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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第三章 中央大陸導入編

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第57話 森の奇妙な猿たち(前)

翌日---。


 スレーム・ガングの5人は宿場町のギルドに出向いていた。


「しばらくここを拠点にするって言ってた話だけどさ~。

 この辺りで難易度高いのはもう近くの森のクエスト1つしか残ってないのよね~」


「このクエストで終わりですね。

 ここから遠出するくらいならメルクベルに向かったほうがよいでしょう」


「え? これで終わり?

 昨日と合わせてクエスト2つだけしかやらないんですか?」


「これ終わらせたらメルクベルに行こうって話よ。

 (この町スイーツ店少ないし・・・)」


 最後に小声でロッカの本音が聞こえたんだが。


 残っているクエストは『爪猿5体討伐』難易度Bだ。爪猿は大型で高さは大人の人間くらい。森には多くの野生の猿も生息しているようだが5体の爪猿がボスとして君臨しているらしい。爪猿は森に入り込む者を嬉々として襲って来るとのことだ。


「普通ボス猿って1頭じゃないんですか?

 この情報だと野生の猿たちは襲われていないってことですよね?」


「賢いモンスターかもね。難易度もBに設定されているし。

 ひょっとしたら同種を増やそうとして他の猿に手をかけてないのかもしれないわ」


「このまま放置していると爪猿は増えていくってことなのか?

 今いる5体は共闘関係と思って間違いないだろうな。厄介かもしれないぞ」


「今回は木の上に登ると逆に不利になりそうっすね。

 木の上で猿に勝てる気はしないっす」


「う~ん。複数同時に相手するのはキツそうね。

 ちょうどこっちも5人いるから1対1で戦えるようにするのはどうかな?」


 複数人で1体ずつ倒していくことが安全策なのだがモンスターが共闘しているとなるとそう上手くはいかない。熟練者であるロッカ、バンは1対1でも勝てるだろう。トウマ、セキトモ、イズハの三人も簡単には負けないはずだ。先に猿を倒した者が援護に回れば何とかなるのでは?という話になった。


 とにかくモンスター同士には連携をさせない。これが一番重要なようだ。木に登っている猿を追う必要はない。地上にいる猿から順に仕留めればいいだけだ。


 一同は早めの昼食を済ませ、爪猿がいる森に向けて出発した。


◇◇


 森に着いてしばらく森の中を進むと野生の猿を見かけたがすぐに逃げて行った。


 そして待ってましたと言わんばかりに目の前に3体のモンスター、爪猿が現れた。


 ウキー、ウキー、ウキキキ。


 爪猿は黄色い眼で警戒状態。猿同士で何やら話している。すぐに戦闘開始とはいかず、一同はその奇妙な猿たちの姿を見てしばし沈黙していた。


『・・・』


「え~と、あれ何ですか?」


 片腕で木にぶら下がり短剣を持つ猿。

 木の上で下手くそに胸当て装備をしている猿。

 地上にいるのは盾を持ってブンブン振り回している猿。


 皆が目にしている3体の爪猿は武装してるのだ。


 爪猿という割に爪は長くなかった。鋭利なのか、硬くて掴む力が凄いのかのどちらかであろう。前方三方向にいる猿同士の間隔はある程度離れているので1対1の戦いに持っていけそうではある。


「確か森に入ると襲われるという情報でしたね。ですが、死者が出たという情報ではありませんでした。ひょとして追い剥ぎでしょうか?」


「右の短剣を持ってる猿は私が相手するわ」

「自分が左の木の上のやつの相手するっすよ」

「じゃ、俺が真ん中の盾持ったやつに行きます。

 あいつ盾の使い方間違ってない? それもあり?」


「では私とセキトモさんで残る2体の相手をします。

 おそらく残る2体は私たちの背後に回っているでしょう」


『了解!』


 トウマ、ロッカ、イズハは同時に標的の猿に向かって走り出した。


 最初に猿と対峙したのはロッカだ。ロッカは短剣を抜き、木にぶら下がっている猿に斬りかかった。驚いたことに猿はロッカの短剣を持っていた短剣で弾いた。


「うそ?!」


 猿はぶら下がっていた木から飛び降りると尻尾をフリフリしながら思いっきりニカッと歯を見せた。眼の色は赤に変わっている。


 ウキキキ!


「気持ち悪いわね。何嬉しそうな顔してんのよ!」


 次に猿と対峙したのはトウマだ。盾をブンブン振り回す猿に近づけずにいた。


「だから、その盾の使い方間違ってるって!

 それは防ぐために使うもんなの!」


 イズハは走り込んだものの木に登っている猿を見上げていた。イズハは猿の注意を引き付けつつどう倒すか思案した。


◇◇


 バンとセキトモのいる後方からも爪猿が来たようだ。


 1体は斧を持っている。

 もう1体は石を一杯に詰め込んだ袋を引きずってやって来た。


「バン。あの袋に詰めた石、絶対投げてくるよね?」


「でしょうね。あの猿は任せても宜しいでしょうか?」


「おう。あいつの相手は大盾を持つ僕が適任だよな。

 他のやつより太ってるというか、見た感じ動きも鈍そうだし」


「斧のほうの猿は私が引き受けます」

「頼んだ」


 セキトモが予想した通り猿は袋から石を取り出し投げつけてきた。セキトモは大盾でそれを防ぐ。


「器用なやつだな。強烈な投石だけど僕には効かないよ!」


 バンは斧を振りかぶった猿の攻撃をかわしつつ反撃の機会をうかがった。まだ腰にある三刃爪は取り出していない。


 想定外はあったが当初の予定通り全員1対1には持ち込めたようだ。


◇◇


 一番先に決着をつけたのはロッカだった。少しの攻防を経てロッカは短剣を鞘に納めると、面倒くさそうに立ち止まった。突然動きを止めたロッカを警戒してか、猿も止まってロッカを注視した。


「追っかけ回すのも面倒だからね。さっさと終わらせてあげるわ」


 ロッカは一息ついて短剣を両方抜くと刀身の薄白い輝きが炎のように揺らめき出した。


「ウキ?!」


 何かを感じたのか猿はロッカから逃げようとした。が遅かった。次の瞬間には猿の全身が斬り刻まれて猿は霧散していった・・・。


「今のはブースト3倍よ。ってもう消えちゃったか」


 ロッカは短剣を鞘に納め、魔石・中を回収。猿が持っていた短剣を拾った。


「抗魔玉は着いてるわけないか。

 何よこれボロボロじゃない。これは要らないわ」


 ロッカはボロボロの短剣をポイと捨てた。


「さてと、他の皆はどうなってるかな?」


 ロッカが辺りを見渡すと一人だけまだ戦闘していない人物を見つけた。イズハだ。


「猿に何か仕掛けようとしてるみたいね?

 面白そうだから見せて貰おっ」


 イズハは刺突剛糸と短剣の抗魔玉を取り外し、木に登っている猿を注視しながら背後でこっそり糸を引き伸ばした。猿に伸ばした糸が見えないように中間で輪を作る。そして少し木から離れた位置まで猿の注意を引きながら移動すると、少し前に出て猿の警戒心を煽る。その間にこっそり背後の地面に糸の輪を設置。罠を仕掛けた。


 イズハは抗魔玉のついていない短剣をしっかり猿に見せつけると、仕掛けた糸の輪の中心にうっかり短剣を落とした。もちろんうっかりはフリだ。イズハは逃げるように近くの木に登って猿の様子をうかがった。


 すると、猿は木から降りて来た。誘い出し成功だ。


 猿が短剣を拾おうとした瞬間にイズハは木から飛び降り、木を支点として糸を引っ張った。仕掛けた糸が浮き上がり猿の右腕を縛り上げる。急に右腕が縛られ何が起きたか分からない猿は悶えた。


「その腕、貰ったっすよ!」


”カチッ”


 イズハの装着した抗魔玉の力が糸に伝わり見事に猿の右腕が切断された。


「あとは仕上げっす」


 イズハは絶叫している猿の背後に回ると、首元にクナイを突き刺した。


「多少皮膚が硬くても体重乗せれば刺さるもんっすよ」


 猿は霧散していった・・・。


 イズハは落ちた魔石・中と短剣を回収。猿が着けていた胸当ては明らかにボロそうなので拾いもしなかった。


「さて、あとは糸の回収っすね」


 イズハの元にロッカが歩いてやって来た。


「イズハ、やるじゃん。糸使いこなしてるわね」


「近接戦でやってみたかったっすけどね」


 今回、イズハは糸を使う際に始点となるクナイをどこにも刺していない。武器の説明でクナイは投げたり刺したりして使う武器だと思い込んでいたがクナイを持ったまま糸だけでも絡めることが出来ると気づいたのだ。


 腕を出してくるならその場で糸の輪を通しクナイを引いて切断するつもりだった。輪投げのように首に引っかけてもよかった。縄跳びのように糸を敵の背後に回して引くのもありだった。無駄に糸を伸ばさない分、回収も楽にできる。


 この気づきはイズハが対モンスターの戦闘力を格段に上げたことを意味していた。


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