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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第一章 バルンバッセ編

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第16話 油断×2

 トウマとセキトモは完全に油断していた。それはスライム討伐に夢中になって林に入り込んでから少し経っての事だった。

 今、トウマたちが相対しているのは巨大蟷螂(かまきり)。クエストで掲示されていた難易度Cのモンスターだ。


「セキトモさん、ヤバいですよ! あのカマキリ。

 難易度Cで出てたやつじゃないですか?」

「油断してた、この林だったんだ!

 クエストの場所を確認してなかったよ・・・ハア、ハア・・・」

「それを言うなら俺もですよ。

 ハア、ハア・・・、難易度Cに挑むつもりはなかったのに」


 たまに見かけていた討伐者がこの林の中には誰もいなかった。そういう事だったのかと二人とも気づいたがもう手遅れだということは言うまでもない。

 カマキリの両腕の鎌は獲物を捕らえる為ではなく刈り取る刃物のように特化させていた。人間が使う道具の鎌の刃が巨大になって腕についていると言ってもいいだろう。顎にある鋏の牙も特化しているようだ。

 カマキリの巨大な両鎌によってそこらにある木は一振りで切り倒されている。カマキリの攻撃は単純な斬撃とは違い鎌は前からではなく斜め上、横、もしくは後方側から攻撃だ。

 交互に左右からくるカマキリの斬撃に二人は背中合わせに近い状態で何とか致命傷を避けながら逃げていた。

 カマキリの鎌がかすっただけで血しぶきが飛ぶ。


 セキトモさんも攻撃を受けている。

 深い傷じゃなさそうだけどヤバい・・・。


 二人は持っている武器を出しっぱなしで防戦一方、とっくに抗魔玉の力は切れている状態だ。抗魔玉の力なしではダメージを与えても数秒、長くても数分で修復されてしまうだろう。今更攻撃に転じても倒すことはもう不可能だ。隙をついて逃げるしかない状況だがカマキリはそうさせてくれない。


 二人が必死になってカマキリに抵抗しているその時だった。


”ボンッ!”


 何処からともなく炎の球がカマキリに当たった。巨大なカマキリは炎の球一発程度では微動だにしていないが気には触ったようだ。


「ギギッ!?」


 カマキリは二人への攻撃を止めてキョロキョロと周りを見渡し出した。カマキリの注意を引くかのように炎の球が2発、3発とカマキリの周辺に投下され続けた。


「今のうちにカマキリから離れて!」


 それはロッカの声だった。


 カマキリから少し距離を置いた二人の元にロッカが駆け寄って来た。


「間に合ったみたいね。こういう時の私の勘は当たるのよ」


「助かりました。ハア、ハア・・・、俺たちもうダメかと」


「バンが炎の球であのカマキリをかく乱してくれてるわ。

 二人とも傷だらけね。私がバンと代わるからそこの人も治療して貰うといいわ」

「申し訳ない。有難う」


「バン、代わるわよ! こいつら逃がして治療してあげて」


 即座にロッカはカマキリの方に向かって行き、代わるようにバンがやって来た。


「大丈夫でしたか? ここはまだ危ないです。一旦、林の外へ出ましょう!」

「ハア、ハア・・・分かりました。セキトモさん、行きますよ」

「お、おう・・・。ハア、ハア・・・、痛っ!」


 セキトモは足を負傷したようで少し足を引きずっていた。一人で歩くのは難しそうだ。


「セキトモさん、肩貸します。急ぎましょう」

「すまない。ありがとう」


 三人はカマキリと交戦しているロッカを視界に捉えながらも林からの脱出を試みた。ロッカが注意を引いてくれているのでカマキリが追ってくることはなさそうだ。


 ロッカは二刀流ともいえるカマキリの攻撃に一人で立ち向かっているがある程度距離を置いて立ち回っていた。

 さすがはロッカといったところかカマキリの背後背後に周り、蜘蛛のときと同様柔らかい足の関節部分を狙ってすでに後ろ足を2本斬り落としている。

 しかし、ロッカは巨大なカマキリを一人で倒しきるのは厳しいと判断したのか三人がカマキリの視界から消えるまでの時間を稼いでいるだけのようだ。


 ロッカは三人が見えなくなったらカマキリの隙をついて逃げ切るつもりでいる。


◇◇


 林から脱出した三人は荒れた息を整えていた。


「ハア、ハア。バンさん、ここまで来れば大丈夫ですかね?」

「まだ油断は出来ないですがとりあえず治療しましょう。

 こちらの方のほうが酷そうです。トウマさんは少し待って頂けますか?」

「はい、構いません。セキトモさんの足を治してあげて下さい」


「痛っっ、助けて頂いて有難うございます。僕はセキトモという者です」

「洞窟の前で会った人ですね。私はバンです。命があって良かったです」


 バンは治癒のロッドを取り出しセキトモの治療を始めた。

 セキトモの足の傷が治っていく・・・。


 セキトモは驚きと共に口にした。


「これが・・・」


「すみません、バンさん。

 セキトモさんにロッドのことも話しちゃいました」

「構いません。この通りすでに見せていますし」


 バンは治癒のロッドで二人の重症な傷の部分だけを素早く治療していった。


「二人とももう動けますね?

 街道まであと少しです。あそこまで行きましょう」

「「はい!」」


 三人が街道に向けて歩を進めようとしたその時、すぐ近くの林の中からロッカが飛び出して来た!


「「ロッカ?!」」

「?! あんたたちまだこんな所にいたの?」


 トウマはすぐさま林のほうを見たがカマキリの姿は確認できなかった。


 ロッカもカマキリの姿が見えない事と皆に合流した事で少し気を抜いてしまった。


 一瞬の気のゆるみ。油断—――――。


 次の瞬間、ロッカに向かって林からもの凄い勢いでカマキリが飛んで来た!


”バサッ!ババババッーーーーー”


「ロッカ、危ないっ!」


”ザクン!”


「ぐっ、このぉー!!」


”ズバッ!”


 ロッカは短剣でカマキリの左腕の鎌を根本から斬り落とした。


 ―――だが代償はあまりにも大き過ぎた。

 ロッカの左腕もカマキリの右の鎌により切り落とされていた。


 ロッカの腕からは血が噴き出しロッカは痛みでのたうち回った。


「うわぁああああーーーーー!!」

「「ロッカーーーー!!!」」


 そ、そんな・・・ロッカの腕が。


 衝撃で固まっていたトウマにセキトモが呼びかけた。


「トウマ、しっかりしろ!」


 ハッ!? カマキリは?


 トウマは周りを見渡すとカマキリは攻撃を止めて吹き飛んだ自分の鎌の腕を拾い上げバリバリと食べているのが目に入った。ほんの少しずつだがカマキリの切断された腕の切り口がブクブクと泡立ち再生し始めているようだ。


「あのやろー!」


 気絶したロッカを抱きかかえたバンがトウマを制した。


「トウマさん、ダメです!

 私に考えがあります。もうそれしかありません。ロッカをお願いします」


 バンはトウマにロッカを預けた。ロッカの切断された腕は紐できつく縛ってあり、止血はしてあるようだ。


「御覧の通りカマキリはこちらを見ていません。

 二人は今のうちに街道に走って下さい」


「わ、分かりました! バンさんは?」

「私はまだやる事があります。先に行って下さい。すぐに追いつきます!」

「分かった。トウマ、行こう!」


 トウマの腕の中で気絶しているロッカを抱えて二人は街道に向けて走り出した。


 ロッカ、死なないでくれよ。


◇◇


 トウマとセキトモの二人は街道に辿り着いた。


「ハア、ハア・・・」


 ロッカは気絶したままだ。と、すぐにバンが追いかけて来た。カマキリは追って来ていないようだ。バンは切断されたロッカの腕と短剣を持ってきていた。


「治癒のロッドは先ほど使ったばかりなのでしばらくは使えません。

 それに切断した腕の治療となると可能なのかどうかも・・・」

「そんな、ロッカの腕はどうなるんですか? そんな・・・」


「一つだけ当てがあります。でも急がないと。私について来て下さい!」


 トウマはロッカを抱きかかえたまま走ってバンについて行った。遅れてセキトモもついて行く。


 まだロッカの腕を治せる可能性があるって事だよな?

 頼む、間に合ってくれ。


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