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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第五章 狩場の山編

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第81話 致命的な行動

狩場の山への挑戦3日目(最終日)。


 スレーム・ガングの5人は狩場の山の7層に向かっている最中だ。


「8層までなら行っていいかもね?」


「いや、いや、ロッカ。層を上がるごとにモンスター大きくなってるだろ。

 そろそろ巨大モンスター出るんじゃないか?」


「それは心配ないみたいよ。バンの考察では大型までしかいないようだから。

 あ、頂上にいるやつを除いてね」

「そうなの?」

「ええ、おそらくですが」


 バンの話ではスライムが湧いてくる横穴が大型までしか通れないサイズで、穴から出ると早い段階で擬態する事から巨大は発生しづらいだろうとのことだ。もし巨大なスライムが通れるような穴があるのなら予想したマザースライムはいないはずだと。


「なるほどね~」


◇◇


 7層に到着。前日に行ってない方向に進んでみると拠点が決まる前に大型の牙犬と遭遇。牙犬は間髪入れずに襲い掛かってきた!


 牙犬の攻撃をセキトモが大盾で受け、牙犬の足を止める。

 ロッカが斬り込み、注意を引き付けたところでトウマが背後から斬りつける。怯んだところでバンが大剣で牙犬の後ろ足を切断。更にイズハが牙犬に飛び乗り、前足付け根に小太刀を刺すと牙犬は横倒しになった。完全に動きを止めた牙犬にセキトモの重撃飛槍でとどめ。頭を粉砕!


 牙犬は霧散していった・・・。


「5人だとあっという間ですね」

「襲って来たし、大型に躊躇してたらやられるわ」

「にしても何も声をかけずに見事な連携だったな。

 僕ら確実に成長してるんじゃないか?」

「そうですね。

 イズハさんは私が斬った後ろ足側に合わせて前足に傷を負わせてましたから」

「あ、気づいてくれたっすか?」

「マジ?! 俺、気づかなかった~」


 一同は拠点を決めて討伐を開始した。


 遭遇した大型モンスターはゴム兎、牙犬、角鹿、爪狐、牙蛇の5体。小型、中型と合わせて合計14体の討伐に成功。


「今日はダンゴムシ出なかったわね?」

「蝶蜘蛛も出ませんでしたね。ずっと空中警戒してましたけど」

「2体とも頻繁に出てくるモンスターじゃなかったんだな」


 せっかくだから少しだけ8層まで登ってみようということになった。


◇◇


 正規ルートに戻って8層まで行くと、昨日、7層で見かけた討伐者たちと遭遇した。だが、何やら様子がおかしい。急いで逃げ帰って来たようだ。負傷して肩で担がれている者、武器や防具を失っている者もいてかなり疲弊している。


 ロッカは彼らに声をかけた。


「あんたたち、何にやられたの?」


 目立つ赤い装備をした男が答えた。この男は剣を失ったようだ。


「昨日会ったやつらか。

 大半は大型の山猫のモンスターによるものなんだが。

 そいつは何とか倒したんだ。その後がな・・・」


 男の話では山猫を倒した後に3体の中型の猿のモンスターが現れたそうだ。負傷者がいて彼らが満身創痍であるのを知ってか、武器や防具を強奪してきたらしい。 

 彼らは猿の目当てに気づいたので装備を投げ捨て、猿がそっちに気が向いている隙に逃げて来たそうだ。


「勿体ないが命には代えられないからな。

 武器に着けていた抗魔玉、真魔玉は外したから被害は最小減だと思いたいぜ。

 お前らも気をつけろよ」


 なんか前もいたよな?

 猿のモンスターって装備欲しがるんだろうか?


 バンは負傷者に治療を施すか迷ったが彼らの傷が致命傷ではないことと、まだモンスターに遭遇する可能性を考えて止めた。


 名も知らぬ討伐者たちは、足早に引き返して行った。


 ロッカがバンを見やるとバンは頷いた。


「今回はハズレだと思ってたけど、ここまで登って来た甲斐があったわ」


「猿って例のやつですよね? ヤバくないですか?」


「ロッカの今の言い方って、僕には猿探してた風に聞こえたんだけど?」

「機会があったらギルから得た情報の真偽を確かめたかったってだけよ」

「ギル? あー、もしかしてアーマグラスで情報聞き出しに行ったときのやつか?」

「そ。まだ猿いるか分からないけど、ちょっと現場見に行こう!

 とりあえず見るだけね。少し探して見つからなかったら戻るわ」


 ロッカは猿に手を出すつもりはないようだ。


 周りを警戒していたイズハが戻って来て話に加わった。


「何の話っすか?」


「イズハはあのときまだ加わってなかったから知らないか。

 トウマが討伐勝負に勝ったときの条件でギルから中央の情報を聞き出すって話だったと思うけど、ロッカとバンだけで聞きに行ったから僕たちも内容は知らないんだ」


「? そうなんっすね」


「ロッカ、もう僕たちも中央に来てるんだ。あとで聞かせて貰うからな。

 秘密は無しだぞ」

「分かった、分かった。戻ったらね」


 バンは大剣を二輪台車の鞘に納め、小回りのきく三刃爪と腰裏に3種のロッドを身に着けた。武器、防具を強奪する猿がまだいるかもしれない。二輪台車はこの場に置いて行く。モンスターや他の討伐者は周りにいないので当面は問題ないだろう。


 一同は先ほどの討伐者たちが逃げて来た方向に向かった。


 しばらく進むと、武器や防具を抱えている中型の猿を1体発見。猿は山の頂上方向に防具を引きずりながら向かっているようだ。こちらにはまだ気づいていない。


「やはり、武器、防具を集めているようですね。

 前に討伐した猿のように身に着けないところを見ると、ギルの情報と合致します」


「皆、分かってるわね?」


 皆は当然猿には手を出さないという意味で頷いたが、分かっていない者が一人いた。イズハだ。


 小ギルドで猿には手を出すなという話を聞いたとき、イズハはテントの留守番でそこにはいなかった。皆は注意書きで掲示もしてあったので先に小ギルドを見に行ったイズハも当然知っているものだとばかり思っていた。大きな情報共有の漏れ。

 それは致命的な行動だった。

 イズハは気配を消し、いち早く小太刀で猿の腕を斬りつけてしまったのだ。


 イズハに斬りつけられた猿は悲鳴を上げた。


「バカ! イズハ、何やってんの!」

「え?! この猿倒すんじゃないんすか?

 警戒するほど強そうではないっすよ」


「「そうじゃない!!」」


 イズハは不思議そうにしているが、皆は一気に緊張感が増して汗が噴き出した。


 ヤバい、ヤバい、何か嫌な予感がする。

 周囲を警戒しろ!


 トウマはそれにいち早く気づいた。

 斜め上から無数の何かがイズハに向けて飛んで来ていた。

 トウマは声をかけることしかできない。


「イズハ! 右上!」


 イズハはそれを聞き、すぐさま顔と心臓を腕で守る防御態勢をとりながらその方向に振り向いた。次の瞬間、その何かがイズハを襲う。


”ガン!ザクッ!ザクッ!ザクッ!・・・”


 一つはイズハの額当てに当たり弾かれた。だが、顔を守っていた右腕、胸を守っていた左腕、両足に何かが刺さった。それは短剣の刀身だけのような物だった。

 イズハに当たらなかった他の短剣のような物は次々に地面に突き刺さる。少し遅れて更に大きな何かがイズハの脇腹を裂き貫き地面に突き刺さった。もう1本地面に突き刺さったが、それはかろうじてイズハには当たらなかった。地面に突き刺さった大きな何かは槍のような物だった。


「ぐはっ!」


 イズハは傷口から血が噴き出し、患部に焼けるような痛みが走った。


『イズハ!!』


 短剣と槍のような物は、宙に浮き上がり、飛んで来た方向に戻って行った。


 イズハはしゃがみ倒れ、苦しみながらも持っていたポーションを取り出し、致命傷の脇腹に振りかけた。患部の修復が始まったようだが動けそうにない。


 一同が短剣と槍のような物が戻って行った方向を見やると、そこには頭部に1本の角が生えた巨大な芦毛の馬らしきモンスターが佇んでいた。距離は離れているが巨大なのでハッキリと分かる。


 狩場の山の主。

 討伐難易度Aの『ユニコーン』だ。


 頭部の1本の角は片刃の剣状。たてがみと尻尾は全て短剣のような物が束ねられたように見える。胸部、前足の肩あたり、後ろ足のともには盾のような物が付いている。更に後ろ足の関節部から後方斜め上に槍のような物が突き出している。全身武装した馬といってよいだろう。


 ユニコーンは足元に落ちている剣をくわえ、バリバリと食べ始めた。


 誰も声を発することが出来ない。だが、皆、武器を取り出して構えていた。

 皆、足が固まり、動くこともできずに汗だけが滴る。

 一瞬でも目はそらせない。


 恐ろしい威圧感を放つユニコーンは傷を負った猿が逃げ切ったことを確認すると、身構えている4人を一瞥して駆けるように山の頂上に戻って行った。


 一番先に声を発したのはトウマだった。


「・・・た、助かった?」


 何故かユニコーンは去った。

 皆は安堵し、へたり込んだ。


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