウマ、それは人じゃねーからな。出会っても躊躇するんじゃねーぞ」
魚人と呼ばれたモンスターはおそらく魚と人が同時に取り込まれた複合体のモンスターという話だ。水掻きのある手の爪がデカい釣り針の形状になっていたらしく、おそらくその地底湖で釣りをしていた人が魚を釣り上げているときにスライムに取り込まれたのではと。話からすると魚、人、釣り針の三種混合の複合体モンスターだ。
魚人はレオが威嚇すると水中から飛び出して襲って来たらしい。
「オレの威嚇で逃げる選択をしなかったあいつは勝てる自身があったんだろうな。
結果はオレの勝ちだったが。わはは」
クルーロはその戦闘でレオが大剣を壊したと付け加えた。魚人をバカみたいに力強く叩きつけて地面まで大きく割れたそうだ。魚人の魔石と仕込まれたタグが地面の割れ目に落ちてたら何の収穫もない所だったと。
「回収できたんだからいいじゃねーか?」
「お前な~。それは結果であってたまたまだろ?
大剣壊すほど力入れるなよ」
「思ってたより地盤硬かったよな? わはは」
「魚人じゃなくて地盤かよ!」




