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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第一章 バルンバッセ編
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第6話 放たれる炎

早朝---。


 トウマ、ロッカ、バンの三人はギルド前に集合していた。ロッカは小さな鞄を背負っているだけで明らかに軽装なのだがバンはドでかい背負い袋を背負っている上に何やら包で覆われている長い筒のような物と大きめの手さげ袋まで持って来ている。


「いろいろ準備していたらこうなってしまいました」

「バンは荷物持って来過ぎなのよ。仕方ないから荷物持ってあげて、トウマ」


 にしても何が入っているんだ?

 あの長物は多分武器だよな? 背負い袋には重装備が入ってたりして。

 見たこと無い武器が出てくるかもしれないし、ちょっと楽しみかも。


 見た事がないグローブの武器の例もある。トウマの中でバンはビックリ箱的な存在に成りつつあった。あえて何も聞かずにお披露目を楽しみにする事にしたようだ。


「バンさん、俺何か持ちますよ」

「すみません。じゃあ、これだけお願い出来ますか?」


 トウマにはドでかい背負い袋でもなく、長物でもなく、大きめの手さげ袋が渡された。手さげ袋からはほのかにいい匂いが漏れ出ている。


「少し遠出になりますので昼食用にサンドイッチなど作って参りました」


 バンさん、料理も出来るのですか? すごいな。


「トウマ、それ落としてダメにしたら死刑だからね」


 おい、俺の責任重大じゃないか。


 いざ出発! 最初の目的地は巨大蛙のモンスターがいる沼地だ。


◇◇


 三人は街道から外れて沼地方面に向かっているとスライムと出くわした。街道は石畳で整備されており付近に民家もチラホラあるがこの辺りの道は整備されていない。見晴らしはいいが所々に草木が生い茂っている感じだ。ロッカはスライムを見つけるやいなや飛び込んで短剣で串刺しにした。スライムはこちらに気づく間もなく霧散していった。

 それが2回も続いたのでトウマはウズウズし出していた。


 俺もモンスター倒したい。


 すると、耳障りな羽音と共に蚊のモンスターが三人の元に飛んで来た。人間の頭ほどの大きさだ。口の針で刺すような攻撃をして来るので針蚊と呼ばれている。血を吸われようものなら干からびてしまうかもしれない。

 針蚊はくるくると飛び回ってトウマに襲い掛かって来たが針蚊の背後に回ったロッカが斬り伏せた。


「また、ロッカにとられたー!」

「早い者勝ちよ、もたもたしてたトウマが悪い。さっさと斬れば良かったのよ」

「だって針蚊ですよ。俺、初めて見たんですよ。そんなあっさり倒すなんて」

「そんなの知らないわよ」


 バンは周りを見渡した。


「そろそろ沼地までの中間地点でしょう。

 この辺りで少し休憩して行きましょうか?」


 三人は荷物を降ろし休憩することにした。


◇◇


 一息ついたトウマは沼地方面を見ていた。


 あと、半分か~。


「ん?」


 何か黒いのがこっちにぞろぞろと。

 ハッキリしないけど、あれって蟻のモンスター?


「ロッカ! バン!」


 トウマが声をかけると二人ともすぐに気づいたらしく身構えた。


「顎の牙が特化しています。牙蟻ですね」

「1,2,3,・・・。ちょうど10体ね」


 通常スライムサイズの蟻は『牙蟻』と呼ばれている。通常の蟻ではありえない大きさなのだがモンスター名の頭に『巨大』は付かない。大人の人間を大きく上回るサイズのモンスターに巨大という名が付くようだ。それほどでも無い大きさのモンスターには、爪、牙、角、棘、刃など特徴的、もっとも危険な部位の名が頭に付くことが多い。見た目で特化した所が見当たらない場合は何も付かないが体当たり系のモンスターはゴムと表現しているようだ。


「10体もいるし複製体ですかね?」


「そうかもね。スライムが各々同じ蟻に擬態するとは思えないわ。

 トウマが分裂させたスライムの時とは違うだろうし」


 うっ、スライムを分裂させた件、蒸し返された。


「あの蟻は自発的に複製体を作ったと考えるほうが妥当でしょうね」

「本体倒しても消えるわけじゃないし全部倒せばいいだけよ。

 眼が黄色だしもう私たちを警戒しているようね」


「二人とも。私に考えがあります。

 出来れば3m圏内にあの蟻たちを集めて頂けませんか?」

「ん?・・・OK! あれ試すのね!」


 バンが新しいロッドを取り出した。街でトウマの皮膚を治癒したロッドとは違い、柄の下側が膨らんでロッドの先が尖ってる形状だ。トウマが楽しみにしていたバンのビックリ箱お披露目のようだ。


「トウマ、早く来なさいよ!」


 おっと、こっちはこっちで集中せねば。


「今、行きます!」


 二人は円の内側に蟻たちを入れるように立ち回りつつ、ロッカが2体倒し、トウマが1体倒した。初めての連携としては上手くやっているほうだろう。


「行きます! 二人とも離れて下さい!」


 二人は集めた蟻たちから素早く距離を置いた。

 バンは左手で蟻たちの方向を指差し、右手に持ったロッドを上に掲げるとロッドの先から勢いよく炎の球が飛び出した。


”ボッ!”


 バンはロッドから飛び出した炎の球を頭上で円を描くようにぐるんと一周させ、炎の円が繋がると同時に蟻へ向けて放った。


「炎リング!」


 蟻たちの周り(5mくらい)に円になった炎が舞い降り、激しい炎が円の中心に向けて収束していく・・・。


”ゴワァーーーー!!!”


 収束した炎は凄まじい勢いで炎柱となりやがて消えた。蟻たちは丸焦げになって霧散し出した。


「な、な、何ですか今の? 火力半端なかったんですけど!」

「魔法みたいで凄いでしょ? バンがずっと練習してたやつなのよ」


 ロッカはバンの元へ駆け寄った。トウマも遅れて向かった。


「やったね、バン! 凄いわ!」

「上手く出来ました! はぁ~、緊張した」


「技の名前は炎リングにしたのね?」

「ロッカが技名を叫んで放つとカッコいいって言うから考えたのですよ」

「あはは、ノリノリで言ってたように見えたわよ」


「バンさん、凄かったです!

 あれも抗魔玉の力なんですか?」


「はい、このロッドは『真魔玉【赤】(しんまぎょく・あか)』を使っています。

 詳しくは分からないのですがこの膨らんでいる所に高圧縮したガスが溜まるようになっていて抗魔玉の力がのった炎が出せるようです。

 先ほどの炎は3発までしか放てませんけどね」


「いやいや、あれを3発も放てるなら十分ですよ。

 炎リングかぁ~、凄い威力でしたね」


 バンは少し照れていた。


 バンの話によると炎の球だけなら8発くらい放てるらしい。それで蟻を倒してもよかったそうだが、練習していた『炎リング』をやってみたかったそうだ。

 相手が素早くない事、水気が多過ぎない事、火事にならないように周りがひらけている所でしかあの技は使わないらしい。どこまで威力を上げられるかは使用者の能力次第だとか。


 あのロッドを使えば誰でも出来るってわけじゃないのね。

 真魔玉の力を知らない人はバンさんを魔法使いと思うかもしれないな。

 でも使っているのがロッカじゃなくて良かった。

 ロッカだと所構わずぶっ放しそうだもんな。


 何かを感じたのかロッカは不機嫌そうにトウマを睨んだ。


「トウマ、何か言った?」

「な、何も言ってませんよ」

「あ、そう。じゃあいいわ」


 この人コワいわ~、何かの能力者か?


 休憩を終えた三人は目的の沼地に向かった。


◇◇


「見えた! 先に確認してくるわ」


 沼地が見えたようでロッカは駆け出して行った。

 トウマとバンが沼地に到着するとロッカが沼地ぎわの大きな岩の上で沼地のほうを観察している様子が見てとれた。ロッカも二人の到着に気づいたようだ。


「バン、トウマ。荷物その辺に置いてこっち来て!」


 二人は荷物を置いてロッカのいる岩の上に登った。


「どうしたんですか?」

「多分、あれよ」


 ロッカが指差したほうを見ると、沼地の中のポツポツとある岩群の中にひときわ大きい岩のような物が見えた。泥を被っていて周囲に溶け込んでいるように見せかけているが少し動いている。周りの岩と比べると3倍はある大きさだ。


 ウソだろ?


「あ、あれが巨大蛙ですか?」

「随分大きいですね」

「今は眠っているみたい。あいつ動いてないからバンの炎リングで倒せない?」


「う~ん、沼地は水分がたっぷりとありますので威力は半減しそうです。

 それにあの蛙自身も水気を帯びていそうですね。火に耐性があるかもしれません。

 あの通り体全体に泥も被っていますので効かない可能性が高いかと」


「なるほど、それはやめたほうが良さそうね」


 三人は一旦荷物を置いた場所に戻り、蛙をどう倒すか作戦を練る事にした。


 作戦? 兎の例もあるしなんか嫌な予感しかしないんですけど・・・。


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