表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第一章 バルンバッセ編
8/140

第7話 沼地の巨大蛙

 トウマは沼地に足を踏み入れていた。眠っている巨大蛙を沼地から平地におびき寄せる為とはいえ泥で足がどんどん重くなってきている状況だ。


 うわっ、歩き辛い。

 これ走ることってできるのか?


 少し前、三人で巨大蛙を倒す作戦を練っていたのだが・・・。


 俺、やっぱり生け贄だったよ。


 作戦の内容はこうだ。

 ロッカがポツポツと散在している岩場を渡り、蛙の近くまで行く。

 眠っている蛙に石を投げつけて起こす。

 トウマを蛙の視界に収めさせて沼地から平地におびき寄せる。


 トウマの 「俺も岩の上にいたらダメなんですか?」という問いは「蛙に捕らえられると思わせないと食いつかないからダメ」と却下された。試しに「身軽なロッカがおとりになっては?」と言ってみるも「泥で足が汚れるのはイヤ」だと。


 わがまま娘め。


 とにかく沼地ではまともに戦えないので蛙を引き連れて平地に誘い出せ!との事だ。平地に誘き出せたらバンが迎え撃つ手筈になっている。


 沼地で配置に着いたトウマは手振りでロッカに合図した。ロッカは僅かな音しか立てずに岩と岩を次々に飛び渡って蛙に近づいて行った。


 あのマネは俺には出来ないな、身軽なヤツだ。


 ロッカは蛙近くの岩の上で配置に着くとすぐに石を投げつけた。


「ゲコ!?」


 蛙は起きて辺りをギョロギョロと見渡し始めた。

 ロッカはいち早く岩場を飛んで平地のほうへ戻って来ている。


「あとは頼んだわよ!」


 ロッカはウインクをしてトウマの後方へ去って行った。

 出番が来たトウマは蛙の気を引くように大きく手振りをした。


「こっちだカエルー! こっち来いよ!」


 蛙はトウマに気づいたようだ。


 さあ、鬼ごっこ開始だ。


ビョ~ン! ”ドシャ!”


 蛙はトウマの直ぐ傍まで飛んで来た。蛙は降り注ぐ泥の飛沫の中から姿を現す。


「ヤバっ、何て跳躍力だよ」


 トウマは泥まみれになりながらも平地に向かって全力で走り出した。


「うぉーーーーーー!」

「トウマ、急いで!」


 あと少しで平地に着きそうなところでトウマは何かに身体を巻き付けられた。


「うわっ! な、なんだ?!」


 トウマの身体に巻き付いて引っ張ったのは蛙の伸びた舌だ。トウマは沼地に引きずり戻されていった。トウマは必至になって抵抗したが踏ん張りの効かない沼地ではズルズルと引っ張られるばかりだ。


 ヤバい、食われる!


 状況を見て引き返して来たロッカが岩の上から飛び降り様に伸びた蛙の舌を短剣で斬りつけると、怯んだ蛙はトウマから舌を放して元に戻した。


「トウマ! 無事?」

「だ、大丈夫です。助かりました」


 二人は急いで沼地から平地に飛び出した。蛙はまだ二人を追って来ている。


「もう一回飛んで来そうだわ。もう少し離れるわよ」

「はい!」


ビョ~ン! ”ドシャ!”


「ゲコっ!!」


 蛙はまた大きく飛んで来たが蛙が降りた地は沼地ではなく平地である。少々手間取ったが作戦通り蛙を平地におびき出すことに成功したようだ。


 さあ、ここからは反撃の時間だ!


「バン、出番よ!」


 バンは蛙の近くにある岩の上にいた。2mほどの大きな鎌のような武器を持って仁王立ちしている。刃の部分は覆っていたカバーを外し薄白く輝いている状態だ。それはまるで死神の鎌。


 ついにバンさんが持っていた長物の出番だ!


 トウマはカバー付きの折り畳み式になっていた刃を本来の鎌の形に変形させて見せてもらった時も驚いた。その長く重い武器を軽がると扱うバンにも驚かされた。

 長い柄はしなるように出来ているので重い大鎌の刃を狙った所に振り下ろすのは難しい。だが、当たればその分強く重い一撃となるようだ。


”タッ!”


 バンは蛙から少しそれた左側へ向けて飛んだ。背中越しに両手で持った大鎌を力強く振ると長い柄がグググっとしなり大鎌の刃が遅れてやって来る。


「ハッ!」


”ズバンッッッ!”


 蛙の背中辺りの広い範囲が斬り裂かれ、皮が幅広くぶっ飛んだ。蛙は悲鳴をあげてひっくり返った。腹を上にした状態でもがいている。


 バンさんの狙いが外れた?!

 でも今ならひっくり返っているし、俺も攻撃できるぞ。


「トウマ、待って!」


 剣を抜いて蛙に向かおうとしたトウマをロッカは止めた。バンは振りきった大鎌の勢いを殺さずクルクル回転しているようだ。そのまま旋回して今度は蛙の右方向へ飛んだ。空中でもう一回転!


「ハアーーーーッ!」


”ズバンッッッ!”


 バンは大鎌でひっくり返った蛙の腹側の広い範囲を斬り裂いた! 蛙は身の部分を残し上下を薄く切り落とされた三枚おろし状態だ。泥が着いて分かりづらいが切断面は肉がなく粘土が詰まったような感じに見える。

 蛙はバンに腹を斬られた勢いで元の正面に戻って這いつくばった。


「トウマ、今よ。行って!」


 トウマは剣を抜き蛙に向かって走った。バンは目が回ったのか大鎌を手放し片手で頭を押さえている。


「トウマさん、あとは宜しくお願いします」

「了解です!」


 トウマは動けない正面を向いた蛙の頭に飛び込んだ。


”ズバッ!!!”


 蛙を縦に一刀両断!


 蛙はあっけなく霧散していった・・・。

 蛙から複数の魔石が落ち、蛙は消えていった。 『巨大蛙討伐』成功だ!


「蛙倒せたー! やりましたよ!」


「もう!

 トウマが捕まった時は冷や冷やしたわよ。こんなに服汚れたじゃない!」


 それ俺のせい?


◇◇


 少しすると、バンが泥だらけで厚みのある風呂敷を畳んだような物を持って来た。


「やっぱり残っていましたよ。

 どちらかの部位は残ると思っていましたがこんなに広い皮が2枚とも残っていました。ラッキーですね。この皮、ゴムみたいに伸縮性があるんです。もっと小さい物は知っているのですがこれほどの広さの物は滅多に無いかもしれません」


 あ~、それってあの上下切り落とした蛙の皮だったのか。

 バンさん、さっきの狙ってやってたってこと?


「ちょっとバン、これ見てよ! 私の服泥だらけなんだけど」

「うーん。それは・・・仕方がないですよね?」

「バンはちょっとしか汚れてないじゃない」


 俺が一番ひどい状態なのですが・・・。


「あ、そうそう。見て、この大きい魔石が多分あの蛙のだと思うんだけど。

 あいつ、他にもこんなに魔石落としたのよ」


「どうやら他のモンスターも食べていたようですね」

「バンもそう思う?」


 周りに他のモンスターが見当たらなかったのはそういう事か。


「近くにモンスターはもういないかもしれませんね。

 ここら辺りでお昼にしましょうか?」

「賛成~」


 バンさん切り替え早いな。

 そういえば腹ペコだ。なんかどっと疲れが出てきた。

 下手したら俺、死んでたぞ。思い返すとゾッとするな。


 すると、バンは背負い袋から第3のロッドを取り出した。手の甲側に伸縮性がありそうな皮の袋のような物がついた武器だ。


 何だあれ?


「本来の用途ではないのですがまずは身体を洗って泥を落としましょう。

 少しチャージする時間を下さい」


 何のこっちゃ?

 ロッドに付いている皮の部分がぐんぐん膨らんでるような気がするけど。


 バンはロッドの先に何かのアタッチメントを取り付けてロッドをゆっくりと傾けた。本来の用途ではないとのことだがしっかり別の用途で使おうと準備していたかのようだ。


 ロッドの先から噴き出した水が雨のようにこぼれ落ちる。


”サーーー”


 え~と、それって花に水あげるときとかに使う『じょうろ』?


「トウマ、泥だらけで汚いから先に洗っていいわよ。一人3分ね!」


 あら、ロッカさん。お優しい。


 トウマはバンにじょうろを持って貰い、頭から全身に水を浴びて泥を洗い流すことにした。


 バンさん、魔法使い感が更に増したな・・・。

 あ~、気持ちよ。寒い時期じゃなくて良かった。


「トウマさん、この水は飲んではいけませんよ。

 抗魔玉の力が残っているうちに飲むと下痢になります」


「え? マジですか?!」

「あ~、言っちゃうかなぁ~」


 おい、ロッカ! 俺を下痢にさせる気だったのか?

 バンさん? あなたもシマッタ、みたいな顔しない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ