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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第一章 バルンバッセ編

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第8話 名づけは人それぞれ

 今はバンに『じょうろ』として使われているロッド。


”サーーーーーー”


 じょうろのロッドには真魔玉【青】(しんまぎょく・あお)が使われているようだ。本来は大気中の水分を集めて高圧縮した水を一気に放出する切れ味抜群の切断系の武器らしい。巨大蛙に使わなかったのは皮が狙いづらいからだったとか。


「トウマはここで荷物の番してて。私たちはあっちで洗ってくるわ」

「ちょっと行ってきますね」

「覗きに来ないでよ」

「は~い」


 ロッカとバンの二人は衣服に着いた泥を洗い流しに少し遠目の大きな岩陰に向かって行った。


 トウマは討伐者としての力量差に圧倒されていて気にもとめていなかったが二人とも均整の取れた体型だ。ロッカが並外れて素早いのは何となく分かる。しかし、バンは筋肉質というわけでもないのに並外れた力の強さを持っているのは理解しがたいところだ。だが二人とも十代後半の娘であることには違いない。


 服脱ぐのかな? 二人とも恥じらいはあるのね。

 もし、男が俺一人じゃなかったら覗きに行こうって話になってたかもな~。

 男の性ってやつだ。

 さすがに俺だけじゃ見つかったとき半殺しにされそうだから無理だけど。

 俺一人じゃ罪のなすりつけ合いでうやむやにも出来ないし、う~む。

 悲鳴でも聞こえれば助けに行く名目で覗きに行けるかもしれないけど、悲鳴が聞こえるわけもなく。

 はぁ~、大人しく荷物の番してるしかないよな~。


 トウマの耳には時折キャッキャ、ワイワイ楽し気な声が聞こえるだけだ。トウマは寝転んでしばらく二人の帰りを待った。


◇◇


 腹へったな。もう30分くらい経ってないか?

 遅いな、何かあったのか?

 見に行く? 行っとく?


 あ、戻って来た。


「すみません。遅くなりました」

「バンがさ~、それも洗うって言いだして抗魔玉の力溜めるのに時間使ってたのよ」


 バンは先ほど倒した巨大蛙のモンスター素材である蛙の皮を持ってきてトウマに見せた。バンは自慢げだ。


「トウマさん、見て下さい。こんなにキレイになりましたよ。臭みもありません」

「お~、キレイになってる。こんな色だったんだ」


 蛙の背中側の皮は深緑で腹側の皮は白だった。白のほうが人気があり高値で売れるそうだ。


 沼地の泥を被って泥色?だったもんな。

 蛙の成れの果てか・・・せめてその皮上手く使われてくれるといいな。


「バン、それ下敷きにしちゃおう。早くお昼食べよ~」


 ロッカ・・・。


◇◇


 蛙の皮を下敷きにしてバンが作って来た料理が並べられた。蛙の皮はゴムのような柔らかさでクッションとして中々良い感じである。


 蛙、いい仕事してるぞ。


「どれもおいしそ~、バン最高だわ」

「どう致しまして」

「いっただきま~す!」


”モグ、モグ・・・”


「飲み物もどうぞ」

「ありがと~。うまい、うまい」


 二人ともさっきまで蛙と戦っていたとは思えないな。

 おっと、俺ものんびりとはしてられないぞ。

 二人が全部食べてしまう前にいただかなければ。


◇◇


 一息ついてトウマはバンが使っている武器の名が気になったので聞いてみた。傷を癒したロッドと水の出るロッドは武器として使われたわけではないが呼ぶときに効果を説明している感じになるのはもどかしい。炎の球を出すロッドもだ。すばり武器の名前で呼びたいのだ。


「ところでバンさん。さっきの水が出るロッドは名前あるんですか?」

「水が出るロッドは『水のロッド』といいます。炎の球が出るロッドは『炎のロッド』、傷を癒したロッドは『癒しのロッド』です」


 まんまだった。


「もっとカッコいい名前に変えればいいのにね?

 だけどバンは悩み出したら何日もかかるみたいだから」

「それは・・・否定出来ませんね」

「私の短剣は、『斬丸1号、2号』よ! カッコいいでしょ?」


 う~ん、それってカッコいいのだろうか?


「どっちが1号なんですか?」

「え?・・・え~とね、こっちが1号でこっちが2号よ」


 おや? 随分間があったな。

 こりゃロッカ姉さんも見分けついてないな、どっちも一緒だし。


 二人がロッカをジーと見ているとロッカは2本の短剣を両手で持つと言い直した。


「オホン、右手に持つのが斬丸1号で左手に持つのが斬丸2号よ!」


 そうきたか! 何か目印をつけるわけではなくて持ち手で決めるわけね。

 左右交換したら名前も変わっちゃうのか。

 それならどっちだったか悩む必要はなくなるな。


 上手いと思ったのかバンは拍手している。


「トウマの剣には名前つけてないの?」

「はい、俺の剣は『俺の剣』としか呼んでいませんね。

 二人はこの剣を2スロットタイプの剣って言ってましたよね?」

「ふ~ん、名前つけてないんだ。名付けると愛着わくわよ」

「そういうもんですかね?」


 俺も何か考えようかな?

 じいちゃんに貰った剣だから『じいちゃん剣』、いや、『じい剣』か?

 名の付け方は人それぞれだろうけどこれはダサすぎるな・・・やめよ。


 ちなみに蛙を斬り裂いた大鎌は『長柄の大鎌』。ゴム兎を殴っていたグローブは『剛拳』と名付けてあるようだ。剛拳は抗魔玉の力を伝達する部分以外は拳を傷めないようにクッションが入っているだけで単に力で殴っていただけだとか。ゴム兎に後半使っていた短い槍はまんま『スピア』。昔、バンさんがメインで使っていた武器らしいが最近はあまり使っていなかったとのことだ。


 バンさんの使っている武器って見た事がないけど中央大陸に行けば手に入れられる武器なのかな?

 ロッカが実験台とか言ってたし、博士?とやらが全部作った武器なのだろうか? 


 癒しのロッド

 炎のロッド

 水のロッド

 長柄の大鎌

 剛拳

 スピア


 にしてももう6種も見てるぞ。

 バンさんいくつ武器持ってるんだ?

 ロッドの真魔玉は固定されているタイプらしいけど、真魔玉は【赤】、【青】、【緑】の3種類持ちってことだよな? 真魔玉って貴重な品じゃないの?

 簡単に手に入る物なら俺も真魔玉欲しいな~。

 剣の空いているスロットに【赤】を着けてみたい。炎の剣になったりして。


◇◇


 昼食後、しばらく沼地沿いをウロウロしていたロッカが戻って来た。


 魔石拾い逃してないかの確認?

 換金すればお金になるし拾い忘れは勿体ないもんな。


「そろそろもう一つのクエスト、巨大蜘蛛討伐に行くわよ!」


 バンは敷物として広げていた大きな蛙の皮を折り畳んだ。それをもの凄く圧縮して紐で縛ると背負い袋の中にキレイに押し込んだ。


「ゴミはトウマが持って行くのよ」

「はい、はい」


 さっきまで機嫌が良かったロッカはなんとなく今、機嫌悪そうになっている。トウマはゴミを集めて袋に入れるとゴミ袋を圧縮して持ってきた鞄にしまった。


 俺の鞄、ゴミ入れ用に持ってきたわけじゃないんだけどな~。

 さすがにバンさんみたいには圧縮出来ないや。あれは凄い力技だった。


 バンは山の方角に向かって指をさした。


「次の行先はあの山の麓にある洞窟です。

 蜘蛛は洞窟の中で巣を張っているようで採掘屋が入って行けなくなって困っているとか。依頼書に書かれている内容からすると洞窟の中で鉱石が採れるようですね」


「巨大蛙があの大きさだったからまた大変なヤツかもね? 蜘蛛キモいし」

「洞窟ですか、暗そうですね?」


 洞窟の話は聞いた事あるけど、実際入ったこと無いんだよな~。

 少し楽しみではあるけど目的が蜘蛛討伐だし大丈夫かな?


「トウマ、松明に出来そうな木を見つけたら拾っとくのよ」

「ロッカ、一応、松明は持って来ていますので拾わなくとも大丈夫ですよ」

「ならいいわ」


 さすがバンさん、軽装のロッカとは大違いだ。


「なんか言った?」

「いや、なにも言ってませんよ」


 ロッカのやつまた何かの能力使いやがったのか?

 もしかして俺の心の声、駄々洩れ?


 まだ不機嫌そうにしているロッカだが別にトウマと仲が悪くなったわけではない。


 3人は次のクエスト、巨大蜘蛛討伐の目的地である山の麓の洞窟へ向かった。


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