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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第六章 ダンジョン編
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第120話 未知の第8層

 ロッカがバンの魔石ランタンを貰い受け、他の者は両扉の前に向かう。一人台座に残ったロッカが頃合いをみて宝石を台座に挿し込んだ。


「これで扉の鍵は開いてるはずよ! 押してみて」


 閉ざされた両扉をレオとセキトモの二人で押すと、きしむような音が鳴った。


「少し動きましたよ!

 やっぱり鍵がかかっていたんですね」


 足腰で踏ん張る力も必要な押す力ではレオよりセキトモのほうが強いだろう。レオの力は強いがそれは剣を振るう力だ。押す力ではない。セキトモの使う武具は押し出す槍と盾。それにモンスターの攻撃を防ぎ続けてきて培った足腰の力はレオの力をも凌ぐ強さだと思っていい。

 だが、どちら側の扉も少し動いただけで開けるにはまだ力が足りなかった。扉を開くには相当な力が必要なようだ。


「まだダメだ。

 最初ほどじゃないにしてもまだ何かに引っかかっている感じがするよ」

「オレもこれ以上は強く押せんぞ」

「二人がかりで片方の扉を押してみる?」


 すると、バンが再び扉の前に立った。


「私も一緒に押します!」


「待て! 少し動いたんだ、皆で一緒に押すぞ!

 バンにいいところ持っていかれてたまるかよ」


 クルーロはセキトモから預かっていた魔石ランタンをチナに手渡した。トウマもチナに魔石ランタンを手渡した。


「ちょ、なんでボク一人に3つ持たせるにゃ?」

「チナはランタン持って見てろ」

「すみません、お願いします!」

「わ、分かったにゃ」


 すでにイズハも一緒に扉を押す体勢を取っている。レオ側にクルーロとイズハ、セキトモ側にトウマが加わり、バンを中心に6人が扉に手をかけた。


「せーので行くぞ! せーの!」


 きしむ音と共に徐々に扉が開かれていく。何かが千切れていく音も混ざっているようだ。


「よし! 開いていくぞ。一気に押し切れ!」


”ガン”


「「開いた~!」」

「やった~!」


 扉の奥は真っ暗闇で見づらいが通路のような降りる階段があるようだ。階段の先は見通せない。


「へ~、ありゃ深そうだ。どうやらまだ下の層がありそうだぞ。

 運営が把握していない層、未知の第8層ってところか」


 チナがランタンで扉の裏側を照らすと、開いた扉の裏側には地面から扉の上まで広がったツタがびっしりと張り巡っているのが分かった。


「見て、扉の裏側ツタがびっしりにゃ」

「これが重かった原因か~。扉に絡んでそうなツタは切っておこう」

「燃やしちまえよ」

「よし! トウマ、炎熱剣の出番だ」

「俺?」


 トウマが炎熱剣でツタを切っていくと扉がひとりでに閉まり出した。


「閉まり出したぞ。レオ、セキトモ、抑えててくれ」

「おう」


「なんか軽くなってきたようだね」

「俺の真魔玉【赤】の力なくなっちゃいましたよ~」

「モンスター出ないし、大丈夫だろ」


「やっぱり開いたわね。先に行けそうだけどどうする?」


 ロッカも扉側にやって来ていた。


「あれ? 宝石は?」

「抜けなくなったわ」

「おいおい。僕たちが扉の先にいるのに抜こうとしたの?」

「えへへ」

「えへへじゃないよロッカ~、何か起きたらどうすんの~」


「よ~し、扉に絡んでそうなツタは燃えたみたいだな。

 とりあえず、奥の階段は置いといて。

 皆、一旦扉の外に出るぞ、この扉を検証してみよう」


 検証した結果。

 ・宝石を挿すと扉の鍵が開き、扉を開くと宝石は抜けなくなる。

 ・開いた扉はゆっくりとひとりでに閉まる。

 ・扉が閉まると宝石が抜けるようになり、宝石を抜くと扉の鍵がかかる。

 ・反対側から開けることは不可能。

 ・扉越しに反対側の声は届く。

 ・鍵が開いている状態ならトウマ一人の押す力程度で扉は開ける。


「ツタ切って多少軽くなったとはいえ、反対側から開けられないのは痛いな。

 中に入っているときに閉まったら閉じ込められるってことだ」


「だとしら中に入って行くときは扉が閉まらないようにつっかえ棒かなんかして、宝石は挿しっ放しになるのよね?」

「開けておくしかないし、そうなるな。

 宝石は抜けないし放置でもそれで大丈夫だろ」


「知りたいことは分かりましたし、そろそろダンジョンから出ましょう」

「鍵を持ってないと開けられないんだから先を急ぐ必要はないわね。

 それにあの下り階段の先って何だか嫌な感じするわ。モンスターいるかも」

「ロッカの勘は当たりますからね。

 やはり十分な準備をしてから進むほうがよいでしょう」


「皆~、帰るわよ!」


◇◇


 8人が第7層の出入口から出たときだった。


「あれ? お前ら今日もダンジョン入ったのかよ」

「師匠~!」


 ユニオン・ギルズの4人が外階段から降りて来た。


「はは~ん。さては俺の言った事が気になったな?

 すぐに分かったろ?」

「・・・」


 皆が押し黙っていた。


「どうした?

 理由を知ってやる気なくしちまったのか?

 いや、そんな表情じゃねーな。トウマ、中で何かあったのか?」

「べ、別に何もないですよ。

 あ、開かない扉がありましたね~」


 誤魔化すのが下手なトウマを見かねたロッカが割って入った。


「ギル、あんたたち換金して行くのよね?

 私たちは収穫なかったから先に帰るわ。

 オフだったのに7層見物で入ったから今日は早めに休みたいのよ」


「そっか。てこたー今日は飲みには行かないか。

 俺たちは結構稼げたし、今夜も飲みに行くぜ。

 じゃあ、レオ、またの機会に飲もう」

「お、おう」


 一同はユニオン・ギルズと別れてスリーフォの町に向かった。


◇◇


 押し黙って町へ戻っていた一同だが近くに人がいなくなった途端にロッカが口を開いた。


「トウマのバカ!

 ギルにあんな話し方したらバレちゃうじゃない」

「ゴメン」

「いや~、僕もどうしたらいいか迷って何も話せなかったよ」

「ですよね~」


 一番に誤魔化すと思われたクルーロはずっと何か考えていたようで一言も喋らなかったのだが、ようやく口を開いた。


「まあ、バレても鍵を持ってるのは俺たちのほうだし、大丈夫だろ。

 皆、明日、あの扉の先に進むでいいか?」


 皆が頷いた。


「よし!

 先がどうなっているのか分からないし、ロッカの勘が当たっているならモンスターもいる。準備は怠るなよ」


 町に戻った一同は明日に備えて準備を始め、早々に就寝した。だがトウマはなかなか寝つけなかった。


 未知の第8層か~。

 7層が地上1階だから地下でいいんだよな?

 いや、元々は1層が1階で隆起して山脈ができたって話だったっけ?

 お宝あるかな?

 ロッカはモンスターがいそうって言ってたし、気をつけないとな。

 おっと、罠がある可能性も忘れちゃダメだな。


◇◇


「トウマ! 起きろ!

 いつまで寝てるんだ。もう皆ダンジョンに向かう準備は出来てるんだ。

 あまり待たせるとロッカに何言われるか分からないぞ」

「え?」


 セキトモに起こされたもののトウマは完全に寝坊した。そして町で合流したロッカに散々ドヤされた。


「ホントもう!

 他の人たちが来ないうちに入りたかったのに何やってんのよ!」

「ゴメン」

「大丈夫だろ。7層の開かずの扉には1回行ったら諦めて行かないだろうし。

 あの通路に入るところさえ見られなければそうそう人が来る場所じゃないよ」

「クルーロ、トウマを甘やかさないで!」

「へーい」


 一同がダンジョン3第7層の狭いセーフティゾーンに入ると、ユニオン・ギルズの4人が待っていた。


「やっぱり来たか!」

「当たりのようですね。待っていましたよ」

「師匠たち扉に行くんですよね?」

「悪いわね。昨日、別れた後、あなたたちが怪しいってギルが言いだしたのよ」


「てことで、今日は同行させて貰うぜ!」


「もう! 何なのよ! トウマのバカ!」

「俺?」


「まあ、まあ。怪しまれてしまったものは仕方ないだろ」


 クルーロはロッカにそっと耳打ちした。すると、ロッカは機嫌を直したようであっさりとユニオン・ギルズの同行を許した。

 ただし、ユニオン・ギルズの同行には一つ条件をつけるようだ。条件は開かずの扉前に行ってから話すようだが内容が分からないのにユニオン・ギルズはそれを受け入れた。何があったのかを知りたいという好奇心のほうが勝ったようだ。むしろ無条件で同行を許される事のほうがギルは怪しむだろう。


 12人の大所帯となった一同は開かずの扉がある場所へと向かった。


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