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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第一章 バルンバッセ編
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第3話 付与する能力

 街中を歩くトウマの足取りは重い。治癒の薬の代金を支払う為、ロッカとの待ち合わせ場所に向かっているからだ。トウマはこのまま逃げてしまおうかとも思った。


 宿は教えてないし、見つからなければ・・・。

 いやいや、あの戦い方からしてロッカを怒らせたらヤバそうな気がする。


 トウマは待ち合わせ場所の換金所前に着いた。ロッカの姿は見当たらないが今は人通りが少ないようで来たらすぐに見つけられそうだ。


「すみません」


 トウマは少女に声をかけられた。心地よい声質、色白で透き通った目をした可愛らしい小柄な人物だ。彼女は濃く暗い青色、暗い緑にも見えるような深藍(ふかあい)の長い髪をお団子にして束ねておでこを出している。ロッカより少しだけ背が高いようだが大きな差はないと言ってよいだろう。


「あ、あの。ロッカと待ち合わせしているトウマさんで合っていますでしょうか?」

「そうですけど、ロッカと知り合いの方ですか?」

「ホッ、見つけられて良かったです」


 彼女は慌てて話し始めた。


「あ、申し遅れました。

 私は『バン』という者でしてあなたが来るのを待っていました。

 ロッカは少し遅れるそうで彼女が来るまで・・・

 その~、あなたを捕まえておくようにと」


 犯罪者かなんかですか俺は。


 バンはトウマの剣を不思議そうに見て問いかけた。


「トウマさんはモンスター討伐初心者と伺いましたがその剣は?」

「これですか? これは俺が村を出る時にじいちゃんから餞別で貰ったものです」

「そうなのですね。2スロットタイプの剣はこの辺では手に入らない物なので何故持っているのか気になってしまって」


 ですよね~、空いている穴が抗魔玉を装着するスロットって事すら知りませんでした。しかもなんか2つ空いてるし。


「初心者には分不相応な剣なんですかね?」

「い、いいえ。そういう意味では・・・」


 沈黙・・・。


 バンさんとの会話が続かないなぁ~。

 ロッカのやつまだ来ないのかよ。


 すると堰を切ったようにバンは話し出した。


「あ、あの。ロッカとはどういう経緯でお知り合いになったのですか?」


 あ、これなら話せる。


 トウマはスライムを分裂させたところからロッカに抗魔玉について教えてもらい、スライムを初討伐して、最終的にロッカに助けられた事を話した。


 ん~、我ながら間抜けな話だった。


「そうでしたか。

 うふふ、あのロッカがそこまで面倒見るなんて思いもよりませんでした」


 あれは面倒見てくれたって事なのだろうか?

 バカにされてた気もするけど助けてくれたのは事実だし、そうかもな。


「では、私からも一つ」


 バンは腰あたりから護身用に使う棒のような武器のロッドを取り出すと、トウマの腕に残っていた軽い怪我の部分にかざした。

 すると、ロッドの先に着いている水晶が緑の光に包まれ出しみるみる怪我が治っていった。


「え?! 凄い。傷が治りましたよ。何ですかこれ?」


「これも抗魔玉による力です。

 正確にはもう一つ、『真魔玉(しんまぎょく)』の力が必要ですけどね」


 バンが持つロッドの装飾部分にある2つのスロットには白い抗魔玉、もう一つは緑色の玉が装着されているようだ。


「その緑の玉が真魔玉なんですか?」


「はい。色付きの抗魔玉は真魔玉と呼ばれていまして、抗魔玉の力に別の能力を付与出来ます。単体では何の力も出せませんので抗魔玉とは別物と考えたほうがよいでしょうね。このロッドに着けてあるのは真魔玉【緑】(しんまぎょく・みどり)

 仕組みは理解出来ませんがこの緑の光には治癒の能力が付与されています」


「凄い事が出来るんですね。

 ん?! ちょっと待って下さいよ。玉を2つ着けるということは俺の剣も?」


「はい。真魔玉があれば別の能力を付与することも可能ですし、抗魔玉をもう一つ着ければ効力の持続時間が2倍になります」


 なんてこった!

 じいちゃん、そんなすげー剣くれてたのかよ。


”ドン!”


 突如、換金所の扉が勢いよく開いた。


「全く~、ここは魔石の換金率悪いわね!」


 ロッカが現れた。


「あ、ここにいたのね。ちょうど良かったわ」


 いやいや、ロッカがここを待ち合わせ場所に指定したんでしょ?

 まさか換金所の中にいたとはね。


 ロッカはトウマをチラリと見てバンに言った。


「ちゃんと捕まえられたようね。じゃ、トウマのおごりでご飯行くよ~」

「え?!」

「では、行きましょうか」


 ロッカは意気揚々と肩を揺らしながらリズミカルにどんどん先に歩いて行った。

 トウマはバンに引っ張られるようにして飲食店に連れて行かれた。


◇◇


”ムシャ、ムシャ”

”モグ、モグ”

”ゴク、ゴク”


 それにしてもよく食うな二人とも。これ何皿目だよ?

 ロッカのやつ、店にある料理を片っ端から注文して。


「トウマ、あまり食べないのね? 私たちに遠慮せず食べなよ」

「そうですよ、トウマさんは育ち盛りなので食べないと」

「はぁ・・・」


 俺もよく食べるほうだけど全部自分がおごるとなるとなぁ。

 あまり高いの注文しないで欲しい。


「ロッカ、これもおいしそうですよ」

「じゃこれも注文しようか?」


 バンさ~ん! もうやめて。


 最終的にはトウマもやけ食いして32,700 エーペルの出費だった。


 のぉ~~~、所持金の半分以上もっていかれたよ。

 これから俺は生きていけるだろうか・・・。

 すぐにでも稼げるようにならないとヤバすぎる。


「あー、うまかった! やっぱおごりで食うご飯は最高よね!」

「私までご馳走になり有難うございました」

「いいの、いいの。トウマは私に借りがあるんだから!」


 この女・・・。


「じゃ、次行くよ!」

「え?!」


 先を行くロッカを追いかけてトウマはまたバンに引っ張られ連れて行かれた。


 ちょっ、バンさん小さいのに力強くない?

 まだどこか行く気なのかよ? 勘弁して欲しい。


◇◇


「ここね」


 ロッカが入っていった建物はこの街のギルドだった。ギルドは討伐者がモンスター討伐依頼を受ける場所である。依頼はクエストと呼ばれ、モンスター討伐を生業としてギルドに登録している者は『討伐者』と呼ばれている。


 トウマはバルンバッセの街にやって来て翌日にはギルドへ登録に向かった。しかし、まだモンスターを倒した事が無いと言うとすぐに追い出されてしまっていた。


 スライム一匹だけどモンスター討伐できたし、今回は堂々と入れるぞ。


 ギルドは厳つい顔をしたゴロツキのたまり場ではない。むしろ二人の可愛らしい少女が入って来たことで和やかな雰囲気すらある。

 ただ、トウマと目を合わせた男たちが、あん?何でお前が二人も女をはべらせてるんだよって顔をするだけだ。


 トウマはカウンターにいるオッサンに声をかけられた。彼はギルドのマスターだ。


「おう。お前、昨日来たボウズじゃねーか? おっ、登録に来たのか?」


 あ、そういう事か。今、オッサン俺の剣に着けてある抗魔玉見たよな?

 昨日は抗魔玉持ってなかったから問答無用で追い出されたってことか。

 それくらい教えて欲しかったよ。


 ロッカとバンはクエストの掲示板を見に行った。トウマは討伐者登録の用紙に記入を終えるとしばらくカウンターで待たされた。隣のカウンターはお姉さんが受付しているせいか列ができている。


 俺もあっち並べば良かったかな?

 いや、いや、早いほうがいいだろ。今は。


 ん? あれ何なんだろ?


 《討伐者の物を奪う者 全てをもって血の海に沈めるべし》


 トウマがカウンター奥の看板を見ていると戻って来たバンが察して説明した。


「ああ、あれですか。鉄の掟です」

「鉄の掟?」


「あれは討伐者から物を奪った者は他の討伐者から命を狙われる事を指しています。あの掟ができてから金品を略奪する者はいなくなったとか。

 もし何か奪われた人がいたらトウマさんも協力しなければなりませんよ」


「へぇ~、鉄の掟か。覚えておきます」


 カウンター奥の部屋からオッサンが戻って来た。


「ほらよ、このタグをいつも身に着けときな。

 お前が死んだら分かるように名前が刻んである。

 まぁ、モンスターに丸飲みにされたら分からんがな、ガハハ」


 人の生死を笑って話せるんだからこのオッサンもどっか壊れてるんだろうな。


「登録は済ませたようね」


 ロッカも戻って来てトウマが受け取ったタグを見るやいなやカウンターで何やら用紙に記入を始めた。


「これでお願い」


 ロッカがカウンターのオッサンに書類を渡すとすぐに受理された。パーティー申請をしたらしい。申請すると報酬はパーティー名義で受け取ることになるのだ。


「これで私たちは同じクエストをパーティーで受注出来るわ。

 個人だと名前残っちゃうし、誰が報酬受け取るかで面倒なことになるからね。

 トウマ、お金必要でしょ?

 私たちが協力してあげるわ、報酬は3等分でいいわよね」


 おお~、懐事情がさみしい俺には有難い話だ。

 二人にクエスト同行して貰えるなんて少し身体が軽くなった気さえするな。

 オッサンは少し笑ってたけどロッカが護衛者になれるほど強いことは知らないだろうからな。


「さあ、行くわよ!」


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