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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第二章 アーマグラス編

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第38話 カニが食べたい

 街に戻った5人はギルドに立ち寄っている。


【巨大猫討伐依頼 難易度C】

 討伐報酬 25万エーペル


【魔石換金報酬】

 魔石・小 10個 4万エーペル

 魔石・中 1個 5万エーペル


 合計 34万エーペル。


 試験だったので分け前はいらないとイズハからの申し出があった。仲間に加わるのだから今回の報酬はパーティー管理費に回そうという話になり、早計だがパーティーにイズハを加える更新手続きも行った。


◇◇


 博士の邸宅に戻り、執事のホラックにイズハを紹介した後、バンとロッカはイズハに契約内容の説明中だ。


「新しい武器の評価? 生活保障?

 皆さんこんな契約してたっすか? それで条件を満たす必要が」

「まあ、そんなとこね。私たちは中央に行く予定だし、嫌なら断ってもいいわよ。

 その場合は口止めの誓約書にサインしてもらうことになるけど」


「イズハさん、どうなされますか?」

「考えるまでもないっす。

 こちらから仲間にして欲しいとお願いした事っす。宜しくお願いします!」


 イズハは契約を済ませ正式なメンバーになった。事後報告になるがあとで博士に契約済みの書類を送るようだ。


「イズハさん、二階の空いている部屋を使って下さい。

 あと4部屋空いていますのでお好きな部屋でよいですよ」


「ここに来ていいんっすか? 自分の荷物少ないんですぐに取って来るっす」


 イズハは宿に荷物を取りに行った。


「歓迎会でもする?」

「そうですね。ホラックに頼んでまた料理を豪華にしてもらいましょう」

「やった!」


 夕食まで各々自由な時間を過ごした。イズハは30分ほどで戻って来て部屋を選んだ。その後、バンから新しい武器を貰って説明を受けていたようだ。


◇◇


 夕食になりイズハを歓迎して豪華な食事を堪能しているときだった。

 突然ロッカが訳の分からない事を言い出した。


「・・・やっぱり無いわね」

「何がっすか?」

「カニよ。カニ」

「カニ?」


「ホラック、カニは無いの?」


「申し訳ございません、ロッカ様。

 漁で蟹が獲れるのは稀でして高価でございます。

 それに最近は不漁のようで市場でもあまり見かけておりません」


「だと思ったわ。そこでこれよ!」


 ロッカはテーブルにクエストの依頼書を叩きつけた。皆が集まってそれを見た。


 『鋏蟹討伐 難易度D』。食用の蟹が獲れる川辺で蟹のモンスター2体の討伐依頼。


「このモンスター倒せばこの辺でカニ獲り放題じゃない?

 海じゃなくて川のカニだけど食用のカニって書いてあるし」


 バンは呆れ顔だ。


「なるほど。ロッカはカニが食べたいわけですね」

「そう! カニが食べたいのよ!」


 ロッカは今朝、この依頼書を見て無性に蟹を食べたくなったらしい。いかに蟹がおいしいかを皆に熱弁した。


 え? そんなんで次に挑むクエスト決めちゃうの?


 なんだかんだロッカの熱弁を聞いているうちに皆が蟹を食べたくなった。


◇◇


翌日---。


 ロッカは仁王立ちで網を持っていた。肩に担いだ網が大きいので垂れ下がって地面についている。


「さあ、みんな。カニ獲りに行くわよ!」

「「おう!」」

「皆さん、先に鋏蟹討伐ですよ。忘れないで下さいっ」


 今回も途中まで馬次郎に乗せて行ってもらう。馬次郎がいれば日帰り可能な距離なのだ。目的地近くにオドブレイクがあるので討伐から戻るまでそこに馬次郎を預ける予定。費用を払えば一時的に馬車を預かってもくれるらしい。


 目的地に向かう道中、ロッカはイズハに忍者を仕込んでいる。


「こうよ。にん、にん」

「こうっす、でご、ござるか? にん、にん」


 イズハは忍者が使うクナイのような投擲武器を貰っていた。抗魔玉付きだ。

 クナイと違うのは特殊加工された細い強靭な糸(ピアノ線のような糸)が腰横に装着する本体と繋がっている点だ。糸の長さは最大25mまで引き出せる。自動巻き取り式の巻き尺のようになっていて本体側に抗魔玉用のスロットがある。繋がった糸には抗魔玉の力が伝達している。それでクナイまで力を届かせているようだ。糸付きクナイは本体から着脱可能。もちろん糸が本体と繋がっていなければ抗魔玉の力は伝達しない。投げたら伸びた糸を含めてクナイを回収する必要がある事が欠点だ。

 しかし、投げて刺す、糸を絡めて引いて斬るという2つの使い方ができそうだ。イズハにピッタリの軽い武器でもある。予備の糸付きクナイは2本あるようだ。


 イズハはロッカ、バンの二人と相談して武器名を『刺突剛糸』と名付けた。


 あの武器でイズハの忍者感が更に増した気がするよ。

 ロッカは何だか楽しそうだけど。


◇◇


 一同はオドブレイクに馬次郎を預けて目的地の川辺に到着した。

 広めの川原には大きな鋏を二本携えた十本脚の蟹のモンスターが2体いる。2体とも大人の人間ほどの大型だ。


「あの2体ですか。横歩きであちこち動き回ってますね」

「さあ、イズハ、刺突剛糸の威力みせてあげなさい!」

「自分っすか? まだ上手く扱える自信ないっすよ」


 イズハは「甲殻堅そうだし刺せそうにないっすね。となると糸で関節を斬る? 長さは5mくらいで大丈夫っすね」と呟いてしっかりやる気のようだ。


「とどめはセキトモさんにお願いするっす」

「ん? 分かった。任せてくれ」


 イズハは2体の蟹が距離を離したタイミングで近いほうの蟹に向かって行った。

 セキトモも後を追った。

 蟹はイズハに気づくと両鋏をあげて威嚇した。

 イズハは構わず蟹に向かって走り込んだ。糸を5mほど伸ばすとクナイを地面に投げて深く突き刺す。それから糸で輪を作るように素早く蟹の両方の鋏に通して軽く絞めた。そして糸に体重を乗せて力強く引く。


ピン! ”バシュ!”


 抗魔玉の力を帯びた糸の締め付けで蟹の両鋏が関節から斬れて落ちた。

 相手に気づかれずに糸を通す。

 イズハには造作もないことだったがその効果は絶大だった。


「これで鋏の攻撃は無いっすよね? とどめは宜しくっす!」


 セキトモは両鋏を落とした蟹に重撃飛槍でとどめをさした。

 カニが霧散していく・・・。


 離れて見ていた三人もイズハとセキトモに合流した。


「イズハ、遠くて見えなかったけどカニの鋏落としたのその糸だよね?

 凄いな、もう使いこなしてる感じがしたよ」


 イズハは照れて糸付きクナイを回収し出した。


「思ってた以上っすよ。この糸、凄いっす。

 でも混戦になると扱いが難しいので短剣と併用っすかね?」


「やるじゃない。戦力として十分役立つわ」

「あっ、ありがたき幸せ・・・でござる」

「ぷっ。やっぱ無理があるわねその言い方。あはは」


 俺もイズハに負けてられないな。


「あそこに残ってるカニは俺、倒していいですか?」

「何言ってんの? 早い者勝ちよ!」


 トウマとロッカは競うようにもう1体の蟹に向かって行った。


 蟹は二人に脚の関節を全部斬り落とされて動くこともできなくなった。もう口からブクブクと泡を吹いているだけだ。


「こいつの甲殻堅いからトウマ、とどめさしていいわ。ブースト使いたくないし」

「了解っ!」


 トウマにとどめを刺された蟹が霧散していく・・・。

 『鋏蟹討伐』成功だ!


 セキトモとバンは苦笑いだ。


「あそこまでしなくてもよかっただろうに。カニかわいそ」


 残念ながら斬り落とした蟹の鋏は素材として残らなかった。鋏の使い道があるか分からないので落ちてなくても問題ない。


「さーて、本命のカニ獲るわよ。

 いるいる、手のひらサイズだけど大きいわ。

 バン、持って来てる網を使おう」


 皆でワイワイ。浅瀬の川の中にも入り食用蟹を30匹は獲った。


◇◆


 川の少し上流に大きな岩に乗ってる狼のモンスターがいた。

 その狼は騒がしい下流のほうを見て警戒していた。

 しかし、スレーム・ガングの5人は気づくこともなく何も起こらなかった。もし彼らが川の上流まで向かっていたら狼のモンスターと交戦することになったであろう。


◆◇


 街に戻ったスレーム・ガングの5人はギルドに立ち寄った。


【鋏蟹討伐依頼 難易度D】

 討伐報酬 5万エーペル


【魔石換金報酬】

 魔石・小 2個 8千エーペル


 合計 5万8千エーペル。一人1万ずつ分けて残りはパーティー管理費に回す。


 博士の邸宅に戻ると獲って来た食用カニを料理してもらった。


 カニ祭りだ!


 最初はおいしい、おいしいと騒いでいたが静かに食べる時間のほうが長かった。


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