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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第一章 バルンバッセ編

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第27話 怒涛の攻撃

 森の王者としての自負で受けて立つ姿勢でいるのか、偶然にも四方に別れた4人を警戒しているのか、熊は拓けた場所の中心から動かなかった。


 意を決したセキトモは大盾とグレイブを構えて熊に向かって歩き出した。


 熊は立ち上がり再び咆哮した。


「グオォォーーーー!!!」


 熊は左腕を大きく振りかぶって向かって来るセキトモを薙ぎ払う姿勢だ。熊本来の両腕での挟み込みをしてきたらどうしようもなかったところだ。

 この相手を舐めた熊の攻撃はセキトモにとっては好都合であった。熊の攻撃は威力抜群だが速いわけではない。

 セキトモは大盾を地面に叩きつけて熊の左腕の攻撃を受け流した。大盾は吹き飛んだがセキトモはその場に留まっていた。

 中央から動かない熊。動かない的なら成功確率は各段に上がる。


「重撃飛槍!」


 セキトモが突き出したグレイブが勢いよく伸び、回転のかかった刃先が立ち上がっている熊の腹に突き刺さった。渾身の一撃! 熊の腹がえぐれた。


 熊が悶絶して両手を地面に着くと同時に右腕に向けてトウマは飛び込んだ。


「炎熱剣!」


 トウマの剣が熊の右肩から腕先までを深く斬り裂いた!

 斬り裂かれた熊の腕からは炎が噴き出し、熊はよろめいた。


「グオォ・・」


「二人とも少し離れて下さい!」


 熊の左側から水のロッドのチャージを終えたバンが走り込み、3m~4m離れた位置で熊に向けて下側からロッドを振り上げた。ロッドの先から勢いよく押し出された高圧の水が地面を斬り裂きながら熊に向かっていく。


水刃(ウォーターブレード)!」


 バンは熊の体ごと斬り裂くつもりで技を放ったのだが熊の左腕のみが切断されて吹き飛んだ! バンに気づいた熊が振り向いて立ち上がったせいだ。


「皆良くやったわ! 十分弱らせてくれた。

 あとは私が2分で片付けてやるから任せて!」


 常に熊の背後に回っていたロッカは身体の力を抜いて一瞬ゆらりとした。

 両手に持った短剣の薄白い輝きがより濃く大きくなり炎のように揺らぎ始めるとロッカは熊に向かって残像を残す勢いで走った。

 熊の背後から両脚の関節部分、背中、崩れて膝をついた熊の体を足場にして背中に飛び乗り、首元を斬り裂く。熊が振り向いた時にはロッカはもういない。また背後から同じ所を何度も斬り裂く。

 トウマが炎熱剣で斬り裂いた熊の右腕には身体を支えるだけの力しか残っていなかったのだが、ついでと言わんばかりに熊の右腕の関節も斬り裂いた。熊が崩れ落ちる。遠目で見ているトウマでさえロッカが飛び回る動きを目で追うのが精一杯だ。熊はロッカの姿すら見えていないだろう。


「あの熊、俺の炎熱剣でやっと斬れたのに。

 ロッカの短剣で斬れてますよ」


「凄いな・・・ロッカ」


 ついに振り向くことも出来なくなった熊は地面に這いつくばった。

 ロッカはとどめで熊の眉間に渾身の力を込めて深く短剣を刺し込んだ!


”ザクッ!”


 ロッカは熊と目を合わせた。


「これで終わりね。強かったわ。

 私たち相手にここから動かなかったのがあんたの敗因よ」


 熊は二本足で立つ小さな生き物を目にとらえ、思った。

 お前だったのか・・・、どうやら強者は自分じゃなかったらしい・・・。


 動けなくなった熊の赤い眼から力がなくなり、光を失った。

 熊はゆっくりと霧散しだした・・・。


 特急クエスト『巨大爪熊討伐』成功だ!


 熊が消えていくのを見届けたトウマとセキトモは今まで感じていなかった身体の痛みが噴き出してその場で倒れ込んだ。バンは慌てて重症なトウマの治療に向かった。全力を出し切ったロッカはその場で座り込んだ。


◇◇


「うぐっ・・・」

「気が付きましたか? トウマさん」


 バンは深く傷ついたトウマの胸を治癒のロッドで治療している。傷は塞がりつつあった。気を失っていたセキトモも起きたようでトウマの元にやって来た。


「お互いなんとか生きてたね。熊倒せて良かったよ」

「強かったですね」


 トウマはセキトモの左腕が力なくブラブラと揺れていることに気づいた。


「セキトモさん、その左腕?!」


 セキトモは冷や汗をだらだら流しながら笑顔で言った。


「いや~、熊の攻撃受け流したとき折れちゃったみたいだ。今、すっごい痛い」

「ちょっ、バンさん。

 俺はもういいからセキトモさんの腕を先に治療して下さい!」

「まだトウマさんの胸の治療は完全ではないのですよ」

「俺は大丈夫ですから早く!」


 バンはトウマの治療を止め、セキトモの折れた左腕の治療に取りかかった。


 ロッカは特大の魔石を片手に持ち、もう片方の手で熊の大きい爪を引きずって持って来た。バンが斬り落とした巨大爪熊の左腕で残った素材のようだ。五本の爪が一つに繋がっている。


「二人とも気づいたみたいね」


◇◇


 しばらくすると他の討伐者たちがぞろぞろとやって来た。少なからず負傷者もいるようだ。ラフロたちの姿もある。


「やったみたいだな!

 突然モンスターたちが攻撃をやめて森の奥の方に帰って行ったからさ」


 ラフロは巨大爪熊が通ったであろう倒れた木々の範囲と残された大きい爪、トウマたちの負傷状況を見て巨大爪熊の大きさと強さを推し測った。


「とんでもねー大きさだったみたいだな?

 よく勝てたもんだ。お前らがいなきゃ俺ら詰んでたわ」


 ラフロの推測は正しい。

 ラフロは治癒のロッドで治療しているバンに気づいた。


「そのロッド、治癒が出来るようだな。

 良かったら他の討伐者たちの重症な傷も治してくれないか?」

「すみません。もうすぐ力が切れてしまいます。30分後くらいで良ければ」

「ああ、構わない。助かるぜ」


 ラフロたちは交戦中だった角カブトの脚を残り2本まで斬り落としたそうだ。その後、角カブトが羽を広げて飛び回り出してひどい目に合ったと話す。

 右チームは小型を仕留めたあと、大型の爪百足に遭遇して逃げ回ったとか。

 左チームは鱗蛇に一人が巻き付かれて捕らえられたが死にそうになりながらも何とか救出に成功したとか。


 重軽症者は出たものの死者はゼロ。なんと、特急クエストに参加した討伐者全員が生き残ったのだ。それはモンスター集団を相手に奇跡とも言えることだった。


 皆が特急クエストの成功を喜び称え合った。


◇◇


 討伐者一同は森を抜け出て集落に戻り、集落の長に結果を報告した。討伐が無事終わった事を知らせると集落の人々は安堵した。そしてお礼として料理やお酒が振舞われることになった。


 今回、討伐指揮を取ることになったラフロが討伐者たちに向けて話した。


「ここにいる討伐者、皆の協力のおかげで巨大爪熊の討伐に成功した、有難う!

 おそらくこれはバルンの歴史に残るだろうぜ。

 熊と直接戦ったトウマチーム、彼らが一番の功労者だ! 皆も異存ないな?」


「おう、もちろんだ!」

「異議なーし!」


「では、我らの大勝利を祝って。乾杯!」


『乾杯!!』


 昼間から大宴会が始まった。中でも注目を集めたのはセキトモの傷ついた大盾と物珍しい武器グレイブ。そしてバンの癒しのロッド。見られてしまったものは仕方がない、宣伝だと思ってセキトモとバンは武器の説明をした。

 熊を倒した付近が広範囲に焼け焦げていたことを質問され、炎のロッドもここでお披露目。実演でバンは炎の球だけを見せた。


”ボッ!”


 一同、驚いた。

 噂を聞いたことがある討伐者もいたが実際に見たのは初めてのようだ。


 武器は中央大陸でしか手に入らないと聞くと一同はガッカリした。だが、こういう武器があると知っただけでも貴重な事である。数は少ないので手に入れられるかどうかは別の話だが癒しのロッドと炎のロッドはすでに売ってあるらしい。

 護身用の只の短い棒扱いされていたロッドの評価が見直された。

 大盾はこの東大陸でも手に入る物だが熊の爪痕が目を引くらしく、人が集まった。


 俺の炎熱剣も披露したいところだけど火起こしを見ていた人もいなかったし。

 まだ扱い慣れていないから秘密にしておこう。


 ロッカはラフロに捕まっている。余程気に入られたらしい。

 トウマは酔っぱらった討伐者たちにちょこちょこ絡まれた。迷惑という意味ではない。なかには冗談交じりに組まないかと誘う者もいた。


「トウマく~ん、いつでも俺たちのパーティーに入っていいからね~」

「今のままで大丈夫でーす」

「そりゃ、そうか。わはは」


 それぞれの討伐談にも失敗から成功まで花が咲く。


「それ盛ってねーか? わはは!」


◇◇


 少し落ち着いた頃にバンがトウマの元にやって来た。


「トウマさん、すみません。その胸の傷、残ってしまいましたね。

 自然に治る範囲なら大丈夫なのですがある程度時間が経過して傷が定着してしまいますと治癒のロッドではもうそれ以上は治せません」

「バンさん、大丈夫ですよ。これは男の勲章です!

 時間かけて自然に消えるかもしれないし、裸で動き回るわけじゃないですからね。

 気にしないで下さい」


 他の重症者たちの治療を優先させたため、トウマの胸には右下から左上へと三本の爪痕が僅かに残ることになった。


 そして宴が落ち着いたところで解散。それぞれが馬車で街に戻って行った。


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