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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第一章 バルンバッセ編

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第4話 クエストに挑戦

 バンはギルドのクエスト掲示版から剥がしてきた依頼書を3枚持っている。


『巨大(かえる)討伐 難易度C』

『巨大蜘蛛(くも)討伐 難易度C』

『ゴム(うさぎ)討伐 難易度D』


「手頃なのはこの3つくらいかと思います。

 蛙と蜘蛛は巨大1体でゴム兎は草原全体を縄張りとして10体のようです」


「前から思ってたけどモンスター名が安直だと思わない?

 兎だけがゴム兎であとは巨大がつくだけって・・・」


 どんなモンスターかは分かりやすいけど、なんだかな~。


「トウマはどのクエストに挑みたい?」


 巨大モンスターも見てみたいところだけど、1体相手じゃロッカが一人で倒しちゃうかもしれないもんな。


「う~ん、この中だとゴム兎ですかね?」

「賛成です。

 ここからそう遠くはないですし、このまま向かっても構わないでしょう」

「じゃあ、兎狩りに決定!」


 3人はゴム兎が生息する草原に向かうことにした。


◇◇


「トウマ、あんたの防具って胸当てと左腕の籠手だけなの?」

「はい。今は最低限の防具だけにしてます」


 ホントはお金ないから防具買えないだけなんだけどね~。

 今の装備も村で使わなくなったお古を貰った物だし。


「ではトウマさん、この盾だけでも持っていて下さい」


 トウマはバンから丸い小さな盾を渡された。


「有難うございます。2人とも軽装備ですよね?

 俺に盾貸して大丈夫なんですか?」

「この程度のクエストなら必要無いわよ」

「ゴム兎ってそんなもんなの? 俺は初クエストだから心配ですけど」

「こっちは3人いるんだから問題ないわ」


 草原に向かう道中ロッカはバンに膝かっくんのいたずらを仕掛けた。少し間を置いて忘れた頃にバンがやり返している。クエストに向かう緊張感はゼロだ。


 あの二人ってよう分からん。ロッカよりバンさんが1つ年上って話だったけど、二人とも護衛を任されるくらいの実力者ってことは確かなんだよな?


「そういえば、護衛は大丈夫なんですか?」


「バルンに無事送り届けるまでが護衛の依頼内容でしたので私たちの仕事はもう終わっていますよ。私たちはバルンに1週間ほど滞在して中央に戻る予定なので今は休暇みたいなものですね」


「護衛対象だった人って帰りの護衛は必要無いんですか?」

「大丈夫よ。博士は―」

「ロッカ!」

「あっ」


 バンはロッカを口止めした。


 何かマズい事でも?

 言ってはいけない何かを言いそうになったのか?

 護衛上の秘密か? 博士って誰よ? 気になる~。


「着きましたよ」


 話を逸らすかのようなタイミングで目的のゴム兎が生息する草原に到着した。今いる土手を下ったところから草原が広がっている。


「さてと。トウマ、準備はいい?」


 まずは俺がおとりになってゴム兎を誘い出す。そこでゴム兎の個体数と位置を把握して孤立しているモンスターから仕留めて行くって作戦だったな。

 俺、クエスト初心者なんだけど役回り酷くない?


 ゴム兎は縄張りに侵入した者に襲いかかって来るとの情報だ。草原のどこかに縄張りの境界線があるらしい。トウマは土手の上からジリジリと草原のほうに下りながら足を進めた。


「さっさと、行きなさいよ!」


”ドン!”


 ロッカに背中を押されたトウマは土手から草原に転げ落ちていった。


「うおおぁぁあ~」


 草むらの中に転げ落ちたトウマはすぐさま身体を起こし周りを警戒した。何かが草むらを走っている音がする。


”ガサ、ガサ、ガサ…”


 ヤバい、ヤバい、ヤバい、何してくれてんだロッカ!

 こっちにも心の準備ってもんがあるんだぞ。


 生い茂った草に隠れて姿は見えないがトウマの周囲を複数体の生き物が移動している。ロッカとバンは土手の上で何やら話ながら呑気にトウマを観察しているようだ。


 ロッカたちまだ把握できていないの?

 絶対何かいるって、そっちからじゃ分かんないの?


 トウマは自分で対処するしかないと悟った。


 確か抗魔玉の力の制限時間は10分だったな、上手くやらないと。

 バンさんから借りたこの盾がさっそく役に立ちそうだ。


「キィーー!」


 ゴム兎がトウマに飛び掛かってきた! ゴム兎の眼は赤色だ。トウマはなんとか持っていた盾で防ぐことに成功した。


「けっこう当たりが重かったな、コイツがゴム兎か」


 確かにゴムの塊みたいな兎だ。

 眼は真っ赤だし、普通の野兎と違って可愛らしくもない。


 ゴム兎はすぐさま切り返してまたトウマに飛び掛かった。斜めにジグザクな軌道でピョンピョン飛び回る。トウマは何度か攻撃を盾で防いだ事でゴム兎の動きに慣れてきたようだ。


「さあ、来いよ」


 トウマは剣を抜き、飛び掛かって来たゴム兎を縦一文字に叩き斬るとゴム兎は霧散していった・・・。


「よし、倒せた!」


 まだ他にもいる、スライムの時みたいな油断はしないぞ!


”ガサ、ガサ、ガサ・・・”


 今度はゴム兎2体が同時に飛び掛かって来た!


◇◆


 トウマが1体目のゴム兎と相対している頃、ロッカとバンはまだ土手の上にいた。


「おっ、始まったみたいね」

「本当に私たちは見てるだけでよいのでしょうか?」

「あのくらい倒して貰わないとね、何事も経験よ。

 ゴム兎は当たりが強いだけだし打撲くらいで済むでしょ。

 まぁ、当たり所が悪ければ骨折かな? 死にはしないわ」


「あっ、1体倒したみたいですよ。トウマさん凄い」

「やれば出来るじゃん、あの辺あと2体いるわね?」

「ロッカ、そろそろ援護したほうがよいのでは?」

「そうね。行ってやるか」


◆◇


 ロッカとバンが土手を駆け降りてトウマの元に到着した時だった。


”ズバッバッ!!”


 横一文字。2体同時にゴム兎を剣で切り裂くトウマの後ろ姿が2人の目に映った。二人は歩みを止め驚いた表情で顔を見合わせた。


「ハァ、ハァ…、あ、2人とも来てくれたんですね。

 遅いですよ~、死ぬかと思いました。

 これ見て下さい! 3体仕留めましたよ!」


 トウマはうれしそうに成果を報告したが倒したゴム兎は霧散しているので姿形は残っていない。


「手助けする必要なかったみたいね。トウマやるじゃん」

「凄いです! 私たちが援護する前に3体も倒すなんて」

「バンさんからこの盾を借りてたおかげですよ。助かりました」


 ロッカは辺りを警戒しながら落ちている魔石を回収した。


「この辺りにはもういないわね。もう少し奥まで行くわよ。今度は連携でいこう」

「もうですか? 待って下さいよ~」


 バンは小走りで先行くロッカに近づくと小声で耳打ちした。


「ロッカ、思わぬ拾い物だったかもしれませんよ、彼」

「ま、センスはあるかもね。もう少し様子見だけど」


 3人は更に草原の奥に足を進めた。


◇◇


「そっち行ったわよ、バン!」

「任せて下さい!」


 バンのグローブのような拳についている金属が薄白く輝いている。


”ドン!”


 一撃! バンに飛び掛かったゴム兎は頭を力強く殴られ爆散した。ロッカが駆け回ってゴム兎をおびき出し、短剣で斬りつけながらバンの元へ誘導。待ってましたとバンが一撃でゴム兎を爆散させる見事な連携だ。すでにゴム兎を5体も倒している。


 トウマは少し離れた後方で見ているだけになってしまっていた。


 あの二人、明らかに戦い慣れしてるよな? すごっ。


「クエストの情報通りならあと2体ね」

「ロッカ、少し時間を。これはもう時間切れのようです」

「そっか、戦闘中は収納出来ないから放出しっぱなしだもんね。

 博士も変なの作るよな~、バンはいつも実験台ね。あはは」


「これはこれで近距離の短期戦には使えますよ」

「それはバンのバカ(ぢから)があってのものでしょ?」

「失礼な! 私も女ですよ」


 二人とも余裕ありありだな。バンさんは見たことない武器使ってるしまた博士って人が会話に出て来た。何者?


 とりあえずトウマは落ちている魔石を回収した。


「ん? これってゴム兎の耳?」

「あ、トウマ、モンスターが落とした素材の回収も忘れずにね」


 擬態したモンスターはスライムと違って絶命する前に分離した部位が素材として残る場合があるらしい。内部の肉や骨は再現していないようで側だけが残るといった感じだ。こういうモンスター素材を使って作られる道具や装備などもあるとか。


 時々、ロッカがゴム兎の耳を切ってたのはそういう事だったのか。

 てっきり仕留め損なっているのかと思ってたよ。


 残る2体のゴム兎もロッカがあっさりと片付けた。ロッカは楽しんでいるかの如く斬り刻んでとどめをさしていた。バンは細く短めの槍に武器を換えて戦っていたが的が絞れなかったようでゴム兎にとどめをさすのは難しかったようだ。


 ロッカは満足そうだ。


「意外に早く終わったわね。バン、腕鈍ったんじゃない?」

「そうかもしれませんね。この槍は久しぶりに使いましたので」


 もう終わり? 俺、後半回収しかしてないんですけど・・・。


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