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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第六章 ダンジョン編
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第122話 扉の先へ

 レヨゴは開かずの扉が開くところを見て大興奮していた。


「おお~! ほ、本当に扉が開いたぞ~!

 お前にも見えてるよな? これは現実だよな?」


 ロッカは狂喜乱舞しているレヨゴを見て引き気味だ。


「いい歳のおじさんが凄い喜び様ね。扉が開いただけなのに」


 レオとセキトモがひとりでに閉まろうとする扉を押さえている状態だ。周囲に転がっている瓦礫を詰めて扉が閉まらないようにするという案もあったが、宝石を抜いてカリーナとサイモンに守って貰うほうが無難という事で扉は閉めて行くことになった。二人が宝石を持っていれば一時的にこの場所を離れても運営側に何かされる心配もない。


「おい! オレたちはいつまで扉押さえてなきゃならないんだ。

 さっさと行くぞ!」


 カリーナ、サイモンとはここでお別れだ。


「いいですか。待つのは3日までです。

 それ以上は運営側と協力してでも中に入ってギルたちを捜索しますからね」

「分かったよ。先が長いと分かったら一旦戻るさ。

 悪いな、お前ら二人も中に入りたいだろうが引き受けてくれて」

「ギル、タズ。無事に戻って来るのよ」

「師匠たちと一緒なんですよ。心配ご無用です!」


 扉の先へ進む10人が中に入ると、扉がゆっくりと閉まりだした。


「行ってきま~す!」


「しっかり見て来いよ~」


 レヨゴが声をかけた相手は観測者だ。気配を完全に消しているが運営側の観測者もすでに入っているということだろう。


「凄い人を入れて来たようっすね」


”ガコン”


 ――― 扉は完全に閉ざされた。


◇◇


 一同が階段を降りて行くと、右方向へ進める通路に到達した。壁に隠し扉がないか確認しながら進むが何もなく、突き当りの左側にまた降りる階段があった。更に階段を降りて行くと今度は左方向へ進める通路があり、突き当りの右側にまた降りる階段があった。その繰り返しで下へ下へと蛇行しながら降りて行く。


 しばらく進んでいると蟻のモンスターが現れだした。蟻の駆除は主にトウマ、ロッカ、バン、イズハ、タズの5人が交代で行っている。


「ホント、蟻ってどこにでもいるんですね」


 レオとセキトモは基本左右の前衛にいるのだが武器を振り回すには狭すぎる通路なので守りに徹しており、今はクルーロ、チナ、ギルがランタンを持っている状態だ。


「トウマ、先にもまだいるぞ。あれも倒してきてくれ」

「そんなに明かり届いてないじゃないですか!

 しっかり照らして下さいよ。人使い粗いな~、もう」


「ぷぷっ、トウマのやつブツブツ文句いいながらも倒しに行ってるし」

「しかし、モンスターが出るってことは、どこかでスライムが発生してるってことだよね?」

「そうだな~、地下水でスライムの素が集まることはないから地上から流れ入る水源がどこかにあるのかもしれないな。

 植物も生えてるし、空気の流れも感じる。

 ここは完全に密閉されている空間ではなさそうだ」


 そして一同は小部屋に古びた大きな壺がいくつか置いてある場所にたどり着いた。先に階段が見えるので更に下へと続いているのは分かる。


「この階段どこまで続いているんでしょうね?

 もう二層分くらいは歩いてる気がしますけど、繰り返しで感覚がおかしくなってきてますよ」

「僕もだよ」


 セキトモは懐中時計を確認した。


「そこそこ歩いてるのは確かだね。もう1時間は経ってるぞ」


 足に疲れが出たのかクルーロは小部屋の壁に寄りかかって座った。


「ふぃ~、少し休憩にするか。

 ここは給水所って感じかな? 壺に水入ってないけど」

「だとすると、ここが中間地点あたりでしょうか?」

「バンもそう思う?

 階段は更に同じ距離くらい続いてるって考えるのが妥当だろうな」


 二人の予想が当たっていると仮定して壺に水を溜めて行くことになった。水はバンが持つ水のロッドでの生成だ。ここに戻る頃には抗魔玉の力が抜けて飲めるようになっているだろう。


 ギルとタズは水ができる様を興味深そうに見ていた。


「へ~、水のロッドはそういう使い道もあるのか。

 だとすると俺の凍結剣で生成された氷も解ければ飲める水ってことだよな?

 使い道が更に増えたぜ」

「ギルさん、これからは冷たいお水がいつでも飲めますね!」


 ロッカはニタニタしているが、すぐに飲むと下痢になるとは誰も言わなかった。


◇◇


 階段を降りてようやく到着した場所は地底湖だった。その地底湖を跨ぐように向こう岸に向けて幅広の石橋がかかっている。まだ先がありそうだ。

 この場所は何故かダンジョンの外のように明るく、天井は洞窟のようだが照明が点いているような明るさを放っている箇所がいつくか見受けられる。地底湖の所々に突き出した岩礁にはヒカリゴケも生えているようだ。


「迷宮から出たわけじゃないよな?」

「広いし、明るいですね。

 天井に見えるあのひときわ明るいところは光石でしょうか?」

「光石って光を放つ珍しい鉱石よね?

 高く売れそうなのに届かないのが残念だわ」

「俺も見たことないけど、光石は入って来た光を屈折させて放射状に放ってるって聞いたことあるぞ。

 夜でも光るわけじゃないから石そのものが光ってる訳じゃないらしい」

「そうなの? だとしたらあれは外の光を取り込んでるってこと?」

「地下なのに凄い場所ですね」

「ランタンで照らす必要がないから助かるな~。もし偶然の産物じゃなく、太古の人類がこんな技術まで取り入れてたってのなら驚きでしかないよ」


 一同が石橋を渡ろうとすると、橋の上を大きな魚が飛び横切った。橋の幅は10mはある。向こう岸までは60mほどだろうか。


「何今の、魚ですか? すっごい飛んだけど」

「いや、モンスターかも?」


 その後、次々と大きな魚が石橋の上を飛び交いだした。


「何体いるんだ?」

「あの魚がモンスターなら襲ってきますし、倒して行くしかなさそうですけど・・・」


 すると、飛び交う魚の1体にチナの矢が突き刺さった。橋の上に落ちた魚はバタバタと飛び跳ねている。まだ生きているようだ。


「命中にゃ!

 魚は猫の大好物にゃ~~、ん? うにゃ~っ!!!」


 少し静かになった魚の姿を確認すると、口には獰猛な牙が何本も生えていた。


「あんな魚いるわけねーよ!」


 ロッカが飛び交う魚をかわしながら落ちた魚の元へ行き、双剣で頭を突き刺した。


 魚は霧散していった・・・。


「これで確定ね!」


「よっしゃ! じゃ、やるか!」


 ギルはここまで戦闘をしていなかったのでやる気満々だ。ロッカとギルは次々と飛び交う魚を斬り落として行く。トウマも負けずに参戦した。三人は魚を倒しながら先に進むつもりだ。


”バシャ!”


「おっと、あぶねっ!」


 左右からいつ飛び出してくるか分からない魚の攻撃か。

 これってあいつの攻撃をかわすいい練習になるかもな、だいぶ大きいけど。

 でも複数体同時に来るとなかなか難しいぞ。


「トウマ、避けてばかりじゃ倒せねーぞ」

「分かってますよ!」


 タズも3人を追いかけて石橋を渡り始めた。


「ちょ、ギルさん。魚が落とした魔石も拾って下さいよ~」

「タズ、それは任せた!」

「タズ、任せたわよ!」

「え、師匠まで?」


 レオもうずうずしていたがクルーロに止められた。橋を壊すかもしれないからだ。


「ときにバンさんよ。

 話は戻るが、猫が魚を狩ってるところ見たことがあるかね?」

「私は見たことないですね」


 バンはチラッと含みのある顔でイズハを見た。イズハも乗ったようだ。


「自分もないっすよ」

「だよな。猫に人が魚を食わせたから好きになった説ないか?

 そりゃ手の届く所にいたら狩るかもしれないけど。

 狩ってでも食べたいと思う好物なら川辺に猫が沢山いてもおかしくないだろ?」

「だとすると、魚を猫の大好物と言って狩ったチナは猫を理解しているとは思えませんね。それは与えている側の発想です」

「しかも猫爪じゃなくて使ったの矢だしな」

「矢を使う猫はいないっすよね?」


「そこの三人! ボクをからかって遊ぶにゃ!」

「だはは!」


 セキトモは構えていた大盾を地面におろして4人が魚のモンスターを倒しながら石橋を渡って行く様子を見ていた。


「ギルが向こう岸まで到達したようだぞ。

 数も減ってきてるし、そろそろ終わりそうだ」


 辺りが静かになった。


「トウマが斬ったさっきの魚で最後だったかも。

 まだ向こう岸まで到達してないのに襲って来なくなったようだ」


 本当に終わったようだ。


「これで魔石23個です~!」

「タズ、ご苦労様!

 もっと倒した感じがするけど、複製体も混ざってたみたいね」

「お~い! 早く行きましょう~!」


 石橋を渡りきったタズは対岸にいる6人に手を振っている。


「魚退治は終わったようだし。僕たちも向こう岸へ渡ろうか」


 まだ橋を渡っていない6人は警戒しつつも橋を渡って行った。


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