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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第六章 ダンジョン編
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第121話 条件提示

 開かずの扉のあるフロアに到着すると、複数のランタンの明かりが見えた。人が数名いるようだ。何故か扉のほうではなくこちらを照らしている。


「先に誰か来ているようですよ」

「ん~、あいつらが帰るのを待つしかないわね」


”パチ、パチ、パチ”


 拍手をした男が前に出て来て一同の元にやって来た。男の後ろには仲間と思われる4人の男が控えている。


「やあ、君たちが来るのを待っていたよ。

 聞いていた人数より多いようだが、まあいいだろう。

 私はダンジョンを運営している頭首のレヨゴという者だ」


「運営?」


 レヨゴの後ろに控えている男たちは身構えている。


「ああ、後ろにいる4人は私の護衛として連れて来ている者たちだ。

 まあ、仕事仲間ってところだな。

 我々が君たちに危害を加えることはないので安心したまえ。

 お前ら、こっちが殺気だってたらまともに話ができないだろ、警戒解いてくれ」

『ハッ!』


「すまないね。ではさっそく話を聞いて貰うとしよう。

 昨夜、私にその開かずの扉がついに開いたという知らせが届いてね。

 しかも、まだ君らは扉の先に進んでいないと。

 居ても立っても居られなく、我々は早朝からここへ出向いて来たってわけだ」


「で、わざわざ興行主様が出向いて来たってことは、何かあるんだろ?

 ただ俺たちに会いたかったわけじゃないよな?」

「察しがいいね」


 レヨゴの要望は扉が開くところに同席させて欲しいということだ。そしてその先に進む際は邪魔にならない距離で観測者を一人つけさせて欲しいということ。レヨゴ自ら同行させて欲しいということではないようだ。


「観測者ね~。それは私たちに許可を取るまでもないんじゃない?

 あなたたちがいつもやってることでしょ」


「ははは、これはそれだけ特別なことだと理解して欲しい。

 もちろん、ここで君たちがダンジョン探索を止めるのも自由だ。

 扉と台座の構造を研究させれば我々でもいずれ開くことは可能になるだろうし、今は君たちに優先権があるだけと思ってくれたほうがいいかもね。

 そうだな、今からこの場所は君たちが探索を終えるまで封鎖することにしよう。

 これはダンジョン運営においても秘匿すべき情報だからな。

 君たちが生きて戻ればこのダンジョン3初の踏破者だ!」


「生きて戻れば・・・か。

 運営はこの先がどうなっているのか把握してないんだろ?

 俺たちはこの先に第8層らしき場所がある事までは知っている。

 だとすれば更にその下の層がある可能性も残っていると思わないか?」

「第8層だと?

 地盤の硬さからしてもうないと思っていたが・・・更に下の層があるというのか?

 それは興味深いな。

 ではこれ以上下の層がないと判断できた時点で踏破とさせてもらおうか。

 現時点では君たちは初の第8層開拓者になるってところだな」


「ところでさ。踏破報酬ってのは出るの?」


「いや、このダンジョンに踏破報酬は設定されていないな。すでに踏破されているダン1、2では相応の報酬を出しているがそれは客寄せの為だし。

 だが、ここは踏破されていないダンジョンだ。踏破すれば名誉が手に入るぞ!」


「報酬ないのか~~、名誉なんてもんはいらねーよな?」

「必要ないわね」


「はは、名誉はいらないか。

 だが、眠っているお宝が手に入ればこの上ない報酬になるのではないかね?」


「そうか! だけど、俺の一存では決められないからな。

 まずは俺たちの中で話し合いをさせて欲しい。

 少し待っててくれないか?」

「もちろんだ」

「ユニオン・ギルズも少しここで待っててくれ」

「分かったよ」


 他の人たちとは距離を置いてまずはスレーム・ガングとワイルド・レオの8人で話し合いをする事になった。


「俺は運営の要望受け入れても問題ないと思うけど、皆はどうだ?」

「別にいいんじゃない?

 私たちの邪魔するわけじゃないんでしょ?」

「彼が言っていることが本当なら私も特に問題ないと思います。

 ただ私たちが扉の先に進んだ後、閉じ込められる可能性はゼロではないかなと」

「それだと宝石も取られちゃうわ」

「ロッカ、さっき言ったろ。

 ユニオン・ギルズが俺たちに同行する条件を受け入れてくれればそれも解決だ」

「そうか、運営が絡んできただけで他は何も変わらないわね」

「どういうことですか?」

「あいつら呼んで話を進めたほうが早そうだな」


 クルーロはユニオン・ギルズを呼んだ。


 クルーロはユニオン・ギルズに開かずの扉の仕組みについて隠さず全てを話した。ロッカが扉の鍵となる宝石を持っていることも。


「で、ここからがユニオン・ギルズが扉の先に同行する条件提示だ。

 正確にはユニオン・ギルズじゃないけどな」


「なんとなく分かったぜ。俺たちの誰かがここに残れってことだろ?」

「ご名答! 残って貰うのは二人だ。

 なので連れて行けるのも二人だけ」


「ギルさん、どういうことですか?」

「タズ、要は俺たちの中から二人ここに残って鍵となる宝石を奪われないように守れって話だ」

「え~! 皆で行けないんですか?」


 クルーロは付け加えた。


「最初は俺たちの中から二人残して入ろうかと考えていたんだ。

 迷ってたんだけど、都合よくお前らが来てくれたってわけよ」

「それであっさり同行を受け入れたってことかよ」

「まあね」


 ギルは少し考えた。


「カリーナ、タズ。お前らがここに残れ」

「だと思った。分かったわ」

「私はイヤです! 師匠たちについて行きます!」

「我がまま言うな。

 条件を飲むなら二人残らなきゃならないんだ。

 それに危険な目にも合わせたくない」

「危険な目なんて討伐者になると決めたときに覚悟してますよ!」


 タズは譲る気はなく意思は固いようだ。


「仕方ないですね。ギル、タズの代わりに私が残りましょう。

 こうなったらタズは絶対譲らないですからね」

「サイモン」

「それに万一ですが、運営が妙な行動をしたときにタズでは少々役不足かと」

「・・・分かったよ。

 サイモン、カリーナを頼むぜ!」

「任せて下さい。

 タズ、そういう事だ。ギルのことは頼んだぞ」

「サイモンさん、ありがとー!

 ギルさんの役に立てるように私、精一杯頑張ってきます!」


 ユニオン・ギルズから同行する二人はギルとタズに決まった。


 話がまとまり運営へ話を通そうとしたところでレオが口を開いた。


「腹減ったぞ。このまま扉の先に進むならメシ食ってからにしないか?」

「確かに。中に入ってすぐに昼食なんて取れるとは思えないな。

 ここで食っていくか?」

「「賛成~」」

「実は俺、朝食べる時間なかったからすっごい腹減ってました」

「それは寝坊したトウマが悪い」


 一同は早めの昼食を取る事にした。


「・・・レヨゴ様、彼ら座って昼食を取り出しましたよ」

「我々を待たせているというのに自由なやつらだな・・・。

 仕方ない。こっちはお願いしている立場だ、待つしかないだろう。

 ・・・ところで携行食持って来てたりする?」


◇◇


「君たち! まだ待たせるのかね?」


 レヨゴは痺れを切らしたようだ。


「あ、ゴメン! 運営待たせてるの忘れてた」

「おいおい。それはないだろ・・・」


「冗談だよ。扉の先に進んだら余裕ないかもしれないからな。

 ここで食っていく事にしたんだ」

「それは先に伝えてくれても良かったんじゃないか?」

「それは忘れてた。なはは」


 それからクルーロは運営からの要望を受け入れることと、ここに二人残すことを伝え、扉を開ける方法も開示した。


「その宝石が扉の鍵だというのか・・・」


「レヨゴ様、過去にダン3の迷宮内で同じ宝石が3点見つかっています。

 ですが、すでに売却済みかと。

 買い戻すには相当な費用と時間が必要になるでしょう」


「・・・そうだった。確か1個500万で売却したな」


『500万?』


「この宝石、1点ものじゃなかったのね」

「少なくとも4つ目ということになりますね」


「どうだろう? その宝石を500、いや1000万で譲って貰えないだろうか?

 もちろん、君たちが探索を終えてからでいい」


『1000万?』


「そうね~、・・・うん。倍の2000万ならいいわよ。

 私たちが戻るまでに考えておいて」

「ロッカ、それはふっかけ過ぎだろ」

「さっき後ろの人が買い戻すには相当な費用と時間が必要って言ってたわ。

 だとしたら今はこの宝石は貴重ってことでしょ?」


「うむむ・・・、分かった。考えておこう」


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