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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第四章 都市探索編

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第66話 武器防具屋『雷神』(後)

 雷神の店主のオッサンの話では『ワイルド・ライツ』の刻印は3種類あるそうだ。〇に雷が落ちたような1本線の刻印が最上級、雷が2本なら二等級、雷が3本なら量産品でおそらく製作者が違うのだろうと。刻印が本物かどうかも分かるような工夫もされているらしい。


「この刻印が刻んである箇所に特殊な塗料が塗ってあってな、角度を変えて見ると微妙に色がついて見える角度があるんだ。それで本物かどうかを判別できる。にしてもこれほどとは・・・。ぐぬぬ・・・」


 まだオッサンは唸りながら剣を眺めている。その隙にトウマはセキトモにコソコソと話す。


「ヤバいですかね? あの剣、そんな凄いものだったなんて」

「見せてしまったものは仕方ないよ。

 確か僕のグレイブは試作品の段階だからか〇しか刻まれてなかったはず。

 もしかしたら完成品で線を追加して塗料を塗るって感じなのかもな?

 刻印が3種類あるなんて知らなかったよ」

「俺も知りませんでしたよ」


 オッサンが我に返ったようだ。


「あんちゃん、この剣どこで手に入れたんだ?」

「い、いや~。それは・・・教えられない、かな?」

「はは、そりゃそうだよな。

 こんな素晴らしいもんの入手先なんて簡単には教えられんか。

 だが、いいもの見せて貰った。ありがとよ」


 おおう? なんか切り抜けられたぞ。助かった。


 トウマは剣を返して貰った。


「ワイルド・ライツの最上級品を見せて貰った礼といっては何だが。

 俺の店の取って置きの一部を見せてやるよ」


 オッサンが店の奥から持って来たのは炎のロッド3本、癒しのロッド2本だった。


「見ろよ真魔玉付いてんだぜ。すげえだろ?

 癒しのロッドは熱意に負けて1本売ってしまったがな。

 これは本当に必要としてくれて俺が気に入った客にしか売らないと決めてるんだ。

 ここで買ってくれたわけじゃないが常連には両方持ってる嬢ちゃんもいるんだぜ。

 武器には見向きもせずに防具しか買ってくれないけどな」


「え? もしかして、その嬢ちゃんってバンさんだったり?」

「なんだ?! バンを知ってるのか。

 そうか。どうりでとっておき見せたのに反応が薄いと思ったぜ」

「バンは僕たちのパーティーメンバーの一人なんですよ」

「は? マジかよ。こりゃまいった。てこたーロッカも一緒か。

 そりゃどんな武器見せてもそれほど驚いちゃくれねーな、はは」

「なんか、すみません」

「は~。しかし、ワイルド・ライツはどういうわけか武器しか作らねーんだ。

 だからこの店の防具に関しては見る価値はあると思うぜ。

 うちで作った商品は『ライジング・ベア』って名だ。

 修理も請け負ってるし、オーダーメイドで作ることもできる。まあ、見て行けよ」

「セキトモさん、ここ修理も請け負ってるって。

 大盾ここで見て貰ったらどうです?」

「僕も今、そう思ったところだよ。

 ちょっと予定変更して大盾持って来ていいかな?

 ここからなら馬車利用して30分くらいで戻って来れると思う」

「いいですよ」

「自分も構わないっす」


 セキトモは大盾を取りに戻った。


 ちなみにオッサンの名は『ガライ』というらしいが近所の子供たちに熊のオッサンと呼ばれていたので商品名を『ライジング・ベア』にしたそうだ。


 二人はセキトモが戻って来るまで店内の武器や防具を見て時間を潰すことにした。


 イズハは陳列されている武器を眺めながらふと思った。


「さっき癒しのロッド1本売ったって言ってたっすよね?

 熱意に負けてって。まさかと思うっすけどローザさんじゃ?」

「癒しのロッドに熱意。あ、確かにローザさんっぽい」


 ガライに聞くとやはり癒しのロッドを購入したのはローザだった。


「まさかあの熱意あるお嬢ちゃんとも知り合いとは世間は狭いな。わはは」


 ローザは癒しのロッドを探して訪ねて来たそうだ。もし仕入れたら是非売って欲しいと。それから何度も店にやって来たそうだ。その熱意に負けて出してやったとのこと。


「あのお嬢ちゃん、くたびれた顔して金持って来やがったんだぜ。

 ありゃ、相当苦労して金集めたんだろうな。なにせ売値は250万だったから」

「250万?!」

「何驚いてんだ。真魔玉が付いてるんだぜ。それでも安くしたほうさ。

 あのお嬢ちゃんなら転売や解体せずに大切に使ってくれると思ったんだ。

 それにな、ワイルド・ライツの品はそう簡単に手に入らないんだぜ」


 ガライの話では何の連絡もなく突然ワイルド・ライツ社を語る仮面を着けた老紳士がやって来て二等級の武器を卸して行くらしい。卸値も高額だが物が物だけに金をかき集めて卸して貰ったそうだ。ワイルド・ライツ社製でも三等級の武器は量産品なので他の高額の武器とあまり変わらない。中心部の大型店舗に行けば容易に手に入るだろうという話だ。真魔玉を着ける場合はワイルド・ライツ社製にしたほうが無難らしい。新品ならどの真魔玉に対応しているかの説明書もついているそうだ。


「悔しいが、分かってるやつはワイルド・ライツ社製を手に入れるだろうな。

 ただ、そこから武器を卸して貰えたってことはこの店がそれに値すると認められたってことでもあるんだぜ。気になるもんあったら何でも聞いてくれ」


 店に他の客が入って来たようだ。


「ちわー、ガライのおっちゃん、久しぶりに来たわよー。

 もう! 雨降ってくるとは思わなかったわ」

「通り雨でしょう。すぐに止みそうですし」

「おう、ロッカとバンじゃねーか。いらっしゃい!

 お前らのメンバーも来てるぞ」

「は?」


 ロッカとバンだった。


「あれ? トウマたち何でここにいんの?」

「いやー、イズハが気になる店があるからって寄ってみたんです。

 まさかここで会うとは」

「セキトモさんがいないようですね? どうかされたんですか?」

「セキトモさんの大盾ここで見て貰おうって話になって、今取りに戻ってます」

「そうでしたか。修理や整備ならここで問題ないですよ」

「ガライのおっちゃん、腕は確かだからね。多分」

「おい! ロッカ、多分はねーだろ」

「あはは! ゴメンゴメン」

「ガライさん、私たちの装備の整備をお願いできますか?」

「おう、まいど。

 見てみないことには何とも言えんが出来ることはやってやるさ。うちの品だしな。

 高くついても代金はしっかり貰うからな」

「承知しております」


 二人が装備を渡しているとセキトモが大盾を持って戻って来た。


「あれ? 何で皆いるの?」


 バンとロッカはまだ行きたい所があるからと早々に店を出て行った。セキトモは持って来た大盾をガライに見せた。


「これは酷い状態だな・・・何だこの爪痕みたいなもんは?」

「それは巨大爪熊を討伐したときに傷ついたものです」

「は?! こんなデカい傷つけるモンスターと戦ったのかよ。よく生きてたな。

 それに石礫を食らったような跡も無茶苦茶あるな。普通はこんなに凹まないぞ」

「ですよね。

 凹みの多くは猿のモンスターから投擲受けたときのやつだと思います」


 ガライが大盾を持ち上げて振ると”ガサガサ”と音がした。


「あー、こりゃ中の緩衝材までいかれてるな。

 う~む。正直なところ言わせて貰うぞ。これは買い替えたほうがいい」

「もうダメですか・・・」

「えー」

「ダメじゃないっすよ。きっと何とかなるっす」

「その傷跡が恰好いいのに。どうにかならないんですか?」

「外枠はまだしっかりしてるがこれを直すとなると購入費より高くついてしまうぞ。

 それに傷跡が恰好いいと言われてもこの傷は盾としての機能を悪くしてるだけだから直さないとダメだ」

「そんな~」

「う~む。しかし・・・熊の爪痕か。これも何かの縁かもしれんしな」


 ガライはしばし悩んだ。


「そうだ! あんちゃん、これ使える部分だけ残して新しくするってのはどうだ?

 オーダーメイドに近くなっちまうがこの傷跡の部分にモンスター素材を埋めて強化するんだ。逆に突き出す感じにすれば傷跡が機能として生まれ変わる。

 他の凹みは叩き直して中の緩衝材はモンスター素材に交換だな。更に軽くする。

 ついでに傷がつきにくいように硬化塗料で表面をコーティングしてやるよ。

 全くの別物になっちまうし、高くつくのは確かだがこれだけの傷をつけるモンスターと戦うのなら強化は必須だろ?」

「セキトモさん、それいいんじゃない?」

「僕だけのオーダーメイドの盾か。

 確かにそそられるけど、費用はどれくらいになりますか?」

「そうだなー。高く見積もって100万ってところだな。

 俺もやるからにはいい物にしたいからな。

 見積もりギリギリまで強化してやってもいい。どうする?」

「う~、100万か、どうしよう。防具1点としてはかなりの高額だぞ」

「セキトモさん、やりましょうよ! 強化した上に軽くなるんですよ」

「同じ物が他にないっていいと思うっすよ。爪痕の形は残るっす! ぜひ!」

「う~ん、なんか二人に誘導されてる気がするけど。

 大盾は僕の物だからな。よし、やってもらうか!」

「やった!」


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