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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第二章 アーマグラス編

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第37話 新しい玩具

翌日---。


 スレーム・ガングの4人とイズハはギルドで合流した。イズハは上着を白に変えたようだ。白の下地に黒の軽装備が映える。白く長い鉢巻きまでして気合十分な姿だ。


 クエストを確認してきたロッカは依頼書を持って来た。


「これで行ってみない?

 少し遠いし、厄介かもしれないけど他の討伐者には手を出されてないわ」


 クエストは『巨大爪猫討伐 難易度C』。巨大な猫で爪まで特化している厄介なそうなモンスター。街から北へ3時間ほどいった林に生息しているようだ。


 イズハは少し震えていた。


「自分、前に巨大爪猫見たことあるっす。

 その時は手練れの討伐者10人くらいでようやく倒せたって感じだったっす。

 重傷者も出てたっすよ」


 バンは気難しい顔で依頼書を見ている。


「個体差がありますし、同じとは限らないでしょうけど・・・」


 セキトモも不安気だ。


「な、なんかヤバそうじゃない? 僕たちで大丈夫かな?」

「野生の猫が巨大化してるんだから多分、難易度Bに近いと思うわ。

 けど、こっちは5人もいるんだからいけるでしょ」


 ロッカ、どういう見積もりだ?


「心配ですが難易度Cとしてあるので信じるしかありませんね。

 少し遠いので途中までは馬次郎に連れて行って貰いましょうか?」


「バン、それいい考えね。

 馬次郎なら荷台の荷物全部降ろせば5人運ぶなんてわけないわ」

「え?! 馬次郎、そんな力強かったの?」


 一旦、博士の邸宅に戻り馬車の準備をすることになった。


◇◇


 馬次郎は重量のある荷物がなければ大人6人くらいは余裕で運べるようだ。セキトモは重いがロッカとバンが軽い。バンが重い武器を持っていても合わせて大人3人にも満たない重さだろう。トウマとイズハを加えても余裕で運べる重量だ。歩いて行くより倍速く着くのこと。


「馬次郎! 頼んだわよ」


”ブヒヒーン!”


 馬次郎はやる気を見せている。


 一同は巨大爪猫のいる林に向けて出発した。


 道中では御者を誰でも出来るよう代わる代わるバンに教えてもらった。

 基本的には素直ないい馬だ。トウマが御者のときだけ止まって街道脇の草を食べたり、蛇行したり、少し悪さをするくらいで。


「馬次郎! 絶対、わざとやってるだろ!」


”ブルㇽ・・・”


 馬次郎は首を横に振った。トウマは皆に笑われた。


 そうこうするうちに目的の大きな林付近に到着。


「ここから先は歩きよ」

「辺りにモンスターの気配はありません。当面は大丈夫そうですね?」

「馬次郎はここで待ってて。何かあったら叫びなさいよ、飛んでくるから」


”ブルㇽ・・・”


 馬次郎は首を縦に振った。


 馬次郎は素直に待っているようだ。繋がれていないのは危険が迫ったら逃げていいぞという配慮だ。分かっているのだろう。本当に賢い馬だ。


◇◇


 林に入る手前で小型の牙蟻が襲って来たがロッカが瞬殺。スライムも見かけたら倒して行く。林に入ると木にぶら下がっていた小型の牙蛇がトウマの横から襲って来た。気づきさえすれば小型は問題なく倒せる。トウマは難なく切り伏せた。


 少し面倒なのが羽刃蝉だった。羽が刃のように鋭い上にクルクルと曲線で飛ぶのだ。そこはセキトモが大盾で受け、ふらふらと落ちたところを近い人が倒す。計3体襲って来たが誰も負傷せずに済んだ。


 林の中を進んでいるとロッカが見つけたようだ。


「いたわ。もうこっちを警戒してるみたいよ」


 爪が特化した猫のモンスター。大人の人間より明らかに大きい。灰色の毛並みは雑に再現していてボサボサだ。猫は長いしっぽをフラフラと揺らしながらこちらをジッと見つめている。


「化け猫?」

「見るからに俊敏そうですね」


「皆、分かってるわね。

 私たちはイズハのサポートだから弱らせるだけで止めておくのよ」

「頑張るっす!」


 と言われても・・・。

 手加減して勝てる相手じゃなさそうだけど大丈夫?


 「まずは僕が様子をみよう」と男前なセリフを吐き、大盾を構えたセキトモが前に出て猫に近づいて行った。猫の眼の色が赤に変わる。


「シャーーーー!」


 猫は頭を低くお尻を上げていつでも飛び掛かれる体勢でセキトモを威嚇した。

 セキトモはゆっくりとグレイブを抜いて更に歩を進めた。射程内に入ったら重撃飛槍で攻撃するつもりだろう。


 あの猫に重撃飛槍がまともに当たったらそれで終わらないか?


 トウマは何気に振り返った。後ろにいたはずのイズハがいない。トウマはすぐさま前を向いた。イズハはすでに猫の背後の木の上にいた。


 いつの間に? 気配消してあそこまで行ったのか。

 上着が白だから気づけたけど、やるな~。


 セキトモは更に足を踏み入れて猫に重撃飛槍を放った! 猫は素早く後ろに飛んで攻撃をかわすとすぐにセキトモに飛び掛かった。セキトモは大盾で猫の攻撃を受け止めて動じていない。猫は一旦後ろに飛び退いた。


「くそっ、外したっ。でも猫の攻撃はそこまで重くないよ!

 爪の切れ味がいいだけかも? 爪に気をつけて」


「「「了解!」」」


 トウマ、ロッカ、バンは猫を中心に散開した。周りに立っている木が盾変わりだ。

 バンは三刃爪を装備している。爪対爪の対決も面白いかも?と思ったトウマに猫は襲いかかった!

 トウマは木を盾に猫の攻撃をかわした。木には引っ掻いた爪痕が残っている。


 確かに爪はヤバそうだ。


 猫の背後を取ったロッカは後ろ足を狙って飛び込んだ。


”ぶん!”


 猫の長いしっぽがロッカの攻撃の邪魔をした。


「チッ、威力はないけど、こいつのしっぽ邪魔くさいわね。

 先にしっぽ斬っちゃうか? トウマ、しっぽ狙って!」

「分かりました!」


 猫は素早い動きであちこちと引っ掻き回している。周りの木は傷だらけだ。


 しかし、あの猫まったくイズハに攻撃しないな。

 視界には入っているはずなのに気づいていないのか?


 セキトモが勢いよくロンググレイブを振り回すと猫はたじろぎ、セキトモから距離を置いた。セキトモを睨みながら猫の動きが一旦止まった。


 今だ!


 トウマは猫のしっぽの付け根目掛けて走り込み、剣を振るう。しっぽが切れ落ち、猫が悲鳴を上げた。


「トウマ、よくやったわ!」


 猫は奇声をあげながらびよんびょん飛び跳ねて暴れ回った。一同は暴れる猫から距離を置いたがイズハは木の上から猫に向けて飛び降りた。


 猫の首裏を狙い、短剣で横斬り!


”ズバッ!”


 猫の首裏が浅く切れた。

 昨日帰ってから随分練習したのだろう。イズハの斬り方が様になっていた。


「イズハ、まだ早いって! 猫の首裏は皮が厚いの知らないの?」

「え? そうなんすか?」


 きょどったイズハに猫の左爪が襲い掛かった!


「危ない!」


 バンはイズハを庇うように三刃爪で猫の爪を受け止めて猫の爪をもう片方の三刃爪で叩き壊した。猫は悲鳴を上げた。


「バンさん、助かったっす」

「イズハさん、油断しないで下さい」


 立ち上がった猫の後ろ両足をロッカが斬り裂く。


「これでもう飛び掛かりはできないはずよ。イズハ、狙うなら首元!」

「分かったっす!」


 イズハは木を駆け上がるように走った。駆け上がる途中で猫の首元目掛けて勢いよく飛ぶ。白く長い鉢巻きそれについて行く。イズハの短剣による横斬り一閃!


”ズバッ!”


 猫の首が半分ほど裂けた。イズハは着地と同時に左手に短剣を持ち替え、もう一度裂けた猫の首めがけて地上から飛んだ!

 しかし、横斬りで斬ろうとしたイズハを猫の右爪が撃ち落した。イズハは左腕に深い傷を負ってしまった。


「油断したっす・・・」


 すぐに猫の追撃が来ると死を覚悟したイズハは目をつぶった。

 だが、猫の追撃は来なかった。


「イズハさん、終わったみたいですよ」


 イズハはバンの声で目を開いて見上げると猫は霧散し始めていた。


「追い打ちするのは悪くないけど悪あがきを食らうなんてバカね」


「さきほどの首元への一撃で終わっていたようです。

 近くに核があったのかもしれませんね」


 バンは傷ついたイズハの左腕を治癒のロッドで治療し始めた。僅かな時間しか動いていないはずのイズハは汗だくだ。


「イズハさん。これで条件は満たしました」

「ハッ?! ってことは自分も仲間に入れて貰えるっすか?」


 トウマとセキトモの二人が同時に声をかけた。


「「おめでとう!」」


「ありがとうっす! ありがとうっす! 皆さま宜しくお願いしますっす」

「何? すっすって。わはは!」


 ペコペコと頭を下げているイズハの背中をバンが叩いた!


「ぐほっ!」

「まだ治療中です」

「すみません・・・っす」


 ロッカは嬉しそうにトウマを見た。

 合掌して人差し指を立てた握りを胸の位置へ持ってきて一言。


「忍者ゲット!」

「ぷっ、それイズハのことですよね? にん、にん、じゃなくて? あはは」


 ロッカはイズハの契約が済んだら仕込むと言っていた。

 新しい玩具を手に入れたようだ。


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