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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第六章 ダンジョン編

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第88話 電撃の双剣

 トウマは上空で旋回している巨大烏を狙って水の散弾を飛ばし続けている。今のところ全く当たる気配はない。

 ロッカとバンはそれを見ているだけだ。


 またダメか~、これで五回目。

 水滴は飛ぶには飛ぶんだけど、まったく当てられる気がしない。

 あのカラス全く逃げる気ないな。こっちが隙を見せるのを窺ってる気さえする。


「トウマ、もう半分いったわよ!」

「分かってますって! でも全然上手く飛ばせないんです。どうすれば・・・」


「トウマさん、おそらく普段のような剣の振り方ではダメです。

 私の感覚ですが石を手首だけで放り投げる感じでやってみてはどうでしょう。

 または剣先を押し出す、振った勢いで剣先が真っすぐ伸びる感じです」


「なるほど」


 水飛剣用に剣の振り方を変えたらいいのか。

 抜刀で剣を相手に向かって真っすぐ投げるって感じ?

 実際投げたら一回で終わってしまうけど。


 トウマは一旦剣を鞘に納めて何も持たずに素振りを試してみた。


 多分、こんな感じだ。

 忍者が手裏剣を投げる感じかな? 投げたことないけど。

 濡れた手で水を飛ばす感じ?

 子供の頃、イタズラで水滴飛ばして驚かせたときみたいな。

 ちっこいコたちはギャーって言ってたな。笑いながら。

 うん。違いは手が剣になっただけだ。


 もうちょっと、ゆっくりやってみよう。

 手首を柔らかくして、飛ばす方向に手首だけで押し出すようにひねって振り抜く。


「よし! なんとなく分かりました」


 トウマは再び剣を抜いた。


「あのカラス、まだ待っててくれるみたいよ。当ててみろってさ」


「にゃろ~!」


「多分、私たちが三人いるので警戒しているだけだと思います」


 ロッカの煽りに惑わされるな。

 冷静になれ、俺。


 トウマは抜刀の構えをとってカラスに狙いを定めた。


"ビュッ!"


 振り抜いた剣先から水の散弾が飛び出し、初めて狙ったカラスの方向に飛ぶ。しかし、当たらずに通り過ぎた。


「おしい! 今のいけたんじゃない?」

「あとはタイミングですね」


 今のはいい感じだった。あと4発だ。次で当てる!


「次、行きます!」


 トウマの放った水の散弾がついにカラスの羽を貫いた!


「やった!」

「お見事です!」


 羽を貫かれたカラスは体勢を崩し落下してきた。


"ズドン!・・・"


 でかっ。あのカラス大き過ぎだろ?


「さて、こっからは私の出番よ! 二人は手を出さないで」


 だよね。さっき用意してたから分かってたよ。

 ロッカ、新しい武器を使ってみたくてウズウズしてたんだろ?

 あのカラスでかいし、威力を確かめるにはもってこいだもんな。


 トウマとバンは顔を見合わせてロッカに譲るように一歩引いた。


 ロッカは両腰にある双剣に真魔玉を着けた。


 え? 何あれ? 黄色い真魔玉?

 真魔玉って赤、青、緑だけじゃないの?

 黄色い真魔玉なんて初めて見たんですけど、それも二つ。


 ロッカは双剣を抜き、切り替えスイッチをONにすると刃が薄黄色い輝きを放ち出した。そして落ちたカラスに向かって嬉々として走って行った!


 羽が傷つき飛べなくなっているカラスは羽を広げて足で掴みかかろうとしたり、嘴でつつく攻撃をしている。ロッカは難なくそれをかわして双剣で一斬り、二斬り。

 次の瞬間、カラスの全身にプラズマが走ってカラスが痺れたようにピタリと動きを止めた。


 ロッカは真魔玉の力をOFFにしてカラスの全身を斬りまくった。


 カラスが霧散していく・・・。


「バンさん、さっきカラスの動きが止まりましたよね? 痺れる剣?」

「ロッカの要望の雷みたいな威力とはいかなかったみたいですが抗魔玉の力を帯びた電気を発生させ、それを相手に流して痺れさせるそうです。

 炎熱剣もそうですが人に対しても影響が出ますのであれを使うときは気を付けて欲しいですね」

「え? それってヤバいものをロッカに渡しちゃったんじゃないですか?」


◇◇


 カラスを倒したのが見えたようで馬車の護衛をしていたセキトモとイズハがやって来た。


「トウマ、さっきの何?

 ロッカが攻撃したと思ったらカラスが全く動かずやられてたように見えたけど」

「自分も不思議に思いました。一体何が起きたっすか?」


 バンの話によるとロッカが双剣に取り付けた真魔玉は『真魔玉【黄】(しんまぎょく・おう)』と言うらしい。呼び名も決まっていなかったようで「き」より「おう」のほうが呼びやすいとロッカが「おう」にしたらしい。バンも今まで見たことがない色の真魔玉だったようだ。


 ご機嫌なロッカはカラスの魔石を回収して来て閃いたように言う。


「決めたわ! さっきの攻撃は『電撃の双剣(ツイン・ボルト)』にしよう!

 今度やるときは技名言いながらやるわ!

 電撃の双剣(ツイン・ボルト)!」


 それ必要? まあ、俺も炎熱剣!って言っちゃうけど。

 決めたのは双剣の名前じゃなくて付与能力の技名かよ。

 ちょっとカッコいいと思ったじゃないか。

 頼むから双剣には変な名前つけてくれ。

 あれ? 何で変な名前つけるの期待してるんだ俺。


 ロッカの双剣は一斬り目で帯電、二斬り目で放電するそうだ。仕組みは博士にしか理解できそうにないが放電は二斬り目の刃が離れた瞬間らしい。


 双剣が片刃な理由も分かった。刃が無いほうには電気を通さない素材が使われていて、攻撃を双剣で受けたときに刀身が自分に当たっても痺れないようにする為のようだ。二つ合わせて放電なので滅多に起きないと思うが念の為の片刃ということだ。


 あれかな? 博士はロッカがたまにやる短剣をクロスさせて斬るやつをやっても刃同士が当たらなければ大丈夫なようにしたって事かな?


 モンスターに触れていた場合は自身も感電するのでロッカは服も靴も耐電性のものにして感電するリスクを少なくしているようだ。


 それって対応してない俺たちはモンスターに触れてたら感電するってこと?

 ロッカがあれ使うときは避難しなきゃ危ないじゃん。


"トン"


 唐突にトウマの肩当てにロッカの双剣が当てられた。

 もう片方の肩当てにも。


"バチッ!"


「痛っ! ロッカ、何すんだよ!」

「どお?」

「どうもこうも静電気のバチってやつの3倍くらい痛かったよ!

 ちょっと全身痺れたじゃんか!」

「トウマはその程度か~。

 博士は悶絶してたわよ。『ぬおおぉ~』ってね。あはは」


 バンは驚いた表情だ。


「ロッカ、博士にそんな事したのですか?」

「試しにやってみろって言ったのは博士よ。

 心配だったから人に当たっても大丈夫か確認したら理論上は人が死ぬような電撃じゃないから大丈夫って。抗魔玉の力が乗ってるからモンスターにはかなり効くみたいだけど」


「いや、いや。だからって俺にもやることないじゃないですか!」


「戦闘時にいきなり今の状態になったらビックリするでしょ?

 一回体験してたら何が起きたか分かるからね。

 要は耐性作りの一貫よ。私も自分自身にやってみたわ、痛かったけど」


 自分でもやった? 変人か?!


「それならそれで言ってからやってよ。心の準備というものがあるだろ」

「トウマ、逃げるでしょ?」

「それは否定しない! 怖いじゃん」


「ロッカ、そういうことなら僕にも試してくれ」

「自分もお願いするっす」


 あ、変人がここにも二人いた。変人だらけじゃん。


 セキトモは電撃を食らい悶絶した。博士と同じような反応らしい。

 イズハは「うっ」と言って腰砕けになったようにヘタれた。

 ロッカはバンにも促したがバンは頑なに拒否した。


 バンさんの反応が普通だよな?

 そんなん自分から受けてみようなんて思わないって。


 ロッカは悪い笑顔を見せた。


「これブーストでやったらどうなると思う?」


『絶対やめて!』


◇◇


 馬次郎の元に戻る際、ロッカはバンの隙をついて仕掛けた。

 もちろんブーストではない皆に味合わせた普通の電撃だ。


「あっ、あん・・・」


 バンはビクンと身体を震わせ艶めかしい声を出してふにゃっと座り込んだ。


 なんかエロかった。

 これが絵物語ならバンさんの周りにハートを書き足したいわ~。

 顔真っ赤にしてるし、滅多に見られない表情だ。

 ロッカ、良くやった!


 そのあとロッカはバンにメッチャ怒られた。バンは今度やったらロッカの双剣でブーストを使ってやり返すと言った。

 ロッカはそれは死ぬかもしれないと反省した。バンのブースト5倍の威力を想像したようだ。


 うん、やっぱああいう不意打ちは良くないね。

 対モンスター用の武器なんだから人に向けちゃダメだぞ。ロッカ。


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