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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第一章 バルンバッセ編

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第12話 街外れの邸宅

※12話と13話は一つだったのですが12話部分を加筆して分けたので投稿時期が異なります。

 トウマが男どもに酒場に連れて行かれて討伐談をしていた頃。ロッカとバンの二人は街外れにある壁に囲まれた二階建ての邸宅を訪ねていた。執事と思われる初老の男が二人を出迎えると二人は何度も通っているかのように男について行く。二人は邸宅に入ってすぐの二階が吹き抜けになっているラウンジに案内された。中央にテーブルやソファーが設置してある。


「旦那様、バン様とロッカ様がおいでになりました」


 旦那様と呼ばれたのはラウンジのソファーに座っている白衣を着た中年の男だ。整えていない白髪混じりの波打つ髪で無精髭を生やしているが顔立ちは男前とも言えるだろう。この男がロッカとバンが『博士』と呼んでいる人物である。


 博士は立ち上がると穏やかな顔で二人を迎え、向かいのソファーに座らせた。執事が二人にも紅茶を出す。


「しばらく一緒に行動してたからかこう時間が空くと随分会ってない気がするな。ま、一息ついてくれ。話はそれからにしよう」


 博士は二人が一息ついたのを見計らって話し始めた。


「ロッカ君、この街のクエストを受けているとバン君から聞いているが何か収穫はあったかね?」

「そうね~。今はこの辺でこなせそうなクエストに挑んでるところよ。今日でクエスト3つ消化したわ」

「ほう、二人でもう3つもクエストをこなしたのか?」


 ロッカは言うかどうか迷ってバンを見やるとバンは頷いた。ロッカは仕方なく話し出した。


「この街で面白いやつを拾ったわ。今、そのコと一緒にクエストに挑んでるの。まだ未熟だけどセンスはあると思うわ」


 博士は少し身を乗り出した。


「ほほう。ロッカ君が興味を持つとは会ってみたいものだな。ちなみにそのコはどんな人物なんだ?」

「剣を扱うわ。鍛錬はしてたみたいだけど、討伐者としては初心者ね。1コ年下の男よ」


 眉間にしわを寄せた博士が勢いよく立ち上がった。


「なっ、ちょっと待て! 年下の男を拾ったというのか? まさかロッカ君、色恋沙汰か? いや、拾ったといったな? ロッカ君の好みの男なのか?」


 ロッカは面倒くさそうだ。


「そんなんじゃないから」

「しかしだな、1つ下というともう16の男だろ? 付きまとわれたり何か強要されたりしてないのか? 普通心配するだろう」


 バンが付け加えた。


「その辺は心配ないと思いますよ。私もクエストで同行していましたし、どちらかというとロッカの強さに圧倒されていたようです」

「それを言うならバンにもでしょ」

「はは、君たちを押さえつけられるような男は早々いるもんじゃないだろうからな。無用な心配だったか」

「私たちがそこらにいるような男に負けるわけないでしょ」


 ロッカは何か思い出したかのように手のひらを合わせ叩いた。


「あ、そのコ、2スロットの剣持ってたんだけど抗魔玉着けてなかったのよ。初心者丸出しだったし私の予備1個あげちゃった」

「抗魔玉をあげただと? その男は抗魔玉すら持っていない初心者だったというのか? 2スロットの剣を持っているのにそれはあり得ないだろ? う~む、討伐者が大事な抗魔玉を失うことなんてあり得るのか? いや、譲られた剣かもしれないな」

「そうそう、確かじいちゃんから餞別で貰った剣って言ってたわ。そのコ、抗魔玉の力のことすら知らなかったのよ」

「・・・本当に初心者なんだな。だがロッカ君も予備がないと困る事もあるだろう。あとで1個用意させる。え~と、リラック君、頼めるか?」

「承知しました」

「2個くらい頂戴よ。博士のケチ!」

「ロッカ、博士にそんなこと言わないっ!」

「まあ、まあ、抗魔玉は私の研究でも必要なんだ。新たに作った武器に付ける必要があるかもしれないし、ホイホイあげられる物ではないのは分かるだろ?」

「まぁ、そうだろうけどさ。あ、博士から貰った治癒の薬も使っちゃった」

「な、何ぃーーーー?! あ、あれは貴重な物なんだぞ! 分かっているのか? あれは使い方次第で四肢の切断だって瞬時に繋げられる治癒の秘薬なんだ。上級ポーションよりも遥かに効果が上なんだぞ。君たちに万一の事があったときの為に渡していたんだ。それを・・・」

「そんな貴重な物だったの? 万一のときは使えって渡してくれただけじゃない」

「説明不足だったか・・・」


 ロッカはしばし俯いて考えた。反省しているのかと思われたが。


「バン、もっとトウマに奢らせても良かったかも?」

「そういう問題ではない!」

「いいじゃない。こっちで使うことはまずないと思ってたし。使わなきゃ荷物になるだけの瓶に入った液体でしょ」

「治癒の秘薬だぞ! それを荷物になるだけって・・・ぬぬぬっ」


 怒った博士がロッカを追いかけ回したがロッカが捕まる訳がない。追いかけ疲れた博士はため息をつきながらソファーに座った。


「まったくロッカ君には手を焼かされるよ。あんな貴重な物をロッカ君に持たせたのがそもそもの間違いだった。とほほ」

「気づくのが遅いのよ。バンに預けるべきだったわね」

「はぁ~、使ってしまったものは仕方ないか。せっかく来たんだ、二人共ゆっくりして行くといい。食事を用意させよう。おっとその前にバン君、報告を頼む。そのつもりでここに顔を出したんだろ?」

「はい。博士がまた地下室に籠っているのではないかと思っていましたが会えて良かったです」

「はは、実は昨夜から昼過ぎまでは地下室にいた。気づいたら昼を過ぎていたからびっくりしたよ。地下は日が入らないから時間の感覚が分からないんだ。少し寝不足かもしれん」

「そんなことばかりしていたらいつかお身体を壊しますよ」

「ん、気をつけるよ」

「じゃ、バンが報告してる間、私は料理を手伝ってくるわね!」


 ロッカは跳ねるように揚々と調理場に向かって行った。


「・・・ところでバン君、ロッカ君は料理をするようになったのかね?」

「しませんね。でも食材を切るのは好きなようですよ」


◇◇


 食堂には豪華な食事が並んでいる。10名ほど座れそうなテーブルだが座っているのは博士、バン、ロッカの3人だけだ。


「ここさ、3人だとさすがにさびしくない?」

「まあ、料理も多すぎるな」

「料理は全部食べるわよ。ね? バン」

「そうですね。これくらいなら残ることはないかと」

「はは、前から思っていたが若いといっても君たちは底なしだと思うぞ。その小さい体のどこに入っていってるんだ?」

「「さあ?」」


「ところで地下室で何かやってるやつはいつ終わるの?」

「やることが沢山あるし順調にいっても数か月かかるかもしれないな。すまないが先に中央に戻っていてくれ」

「そう。何か月もこの街にいるのは退屈だし言われなくても休暇終わったら戻るつもりよ。今回は護衛の仕事として同行して来ただけだし」

「さみしいこと言うな~」

「私、ここに残りましょうか?」

「いや、大丈夫だ。バン君、ロッカ君を見ててくれないか? 一人じゃ何をしでかすか分からない、心配だ」

「博士は私の保護者かっ! バンも一緒に戻るに決まってるでしょ」

「一応、私はロッカ君の保護者のつもりなんだが・・・」


 バンは苦笑いだ。


「オホン。ところでロッカ君、そろそろ真魔玉を装着した武器を使ってみる気はないかね?」

「前から言ってるでしょ。博士の実験に付き合う気は無いわ。それに真魔玉着けると時間管理がよく分からなくなりそうでイヤなのよ。1回発動で抗魔玉の力を1分消費するとかさ。バンが上手く使ってるほうがおかしいのよ」

「そうか、残念だ。まぁ、使ってみたくなったらいつでも言ってくれ」


◇◇


 博士の邸宅の二階には空き部屋が8室もあるのだがロッカとバンは自分たちの宿に戻ることにしたようだ。


「部屋は沢山あるんだ。あっちと同様二人ともここに泊まってもいいんだぞ?」

「やーよ! 向こうと違う気分にしたくて別の宿取ったんだから」

「さみしいこと言うな~」

「どの道、博士は地下室に籠ったらなかなか出てこないじゃない」

「うっ、・・・それはそうだな」


 二人は博士の邸宅を後にした。


「そういえばトウマのやつ、あれからどうなったかな?」

「他の討伐者の方々に飲みに行こうと言われていたようなので酒場に連れて行かれたのではないでしょうか? あ、雨が降って来たようですね」

「雨か・・・、予報見た?」


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